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2017年2月17日

【寄稿】 松田校長の独白・・・あの日、緊張の理由(わけ)

<編集部より>
この記事は、2月7日、小金井市立前原小学校で松田 孝校長が行ったプログラミング授業「松田が授業するマイクラで算数!」の取材記事、「前原小の松田校長が『ラズパイ+マイクラ授業』で緊張する」に対し、なぜ「緊張していたか」を明らかにするために寄稿されたものである。文体、レイアウトは極力原文のままとしている。

独白…..、緊張の理由(わけ)

柄にもなく、緊張していた。
自我防衛だ。

小金井市立前原小学校 松田 孝 校長

小金井市立前原小学校 松田 孝 校長

プログラミングは新しい「学び」の象徴。現場は子どもの事実で、それを示す!
なんて格好いいことを言ってきたのだから、自業自得か。
確かに昨年11月の学校公開は、プログラミング「を」学ぶ子どもの意欲や集中、楽しさに溢れていた。
しかし今回は、プログラミング「で」算数を学ぶ。
しかもラズパイのスクラッチでマイクラを制御して。
加えて3年生。
ハードル、上げ過ぎ?
….。
いや、できる。本校の子どもたちなら!

3次元空間

授業のねらいを達成するには、前提に扱うプログラミング言語についてそれなりの習得が必須。でなければその単位時間、プログラミング言語の取り扱いで右往左往する。
結局、右往左往した。

建築中の壁 

建築中の壁

スクラッチは2学期に6時間、初めにサイト登録をして「Why プログラミング!?」(NHK for School)を活用して学んできた。だから大丈夫、ではなかった。

スクラッチでマイクラを制御するプログラミングは、まず3次元空間におけるポジションの把握が大前提。3学期はこれまで4時間、ラズパイでスクラッチを使ってマイクラPiのワールドに「塔」を建築してきたけれど、不十分だった。

完成した壁=面積図(部分積の視覚化)

完成した壁=面積図(部分積の視覚化)

学習課題は面積図(壁)の全ての部分積までブロックを置き換えて視覚化すること。しかしそのための座標を、多くの子どもたちは把握しきれなかった。
原因は….、時間。

3年生の子どもたちが「3次元空間」を座標として把握できないのではない。普段、PE版等で遊ぶマイクラのワールドは3次元空間であり、ブロックを配置する場所は全て座標で確定されていることの確認が不十分だった。

欲張り

マイクラPiの世界に「壁」建築するスクラッチのプログラムを説明し、理解させるには時間が必要。にもかかわらず欲張った。
「壁」を建てさせ、それを面積図としてとらえさせて1単位時間。
部分積のブロックを置き換えて視覚化させ、それぞれをひっ算に対応させて1単位時間。
最低でも2単位時間は必要だった。
でも本時には可愛い子どもたちの「やった!」「できた!」という素敵な事実を多くの人に見て欲しかった。

それこそが現場の事実!
だからこの場面にこだわった。
でもこの場面を本時とするなら、前時まにやっておくべきことがあった。
今回は指導計画全9時間分の9時間目。授業できるのはこの時間だけ。
ずっと現場にいて、この有り様。子どもたちの力を十分に引き出す展開ができなかった。子どもたちに「ごめんね」と謝るしかない。
後悔と悔しさが募る。
リベンジ!

授業中の松田校長(編集部挿入)

授業中の松田校長(編集部挿入)

マイクラのブロック操作は、とっても魅力的な算数的活動。
本単元において、少なくとも2ケタ×2ケタの計算を学ぶところからマイクラのブロック操作の活動を取り入れれば状況は変わる。
参観された人たちには、二重ループ(入れ子)がマイクラPiのワールドに「壁」を建てるプログラムであり、子どもたちにはそれが「かけ算」のプログラムであることを学んで欲しかった。

そしてそれをブロックの置き換えで視覚化して、部分積とひっ算とを対応させる。
この活動が、単元のまとめ。
これができれば、3ケタ×2ケタは式算として暗算処理できる。
プログラミン「で」、算数を学ぶ実践だ。

