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2014年11月4日

高校バスケ界を変革したiPadアプリ/バスケプラス

EdTechとは、Education×Technolog(教育×テクノロジー)の造語。 教育とテクノロジーを融合させ教育のICT化等に役立つ新しいイノベーションを起こすビジネス領域のこと。教育のICT化というと、校務の効率化や学習現場の教材・教具への活用を思い浮かべるが、高校の部活動も立派な教育現場。

約半分がバスケプラスを使っていた2014年インターハイ

今回紹介するEdTechは、高校の部活動のひとつ「バスケットボール」を劇的に変革したと言われるiPad用アプリ、「バスケプラス」。今年夏のインターハイ(全国高等学校総合体育大会・全国高等学校バスケットボール選手権大会)では、参加校の約半分が利用していたアプリだ。

開発の経緯やアプリの機能、評価、今後の展開などについて、バスケブラスの盛 透(もり とおる)社長に訊いた。

バレーボール真鍋監督のiPad姿に魅せられて

バスケプラスの象徴「オレンジケース」のiPadを手にする盛社長

盛社長は2000年頃から、勤務していた通信関連会社で地方の地域戦略を担当。地元企業との合弁会社を設立するなどして、いわゆる“地域興し”に関わっていた。その経験を活かして、会社の新規事業の一環として2010年にスポーツ関連団体と合弁会社を設立、「スポーツと通信の融合」分野の新サービス開発に取り組むことになった。

そんな時、バレーボール女子日本代表の真鍋監督が、左手にiPadを固定してコートの中を動き回りながら指揮をとっている姿に出会った。「格好いい!」と思った。

バレーボールは、サーブ、レシーブ、トス、スパイクなどのプレーを誰がコートの何処で行って成功したか、失敗したかを競う、“確率”のゲームと言われている。スポーツで“確率”というならば、バレーよりバスケット。バレーにできてバスケットにできないわけが無い。早速マーケティングを開始することにした。

現場の意見をとことん反映して

盛社長が高校バスケの試合現場を訪ねてみると、マネージャーが手書きでスコアを記録し、そのデータをエクセルに入力して、結果はプリントアウトというのが普通だった。バスケットボールの特徴は、点数が多いことと攻守の交代が速いこと。手書き入力では大変だ。

帝京CUPバスケットボール2014(帝京高校)

タブレットがほとんど使われていなかったので、アプリがないのかと思ったが、そうではなかった。先生方に聞いてみると、アプリは無料から1000円前後までいろいろあるのだが、英語版だったり使いにくかったり、予算の関係でiPadが用意できなかったりで、導入していないのだという。

ならば、分かり易くて使い易く、廉価で提供できるサービスを開発してみよう。現場の先生方から意見を聞き、アドバイスを貰いながら開発を進め、2012年3月にはアプリをリリースした。

バスケプラスを使う帝京高校マネージャー

機能は現在の半分程度、データを入力して集計して出力するというもの。太い幹を作って少し枝葉を付けた程度の最低限。新規事業で立ち上げたので、一刻も早くリリースという成果を挙げたかったのと、後々の機能追加を容易にするためだった。

リリース直後の現場の先生やマネージャーの驚き方が凄かった。タブレット画面に映し出された“コート画面”を見てビックリ。スコアを入力して、集計されて表示するときにまたビックリ。

タブレットのまわりに驚きと笑顔が溢れて、盛社長は、バスケプラスが“画期的なもの”であることを実感したという。

<バスケプラスのアプリ「バスケパッド2」」のプロモーション動画>

何が違う?すべてが違う!勝利をつかむアプリ

バスケプラスのスタッツ入力画面

「いままでのアプリと何が違うのか」というとい問いに盛社長は「すべてが違う!」と即答した。インプットは生徒(マネージャー)の目線で、アウトプットは先生(コーチ)の目線で使い勝手を追求した。インプットもアウトプットもとことん現場の要望に応えて開発した。だから、機能の追加を求められることは、ほとんど無いという。

