2014年4月28日
出版UD研究会/障害者差別解消法の施行に向けて合理的配慮のあり方を考える研究会
出版UD研究会は25日、“特別な支援を必要とする子ども・学生の立場から合理的配慮のあり方を考える”をテーマとした「第43回出版UD研究会」を、東京・千代田区の東京しごとセンターで開催した。
東京大学先端科学技術研究センター 近藤武夫准教授がプレゼンターとなり、障害者差別解消法の施行に向けて「合理的配慮」についての考え方を解説するとともに、障がいのある子どもたちの学習や読書を支援する具体的な方法を紹介した。
2013年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立し、2016年4月1日からは公的機関で一定の義務が発生することを受け、会場には公立学校・大学や学校・大学・公共の図書館の教職員など高等教育機関の関係者が多数参加した。また、耳の不自由な人向けに、音声を要約筆記しプロジェクターに映し出した。
学習には、さまざまな行動の積み重ねで成立しているという側面がある。具体的には、“ペンで書き”“印刷物を読み”“両足で移動し”“(道具などを)指先で操作し”“対面や口頭での対人コミュニケーション”する等があるが、こうしたことができにくい子どもたちは、これまで学ぶ機会が妨げられてしまうこともあった。
教育の情報化が進む中、テクノロジー(技術)の活用は学習に遅れがある、学習する上で困難のある子どもにこそ有効だと近藤准教授は語る。例えば文字をペンで書けない、キーボードを使うことが難しいといった機能上の制限は、必ずしも文字を綴れないことを意味しているわけではなく、音声を発話するだけで文字入力ができる音声認識ソフトを使えば解決することができる。
近藤准教授は、このようにICT機器などの利用によって困難を解決することができると述べ、具体的な事例をいくつか挙げて紹介した。
また、合理的配慮についてアメリカでの先行例を挙げながら解説した。合理的配慮とは、“「差別禁止」アプローチに基づいた、障がいのある人も平等な社会参加の機会を得るための法的権利保障”のこと。法制化によって大学組織などでは、障がいのある学生の支援をこれまでの「善意」的なアプローチから「法令遵守」へと、取り組み方を変える必要があるとみられている。
質疑応答では、サービスを提供する側にとって差別につながらないように対応するにはどうすれば良いのか、といった不安の声が挙がった。
それらの意見に対して近藤准教授は、「これと似たような状況としてよく話しているのは、“ハラスメント”の問題です。考え方が浸透する中で、何がいけなくて何が問題ないのかについてのコンセンサスがとれる様になってきた」と語り、これと同じように障がいのある人に対して合理的配慮をとることが、少しずつ当たり前のものとして受け入れられていくのではないか、と述べた。
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ud43@ud-pub.org
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