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2020年1月8日

高校生が授業でスマホアプリ開発 ~同志社高校「Monaca」活用で~

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「○○がない」が強みの学校

同志社中学校・高等学校

広い校庭がある、恵まれたICT環境がある……学校が自らをアピールするとき、「本校には○○があります」という論調になるのが一般的だ。しかし、その逆をいく学校がある。「本校には『○○がありません』とお伝えすることが多いんです」と笑うのは、同志社中学校・高等学校(京都市)情報科の鈴木潤教諭だ。

情報科・鈴木潤教諭

同校は建学以来、「自由主義」を教育理念の一つに据えている。そのため生徒をしばる校則もなければ、制服もない。文系・理系の選択やコース制もない。「ない」からこそ生み出せる、自立した主体的な学びの意思を重視してきた。

そんな同校らしさを反映した授業の一つが「自由選択科目」だ。興味関心のある学びを選んで深められることが特長で、美術や音楽、体育なども含めた教科科目だけでなく、探究系の「特論」も組み込まれている。

「情報特論」でプログラミングを本格的に

中でもユニークなのが、プログラミングを学ぶ「情報特論」だ。2020年度から小学校での必修化を受け、キーワードとしての注目度は高まっているプログラミング教育だが、「プログラミング」という教科が創設されるわけではない。あくまで、日常の学習行為の中で論理的なプログラミング的思考を身に付けることが趣旨なのだ。

「情報特論」の授業を行う「メディアセンター知創館(ちそうかん)」

いっぽう「情報特論」で学ぶのは、れっきとしたプログラミングやアルゴリズムの仕組み。鈴木教諭らの指導のもと、生徒たちはスマホアプリの開発などに挑戦している。ただ、スキルの養成が目的ではない、と鈴木教諭。「学校として『プログラミング教育に力を入れます!』という意味でもありません。繰り返しになりますが、本校は『自由主義』の学校。学ぶべき、あるいは学びたいあらゆるリテラシーの中の、選択肢の一つとしてプログラミングを提供したいと思ったのです」

山積する課題を一気に解決した「Monaca」

高校時代から独学で学ぶなど、もともとプログラミングへの造詣が深かった鈴木教諭。自分で作ったものが動く楽しさを生徒にも伝えたかったが、「情報特論」設置直後は試行錯誤の連続だったと言う。当初はロボットを動かす教材を使用したが、なかなかシミュレータ通りに動かない。その上、プログラムにミスがあったのか、ロボットの配線が間違っているのか、限られた授業時間や生徒の技量では、原因の特定すらままならなかった。そうなると生徒はつまらない。学習モチベーションは下がる一方で、鈴木教諭は頭を抱えた。そこで、より「自由主義」に立ち返って生徒に希望を聞いてみたところ、「スマホアプリを作ってみたい」という声が多く寄せられた。

しかし、高校でそれなりのアプリ開発環境を整えるのは難しい。iOSとAndroidでは開発言語も異なり手間がかかる。加えて、既存のプログラミング教材はレクリエーションの要素が強く、もっと実践的な体験を積ませたい鈴木教諭には物足りなく感じていた。

Monaca活用で授業中の個別対応も容易になった

そんな条件を満たしたのが、モバイルアプリ開発ツールの『Monaca』(アシアル)だ。iOSとAndroidに同時対応できるだけでなく、特殊な環境構築も不要。何より教諭を喜ばせたのは、クラウド上にそれを置けることだった。「画期的だと思いました。まず、簡単に作れて実機で動く。ブラウザからログインすればどこでも使えますから、授業だけでなく自宅でも開発することができます。生徒は自分のスマホ上で動作確認できますし、私も生徒の進捗やミスの原因などをいつでもどこでも確認できますしね」。もともとスマホの持ち込みが禁止されていない同校の特色とも、相性が良かったと言えるだろう。

そこで次年度から「情報特論」の指導計画を大幅に改定。Monacaを中心にしたアプリ開発授業がスタートした。大まかな流れは、1学期前半にプログラミングの、後半にデータベース(SQL)の基礎を学習。2学期に入ると、前半でアプリの構想を練り、後半で実制作から完成まで持っていく。3学期はプログラミングそのものからは少し離れ、ゲーム理論(数学的観点で人間の意思決定や行動を考える学問)などをアクティビティ的に学ぶ。

もちろん選択科目カリキュラムの一環である以上、試験もあれば、成績評価も行う。1学期は基礎知識の定着確認のために、ペーパーテストを実施。2学期は開発したアプリを対象に評価する。評価基準は「正しく動くこと」「アプリの内容(コンテンツとしてのユニークさ)」「プログラミングの巧みさ(アルゴリズムの質や量)」などだ。3学期はレポート提出を課す。

プログラム経験が「仕組みを作る」発想へ

数独パズルを制作中の生徒

生徒たちが開発するアプリはさまざまだ。簡単なものなら、電卓やクイズゲーム。ビジュアルノベルゲーム、ビンゴカード。部活用のスコア記録アプリを開発したラクロス部のプレーヤーもいた。反応や感想も多様だが、「自分のイメージや考えを形にするのが楽しい」「できないと思っていたことができる喜びを感じた」など嬉しい声が続く。

過去の制作事例

こんな効果もあった。「子どもたちのスマホゲームへの依存や、度を越した課金行為が社会問題にもなりました。でも、課金してまでキャラクターの能力を上げているときゲームの中で起こっていること――つまりプログラム上の現象としては、単なる変数の値が変化しているに過ぎません。自分で開発する側に回ったとき、それに気付くんです。『キミたちはたったそれだけのことに、必死でお金を払ってるんだぞ』『どうせならお金を払う側ではなく、もらう側になろうよ』と冗談を言うと、目から鱗が落ちたように納得するみたいで」と鈴木教諭は笑う。

「この学びを将来に活かしたい」と話す生徒ら

しかしその発想は、次代を生きぬくサバイバル力とも言える。スティーブ・ジョブズら優れたイノベーターらを例にして、「仕組みを作った者が勝つ」という言葉をよく聞くが、まさにその通りだろう。次世代人材育成の観点からも、生徒たちは着実に成長していると言えそうだ。「プログラミングのスキルではなく、発想や思考法を学んで、今後の学びや生活に役立てて欲しいの」と鈴木教諭。今後はチームで行う開発や、問題解決の手段として用いるアプリ開発にも挑戦していく予定だ。

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