2022年2月28日
教員志望の学生たち、電子黒板「ミライタッチ」で現代のICT環境を実体験/琉球大学
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アナログからデジタルへの「過渡期」に学ぶ学生たち
従来の常識や手法がガラリと変わるような変革は、どんなものにも訪れる。そのとき、新しいやり方に合わせて人も変容を迫られる「産みの苦しみ」は、大なり小なり生じるものだ。それは教育とICTにおいても同様だと言えよう。これまでアナログで取り組んできたさまざまな教育活動がデジタルへと置き変わる中、新たなスタンダードに自らをアップデートしていかねばならない。
こうした議論は、得てして教育者のそれを中心に語られがちだが、学習者(学生・生徒)にもアップデートは必要だ。特に現在は、急速なICT化への過渡期にある。最初は紙の教科書や教材で学んでいたのに、途中からデジタルに変わっていったのだ。「現代の子どもたちはデジタルネイティブだからすぐ慣れる」という意見もあろうが、就学時に最初からタブレットを与えられている世代と、後天的にそうなった世代を同じように考えるのはいささか極端だろう。
「自分たちのころとは違う」、最新の教育ICT事情を実機で体験
琉球大学国際地域創造学部国際言語文化プログラム(沖縄県)で、英語教員を目指して学んでいる学生たちも、まさにその当事者だ。自身が中学生ぐらいのころから、徐々に学びがICT化し始めた世代である。場合によっては、“純アナログ”な学習環境にいた最後の世代になるかもしれない。
しかしそんな彼らも、やがて“新時代”の教壇に立つ。そのとき、自分が知る学習環境とのギャップに戸惑うことも想定されるだろう。
そこで同プログラムでは、学生向けに、最新のICT教育ツールに関する体験授業を実施。同プログラムで英語科教育法の教鞭を執り、体験授業を企画した金藤多美子先生はこう語る。「この授業を履修する学生たちは、ほぼ全員が来年度の教育実習に臨みます。しかし教育ICTの進化により、現在の教室環境は、彼らが小中高校生のころ経験してきた学び方・教え方とは大きく変わってきました。それをふまえ、現在の教育現場で用いられている機器や手法を実体験することが目的です」。
また、学生たちはパワーポイント等のソフトを自分の模擬授業に活用することは十分できるものの、電子黒板など、最新のハードを経験する機会が少ないことは大学全体の課題として残っていた。つまり今回の体験授業は、大学にとっても新しいチャレンジと言えた。利用したのは「ミライタッチ」、さつきが開発・提供する電子黒板である。
「ミライタッチ」で授業案のプレゼンテーションに挑戦
ミライタッチは、四つのコンセプトをもとに開発された。車いすでも利用できる形状など、誰もが使いやすいことを目指した「インクルーシブ」、利用者の声を反映したバージョンアップや拡張性を備えた「グローイング」、黒板そのものがインターネットに接続可能で、マルチOS、かつ同時に6台までミラーリングが可能な「コミュニティー」、高いUI性能で操作にストレスを感じさせない「フレンドリー」だ。
授業では、学生に事前課題が与えられた。テーマは「中学生を想定し、彼らが外国人に向けて沖縄の魅力を英語で紹介するための授業(の導入部分)」だ。学生たちはチームで授業案を作成し、それをミライタッチでプレゼンテーションするのである。
もちろん、1回の体験でミライタッチを使いこなせるようになるわけではないが、金藤先生も「まずは学生たちに、現代の学校で用いられている機器に実際に触れ、『教育実習でこれを使うんだ』という意識を高めてほしいと考えました」と明かす。
その機能に、驚きの声の連続
しかし、そこには狙い以上の効果があった。学生たちは、ミライタッチの機能・性能に「おお~!」「すごい!」「こんなことができるのか!」と感嘆を隠さない。特に好評だったのが、ミラーリングや、過去の板書を保存しておき、欠席者や復習用にいつでも再表示できる機能などだ。
「ミラーリング機能で、グループワークなどでの意見共有に活かせそう」「板書を保存できれば、分散登校や不登校の子どもたちにも効果的に対応できるはず」「実習先で『黒板に図形をきれいに手書きする』ことに腐心している友人がいたが、それは電子黒板に任せて他のことに時間を有効活用すべきと感じた」といった活用アイデアが次々に聞かれた。
また、電子黒板にありがちな筆記時のタイムラグがほぼない、なめらかなUIも注目を集めたようだ。ある学生は「自分が中学生のころに電子黒板を使っていた先生がいたが、扱いに苦労していた記憶しかない。それに比べ『今の電子黒板はここまで来たのか!』というのが第一印象。自分の知っている“電子黒板”ではなかった」と、気付きを得たようす。期待感をも大きく抱かせる結果となった。
ICTを「使う意義」を理解し、アナログと共に使いこなす次世代の教員育成を
今回の成果をふまえて金藤先生は、自身も一人の教育者・研究者としてこう語る。「今後の授業ではミライタッチをどう使うかを学生たちと⼀緒に考えていきたいと思います。アナログもデジタルも経験してきた世代だからこそ、無批判にICTを受け入れるばかりでなく、それを使う意義を考えるとともに、逆にアナログの強みを活かすこともできると思います。クリティカルな視点も持ちつつ、教育者として、どちらも柔軟に活用できるリテラシーを身に付けてもらいたいですね」。
GIGAスクール構想に伴って端末やインフラの整備が進んでいるが、教員のスキルが追いつかず、宝の持ち腐れになるのではないかという懸念も指摘される昨今。そうならないためにも、次世代の教員育成において金藤先生らの取り組みは大きな価値を持つはずだ。5年後、10年後の教室に、ミライタッチを始めとする機器を手足のように使いこなす、若手教員たちの姿が目に浮かぶ。
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