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2014年2月17日

NTT/「教育スクウェア×ICT」の成果と課題そして「教育クラウド」へ

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3年前、NTTが中心となって構築してきた、日本のブロードバンド網は既に世界トップクラスと言ってよかった。しかし、その素晴らしいネットワークの活用は、十分と言い難い状況だった。とくに教育分野のICT利活用では、欧米諸国、アジアの近隣諸国に大きな遅れをとっていた。

「教育スクウェア×ICT」取り組みイメージ

NTTは、そうした状況に危機感を持ち、ICTを活用した新たな学びの実現を目指すプロジェクト「教育スクウェア×(バイ)ICT」を、2011年度第1四半期から開始した。

「教育スクウェア×ICT」では、グローバルに活躍できる力を持った子どもを育てるために、ICTを活用して質の高い教育の実現を目指した。「フューチャースクール」や「学びのイノベーション」といった国の施策と連携しながらも、あくまで独自に学校や教育委員会と協力して、教育のICT化トライアルに取り組んできた。

ICT教育の課題を抽出し、その解決策を模索して公教育のICT化に貢献する。3年間と区切られたプロジェクトは今年の3月で幕を閉じる。
プロジェクトの歩みを振り返りながら、成果のひとつである「つなぐ授業」の現場を訪れてみた。

教室からも家庭からもつながるということ

プロジェクトには、全国5自治体の小学校9校、中学校3校が参加。
参加校には、NTTが構築する「教育クラウド」からデジタル教材やLMS(学習管理システム)、授業計画作成ツール、電子連絡網などを提供する。各教室へ「電子黒板」を配備し、対象学年に1人1台のタブレットやノートパソコンを配布するというプラン。

全国の小中校12校が参加

しかし、学校までインターネット回線が来ていても教室までがつながっていない。校内LANを張り巡らせ、Wi-Fi環境を整え、パソコンや電子黒板を設定してはじめて、教室のタブレットがネットに接続される。

「教育クラウド」を活用するこのプロジェクトでは、学校だけでなく家庭でも利用できることが計画の肝といえる。そこで、インターネット環境のない家庭にはブロードバンド回線を整備して、利用できる環境を用意した。

教室内では、教師のパソコンと児童のタブレットの間で画面転送が行える教務アプリケーションを導入し、教師が問題を配信し、児童の解答を電子黒板に表示するなど様々なかたちで授業に利用されたという。

ICT機器に不慣れな教師が困らないように、自治体または各校に1人ずつICT支援員を常駐させるとともに、システムの運用や変更に電話で対応するサポートセンターを設置し教師や関係者の不安を取り除いた。

パッケージでなく自由に使えるものを

授業づくりや運用のサポート方法は、現場の声を聞きながら磨いていったという。

プロジェクト1年目は、教師がICTを無理なくすぐ使えるようにと、授業ごとに利用の仕方まで決めてシナリオとICTをパッケージ化し、モデル型授業として提供した。しかし、教員の自由度がなかったことや、かえって負担が多くなってしまったことから、日常的な活用には至らなかった。

その経験から、2年目は、どの場面でICTを使うかなどを相談し合い、学校や教師の裁量を広げるように進めていくと、様々な活用のかたちが生まれた。プロジェクトでは、小学校の算数、理科、社会、中学校の英語を対象に支援を行っていたが、体育や図工など、そのほかの科目の授業でも、教師が自発的にICTを使うようになった。また、教師の要望に応えようとすることで、一緒になって様々な授業を考え出すことができたという。

要望で実現した粒江小学校の「つなぐ授業」

「つなぐ授業」は、テレビ会議システムと電子黒板を使った遠隔授業で、これまでトヨタテクノミュージアム産業技術記念館、国立天文台ハワイ観測所などと教室をつないできた。

授業では模擬スタジオと教室をつないだ

学校という限られた空間から、ICTを活用して日本中、世界中とつながることができる。学校と社会をリアルタイムで直接つなぐことが出来るのが、「つなぐ授業」の最大のメリットだ。

1月31日、岡山県の倉敷市立粒江小学校で行われた「つなぐ授業」は、学校とプロジェクトが一緒に作り上げた授業の1つ。校長の要望に応えて、オーダーメードの「つなぐ授業」が実現した。

粒江小学校での「つなぐ授業」の科目は”社会・日本の情報産業”。

報道スタジオと教室をつなぎ、児童たちはレポーターに扮してニュースを発表したり、アナウンサーとのやり取りを行うというもの。

児童たちは、レジャー開発というテーマに対して、”市長の賛成意見””自然保護団体員の反対意見””街の親子の意見”などの映像を組み合わせてニュースを作り、報道の平等性や公平性について学んだ。

