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2018年2月8日

~EdTech最前線~「助けたい人を助けられる社会を一緒に作ろう」ボクがSTOPitを広める理由

自分もいじめられっ子だった。ちょっと猫背だから、ちょっとコミュニケーション下手だったから。制服を切られたり、殴られたりもした。でも、どうしようも無かった。小学校5年の頃から中学3年まで続いた。どうしようもない、卒業までの辛抱だと我慢した。そんな中でも、教師や親の助けに救われたことも度々あった。

ストップイットジャパン 谷山 大三郎 CEO

ストップイットジャパン 谷山 大三郎 CEO

だから、大手人材会社を辞めてNPO法人を手伝っているとき、ネットの記事でみつけた米国の「STOPit(ストップイット)」に心が動いた。「これ、凄くいい」、「これは、価値のあるサービスだ」と感じ、早速その会社のInfoアドレスにメールした。「これは日本でも絶対必要なサービスです。日本にも是非展開して下さい」。4回くらいメールを出し続けると、ようやく返事が来た。「おいでよ」。彼は、勇躍米国に飛び立った。現ストップイットジャパンのCEO谷山 大三郎さん。同行したのは、取締役の橋本 祐樹さんだった。

米国に行ったら「Youたちがやっちゃいなよ」となって

2015年8月、谷山さんと橋本さんが会いに行ったのは、米国で「STOPit」プラットフォームを開発・提供を行っているInspirit Group社の創業者兼CEOのTodd Schobel氏。Todd氏は2014年8月、車でラジオ聞いていたとき、カナダの少女がネットいじめで自殺したというニュースを耳にした。「なんとかしなきゃいけない」と思い、「STOPit」を開発したという。

谷山さんたちは、Todd氏に「STOPit」の日本進出をお願いしに来たはずだったが、気がつけば「Youたちがやっちゃいなよ」的な流れになり、自分たちが直接事業運営を行うという、思わぬ展開となった。

帰国して2カ月で法人(ストップイットジャパン)を立ち上げ、「STOPit」の日本版へのローカライズ作業を進めた。2016年の4月頃には、何とか使えるようになった。6月には、導入してくれる学校も現れた。

松井秀喜氏、デレク・ジーター氏が出演するSTOPitポスター

松井秀喜氏、デレク・ジーター氏が出演するSTOPitポスター

「STOPit」は、いじめ撲滅を目指し匿名でのいじめの報告・相談ができるアプリ「STOPit」と、組織担当者の管理ツール「DOCUMENTit(ドキュメントイット)」からなるプラットフォーム。「STOPit」は、いじめを見つけた子どもたち、いじめに苦しんでいる子どもたちのために、いつでもどこでも報告・相談できる環境を整えるためのものなのだ。

児童や生徒、企業なら従業員といった「STOPit」アプリのユーザーは匿名で簡単に担当者に問題を報告・相談することができる。また「STOPit」のメッセンジャー機能を使い、ユーザーと組織担当者が匿名でチャットを行うこともできる。報告を受ける担当者とは、教育現場で公立なら教育委員会、私立ならば学校ということになる。

教育機関や企業などの導入組織担当者には報告・相談管理システムの「DOCUMENTit」が提供される。「DOCUMENTit」には様々な便利なツールが備わっており、担当者はユーザーからの報告を効率よく管理することができる。「STOPit」には、いじめの早期発見や情報共有を円滑にして組織的な対応を実現するだけでなく、抑止効果によるいじめ自体を減少させる効果も期待されている。

□ ジーター氏と松井氏のメッセージ動画

いじめが「容認」されるか「否定」されるかはクラスの雰囲気次第

いじめが原因とみられる自殺や自傷事件が発生しても、多くの学校、教育委員会で「いじめは無かった」という調査結果を発表する。いじめを受けて自殺まで至るケースは希かもしれないが、いじめは本当に希なのだろうか。

いじめ防止対策推進法の施行に伴い、いじめは下記のように定義されている。
「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

Photo by PIXTA

Photo by PIXTA

この定義の「当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」が、いじめだとすると、学校にいじめというものが無い方がおかしな事になる。え、そんなことで?と思うようなことでも、当事者が心に苦痛を感じれば「いじめ」ということになる。文部科学省が配付したいじめ防止対策でも、「いじめを正確に漏れなく認知することは、いじめへの対応の第一歩であり、いじめ防止対策推進法が機能するための大前提」だとしている。

例えば同省の資料で(ごく初期段階のいじめの具体例) として挙げられている
・授業中に先生に指されたが答えられないAさんにBさんが「こんな問題も分からな いの」と言った。Aさんは、ショックを受けて下を向いてしまった。
・AさんはBさんから滑り台の順番を抜かされて悲しい顔をしていることが度々ある。
といった場面でも、当事者が苦痛を感じれば、いじめということになる。

