2015年11月2日
愛和小学校/Scratch・Viscuit・Tickle +BB-8・Minecraft・EV3で『プログラミングを楽しもう』
東京都多摩市立愛和小学校は、最近注目を集めるプログラミング教育の実際を公立小学校で参観・体験できるイベント「i和design-Programming Festival」を10月31日に開催した。
イベント開始前の全校朝会で松田孝校長は、「みんなが大人になっている20年後の2035年には、ロボットと一緒に暮らす時代になっているだろう。学校は、世の中のことや技術を学ぶ場。だから今みんなにプログラミングに触れて欲しい。今日のめあては、『プログラミングを楽しもう』だ。がんばろー」と語りかけ、ロボットのpepperを紹介した。Pepperの登場で、子どもたちから歓声が挙がった。
午前中の授業は2コマ通しで行われ、1年生が「Scratch Jr(スクラッチ ジュニア)」、2年生が「Viscuit(ビスケット)」、3年生が「Scratch(スクラッチ)」、4年生が「Tickle(ティックル)+BB-8(ビービー・エイト)」、5年生が「Minecraft Edu(マインクラフト エデュ)」、6年生が「教育版レゴ マインドストーム EV3」というそれぞれのツールを使って、プログラミングを学んだ。
5年生は、「マイクラ」の愛称で人気のゲーム「マインクラフト」の教育版を使い、ゲーム感覚でキャラクターを動かすことで、「順次実行」「繰り返し」「条件分岐」などのプログラミングの基本を体験した。
参加者全員が同じワールド(世界)で活動する「マルチプレイ」モードで展開した授業は、ゲームの中では順番を譲り合ったり、チームで動きのタイミングを合わせたり、教室では隣同士でプログラミングを教え合ったり、ゲームと聞くと「個人プレイ」というイメージとは異なったコミュニケーションが生まれ、プログラミング授業の新たな一面を伺わせた。
映画スターウォーズで話題の「BB-8」を、新しいプログラミングツール「Tickle」で動かす授業で子どもたちは、周りからは行き当たりばったりに見える試行錯誤を繰り返しながら、最終的なミッションに辿り着く過程と達成した感動を味わったようだ。
「教育版レゴ マインドストーム EV3」にiPadのアプリで動きをプログラミングして、決められたコースを走行させる授業では、走行距離や曲がり角の角度を入力するために円周率や多角形の内角の和などを使ってプログラミングに必要な数値を算出。普段学習している算数が、実際にプログラミングにどのように使われるかを体験した。
午後からはワークショップが行われ、Minecraft Eduなど午前中の授業に使われたツールのプログラミング体験の他、磁石で電子回路をつないで電子工作を行うことで、電子回路を楽しく学べるオープンソース「Little Bits(リトルビッツ)」やリアルグローブによるpepperなどのロボット展示など子どもたちを中心にしたワークショップも開催された。
松田校長がコーディネーターをつとめたパネルディスカッションでは、STMONの中村一彰氏、Viscuitの渡辺勇士氏、ヤスラボの安川要平氏、高橋淳氏、TENTOの竹林暁氏、神奈川工科大学の吉野知芳氏がパネラーとして登壇、小学校におけるプログラミング教育のあり方などについて意見を述べた。
小学生におけるプログラミング教育の課題として、愛和小学校におけるプログラミング教育の実践経験から中村氏は「Scratch Jr~CODE.ORG~Scratchと試してみたが、課題が易しすぎると飽きてしまい、難し過ぎると諦めてしまう。ほどよい難度を設定する必要がある」と語った。
他のパネラーからは、「英米のプログラミング教育は参考になるが、どうしても英語の壁がある」「キーボードを使ったタイピングも大きな壁だ」「そもそもプログラミング授業を行う枠がない」などの意見が出された。
子ども向けのプログラミング教室を展開するTENTOの竹林氏は、「考え方の学習、学ぶ能力を高めるためのカリキュラムとしてプログラミングを使うなら、一教科としてではなくあらゆる教科で活用できる可能性がある。算数でも理科でも社会でも、図工でもフルラインナップでやれば良い」と、プログラミング活用を強く主張。
それを受けて高橋氏は、古河市立三和北中学校で行った、「Scratch Jr」を使って自分の夢のアニメーションを作り英語で発表するという取り組みを紹介し、「プログラミングを学ぶ」のではなく、「プログラミンで学ぶ」ことが大切だと述べた。
愛和小学校ではこれからも、あらゆるツールを活用したプログラミング教育の可能性を検証して行く方針だという。
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