レポート後に、アナウンサーから使用した映像を選んだ理由を尋ねられると、視聴者がどのような印象を持つか考え、バランスよく組み合わせたという児童が多く、授業の狙いを理解してニュース作りを行っていたことがうかがえた。

発表後には、報道カメラマンがニュースの作り方を紹介。普段は目にすることができない、プロの仕事ぶりが見られるとあってか、真剣に画面に見入る児童の姿が印象的だった。

積極的に授業に参加する児童たち

今回の「つなぐ授業」について担当した教師に聞くと、「事前のニュース作りから、児童たちのやる気がすごくあり、皆がもっと良くするにはどうすればいいのか、考えながらやっていました」と、児童の高い関心を語ってくれた。

児童たちも口々に「またやりたい」と語り、「いろいろな人と関わりながら学習ができるので楽しかった」という声もあった。

盛り上がった授業の様子からも、普段は見ることのできない場所や、触れ合うことのない人たちと、ネットワークでつながることで、児童たちの学習意欲が刺激されていることは明らかだ。

さらに、「映像があるので分かりやすかった」と、電子黒板の活用に学習効果を感じている児童も多くいた。

学校全体が「ICT教育の進展」という目標を共有できた

倉敷市立粒江小学校 尾島正敏校長

粒江小学校では、「つなぐ授業」をはじめ、積極的にICTを教育に活用しているが、これは「教育スクウェア×ICT」との出会いがなければ実現しなかったと、尾島正敏校長は語る。

学校に電子黒板とタブレットを導入したいと考えていた尾島校長が、プロジェクトの存在を知り、参加したのは2011年6月。参加するとすぐに教師たちがネットで素材を探して教材を作るようになるなど、予想以上の変化が現れたという。

尾島校長は、「実現が難しいのではないかと考えたようなアイディアでも、プロジェクトメンバーに相談してみると、実現できたことが多くありました」と語る。学校内のコミュニケーションを活性化させるために導入した「学級内SNS」はその一例だ。

学校内SNS実現はまさにプロジェクトの成果

それに対して、NTT新ビジネス推進室 高屋洋一郎次長は、「尾島校長から数多くのお知恵をいただき、ICTで何ができるのか、その可能性を探ることができましたし、先生方からの相談にも気づかされることが多々ありました」と、学校からの提案はプロジェクトにとっても実りが多かったと付け加えた。

プロジェクトには、NTTのグループ企業に加えて、パートナー企業や、有識者が多数参加している。粒江小学校では、プロジェクトが持つ多くのノウハウが最大限に活用されたようだ。

さらに、尾島校長は「ICT教育の進展という目標ができたことで、学校全体が一つの方向性に進むという気持ちを共有できた」と、プロジェクトに参加した3年間を振り返った。

成果~課題、そして「教育クラウド」に向けて

「教育スクウェア×ICT」は、3月で3年間の活動に幕を閉じる。

成果と課題を語る高屋次長(左)加藤統括部長(右)

成果としては、子どもたちの興味や関心、学習意欲の向上に役立ったこと、100年以上変わらなかった一斉授業形式の教室に「個別学習」や「協働学習」を持ち込んだこと、学習方法や教材研究が進んだことなど多くの変化を生み出すことが出来た。

そして同時に、子どもたちの能力を高めるための学習場面に応じた活用方法や教師のICT活用力の向上、家庭との連携や学校や家庭そして社会全体の機運向上の必要性など多くの課題を発見した。

このプロジェクトに関わってきた、NTT新ビジネス推進室 加藤恒明統括部長は、「児童や教師、家庭へのアンケートを繰り返しながらプロジェクトを進めることで、様々な発見がありました。どういったICTであれば教育現場で活用していただけるのかが少しずつ見えてきました。また先生方が自分の授業スタイルに沿って柔軟にICTを活用できる自由度の必要性や、教科ごとのICTとの親和性の違いなど、多くの知見も得ることができました」と、成果の多さを強調した。

また、同推進室の高屋次長は、「プロジェクトでは課題も多く見つかりました。目標に掲げた公教育のICT化はまだ道半ばですし、3年間で蓄積してきた情報の共有化など、貢献できる部分を考えながら継続的に取り組みを続けていくつもりです」と語った。
NTTは今後、プロジェクトで得られた成果や課題を精査・分析して、「教育クラウド」のビジネスフィールドへの展開とともに、「公教育のICT化」への貢献策を検討していく。

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