バスケプラス導入の効果は何か。それは、勝利に結びつくゲーム展開の変化だという。

シュートチャートで攻められているポイントを分析して、個人を対象にしたディフェンス対策を立てる。どの選手がどの位置から3ポイントを決めているかを分析して、そこを押さえる。自チームでは誰がアシスト成功率が高いか確認して、そこにパスを回す。敵チームならそこを押さえる。好調な選手やシュート成功率高いエリア、ルートを見つけ出して対応することができる。勝つために何をすれば良いかが分かるのだ。

ハーフタイムに指示を出す帝京高校 山口ヘッドコーチ

こうした機能を活用した戦力向上は、中位低位レベルのチームほど顕著だという。これまで目的意識が希薄だったひとつひとつのプレーの目的を明確にできたり、把握が困難だった試合展開のエビデンス(科学的根拠)を確実に捉えることができるからだ。つまり、負けている理由が分かり、その対策が打てるということ。

強豪校においてはどうか。自分のチームに対しての見える化の効果は、データと結果の関係を確認することによる、自分たちのやり方への“確信”だという。また、対戦相手チームのスカウティングデータの収集、分析には絶大な効果を発揮するという。

バスケプラスについて語る 山口ヘッドコーチ

バスケプラスをリリース当時から使用している、帝京高校の山口裕登ヘッドコーチは、「うちのチームでは、ディフェンス力の向上を目指してバスケプラスを導入しました。とくにリバウンドにこだわってデータを分析しました。今年の夏の大会でも、オフェンスリバウンドの確率を高めることで好成績が収められました。シュートポジションやリバウンド、スチール、ターンオーバーなどのボックススコアや相手のシュート成功率などをリアルタイムに確認することができるので、相手の攻撃パターンをみて試合中に作戦を変更することもあります」と、活用場面を語ってくれた。

「スポーツと通信の融合」を実現したクラウドサービス型アプリ

バスケプラスは、タブレット端末のiPadとiPadにインストールされたアプリ、それにスマートフォンやPCで利用するネットサービスがセット(*1)になって、月々課金される“クラウド型サービス”。まさに、盛社長が事業を立ち上げたときに目指していた、「スポーツと通信の融合」を実現したサービスだといえる。(*1)アプリのみの販売も行っている。

バスケプラスのランニングスコア画面

試合中のコートでiPadに入力、集計された試合データはインターネットからクラウドサーバーに送信されると、スマートフォンからでもPCからでも閲覧可能となる。試合中なら応援に来られない保護者が、リアルタイムでスコアやデータを見ることができるので、チームの一体感を醸成することができる。選手は試合後に、自分の試合データを確認することができるので、自分の進歩を知ることができ、より一層バスケに対するモチベーションを高めることができる。

また、試合データ以外の情報提供も可能なため、帝京高校のようにこれまで紙で配付していた「試合予定表」等を、インターネットのバスケプラスのページに掲載して情報の共有を図ることも可能だ。

日本からアジア~世界に向けて

全国の高校でバスケットボール部があるのは、約4000校。そのうちバスケプラスを導入しているのは、約600校。盛社長が目標とする4割普及までは、あと1000校。大きなスーツケースを引きながら、ほぼ毎日のように日本全国を飛び回っている盛社長にすれば、それほど高いハードルでもなさそうだが、その先はどうするのか。

盛社長の夢はバスケプラスが世界中で使われること

「年内に英語版をリリースします。それをもって海外に進出します。まずはアジアで。そして、ヨーロッパやアメリカも視野に入れています。 “アプリ版”ならApp Storeにリリースするだけで、世界がマーケットになりますからね」と、盛社長。

日本の高校バスケ界に大きな変革をもたらした「バスケプラス」。世界制覇を目指す盛社長の夢と情熱は、終わることがない。

できることなら、「バスケプラス」が世界に普及する前に、日本のバスケのレベルが世界に少しでも近づいていることを願いたい。

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