邪心

>その1
【緑の旗がクリックされたとき】
【mcpiXを1にする】
【mcpiYを1にする】
【mcpiZを1にする】
【blockTypeidを41にする】
これに
【setBlockを送る】
を繋げて実行すれば、マイクラPiのワールドに金ブロックが置ける。
このブロックを上に積み重ねれば「塔」になるから、繰り返しを使えば良い。
参考にブロックを10段積み重ねた「塔」を建てる。【setBlockを送る】に繰り返しのブロックを被せ、10回繰り返すを入力する。
そして実行。
マイクラPiのブロックに変化はない。そのまま。
バグった?
このプログラムをよく読めば、10回繰り返してブロックを置いている場所は、
【mcpiXを1にする】
【mcpiYを1にする】
【mcpiZを1にする】
だから(X,Y,Z)=(1,1,1)の同じ場所。何も起こらないのは当たり前。
上に積み重ねるのだから、Yの値を1ずつ変化させなければならない。

>その2
ラズパイではスクラッチがマイクラを制御するのだけれど、スクラッチmcpi2が仲立ちをしているので、あまりにも命令が速いとこれまたバグる。だからウエイトをかける。
【0.01秒待つ】
4年生の新規採用の教員は、このことを子どもたちに「コンピュータへの思いやり」と表現して伝えていた。全くもって面白い表現だし、これこそコンピュータとの共生。
時間があれば、このウエイトの数字を「1」に変えて実施。
ゆっくりとブロックが積み上がり、この命令の意味が体感できる。

>その3

*空中にできた階段

空中にできた階段

「壁」にするには同じ「塔」を横に並べれば良い。
【mcpiXを1ずつ変化させる】
変化させる値はX座標であることを確認して、さらに繰り返しを被せる。
実行して、びっくり。

「壁」ではなく空中に「階段」が出来ている。

高さを揃えて横に壁を作るには、Yの値を1に戻してから上へ積み上げなければならない。
だから
【mcpiYを1にする】
のブロックが必要。
正直、ちょっと得意になって師範していたら、時間が5分以上オーバーしてしまった。
プログラムの意味を理解させるのには、エラーを師範することも大事。そしてそのプログラムを実行するとどうなるかを考えさせる訓練も大事。
なんて言い訳はいくらでもできる。
やっぱり時間が欲しかった。

「やりたかった!」
かけ算の「壁」ーWall Art Gallery!
これをマルチモードで作成したかった。
学んだプログラムを使って、かけ算の「壁」をみんなで同じワールドに作る。想像するだけで楽しい。面白いし、可笑しい。
色んな「壁」ができる。
みんなで作るから、(X,Y,Z)=(1,1,1)から移動しなければならない。移動すれば座標が変わる。X軸とZ軸だけでなく、空中に壁を作成しようとすればY軸も確認しなければならない。三次元空間における座標を繰り返し繰り返し学ぶことになる。
ブロックを上に積み上げるのではなく、Z軸に沿って繋げていく子どもも出てくる。
その時のY軸の値が、小さければ「天井」みたいになるし、大きければ「雲」になる。
「壁」を部分積ごとにブロックを変えることで、それが模様となって華やかになる。
ある「壁」の部分積をblockTypeid0(空気) で置き換えれば、とっても面白いオブジェの完成。
もしかしたら直方体や立方体を作成する子どももいるかも知れない。
それは4年生の立体の学び。
空中に浮かんだ直方体を真上から見たり、真横から見たり。
展開図だって学べる。
マイクラのブロック配置は、とっても魅力的な算数的活動。
それをラズパイのスクラッチで制御する。
これこそがプログラミング「で」、算数を学ぶ。

*Wall Art Gallery

Wall Art Gallery

「償い」
ここまで言語化して、今回の授業が初めて自分のものとなったような気がする。
子どもたちへの償い。
苦しい作業であるけれど、今年はプログラミングの授業実践を可能な限り言語化する。
すでに「こどものミライ」サイトで「校長のプログラミング授業日記」、Bloggerで「校長のプログラミング授業参観記」を数本綴ってはいるが、それを確実に積み上げていく。
そしてマイクラを活用した授業実践も。
プログラミング「を」学ぶ、プログラミング「で」教科を学ぶ。
現場の事実で、新しい「学び」を創造する。
それがぼくのリベンジ。

関連URL

ブログ「校長のプログラミング授業参観記」

iTeachersTV
「ぼくがプログラミングに命をかける本当の理由(わけ)」
(前編)(後編)

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