もちろん過敏に反応して、無い問題を掘り起こすことはないだろが、あるものをあると認知することこそがいじめ対策にとって重要なのだろう。そのためには、子どもたちの心中にしまい込んでいる「苦痛」を教えてもらう必要がある。先生にも親にも友だちにも言えない思いを吐き出してもらう。その手助けとなるのが「STOPit」なのだ。

柏市の“脱・傍観者”授業のディスカッションの様子

柏市の“脱・傍観者”授業「ディスカッション」の様子

谷山さんは、「STOPit」の普及活動を続ける一方、「STOPit」が活用される授業づくりも模索していた。そして、恩師であり「ネットいじめもクラスの雰囲気で変わる」という研究をしている千葉大学教育学部の藤川大祐教授に相談してみた。「一緒に授業開発をしよう」ということになり、「ネットいじめ“脱・傍観者”教育」という授業を開発、2017年には千葉県柏市の全中学校の1年生を対象に実施した。

柏市の“脱・傍観者”授業「発表」の様子

柏市の“脱・傍観者”授業「発表」の様子

授業は、ビデオ教材のドラマを視聴することからスタート。クラスの男子生徒がSNSで悪口を言われ、靴が隠されるなどの実害にまで発展するストーリー。主人公の女子生徒が、悪口で盛り上がるクラスのSNSにいじめを止めるように書き込むか書き込まないか、という選択肢について、グループでディスカッションするという流れ。そして、意志決定に大きく影響するのが「クラスの雰囲気」。いじめに対して“脱・傍観者”になるためにはどうするべきかを話し合う。ビデオ教材を収録したDVDはこれまでに3000部が無料で配付され、道徳の授業などで活用されているという。
*詳細は、文末の関連記事を参照。

いじめの通報や相談対策としては、「24時間子供SOSダイヤル」「千葉いのちの電話」「ネットトラブル相談窓口」など様々な電話の相談先があるが、柏市では今年度新たに「STOPit」を導入した。それは、柏市教育委員会のいじめ対策への本気度を現したものだ。

「STOPit」を導入する覚悟はあるか

「STOPit」は現在、米国で6000校330万人が、日本では、31校1万6000人が利用している。子どもたちに馴染みの深いスマートフォンアプリを使用するため、利用のハードルが低いし、匿名だから本音が届きやすい。これまでも、「LINEで無視される」「○○君が○○君を殴っています」「デスノートに書き込まれた」などの通報・相談が寄せられているという。「死にたい」という相談に対しては、校内緊急アンケートを実施したケースもあるという。

Teen_Girl_iPhone_TopView_Messenger_Screen「STOPit」は、匿名の相談や通報に対して個別対応が可能なため、深掘りして情報を収集することが出来る。子どもたちの「苦痛」の原因に近づくことも、「いじめ」の実体を詳細に把握することも可能だ。

「STOPit」は手軽で便利ないじめ通報ツールである。しかし、その導入には「覚悟」が必要だと谷山さんは言う。「STOPitが普及して導入校が増えていくことは嬉しいのですが、ただ導入しただけでは、問題の解決になりません。STOPitを使って子どもたちの声を聞き取ったとしたら、その先どうするか。どう対応していくのかのビションを明確にしなければなりません。子どもたちの声を聞くだけ聞いて放置したのでは、心の闇は一層深くなってしまいます。声を聞いたら対応する、という心構えと準備が必要です」

STOPit_App_Messenger_Business_Lifestyle_JP谷山さんは千葉大学で非常勤講師を勤める傍ら、「STOPit」の導入にあたっては、必ず直接教育委員会や学校に出向いて模擬授業か講演会を実施するようにしている。「STOPit」の使い方を説明するのではなく、「STOPit」を導入する意味と意義を理解してもらうためだ。

教育現場で真剣に子どもたちと向き合っている教師の多くは、「こういうツールを使わなくても、直接相談してくれればいくらでも解決策を一緒に考えてあげられるのに」と云うかもしれない。しかし、子どもたちの多くは直接相談ができなから悩んでいるのだ。

STOPit_stackedストップイットジャパンのビジョンは「助けたいとき、助けてほしいとき、いつでもどこでも報告・相談できる環境をつくる」だが、谷山さんは「STOPitが必要のない社会になることが一番嬉しいこと」だと云う。しかし当面「STOPit」が、いじめ対策の重要ツールになることは間違いないだろう。「STOPit」が、子どもたちの貴重な声が詰まった“宝箱”か、とんでもない災いの詰まった“パンドラの箱”なのかは、その箱を開く教育現場の方々次第と言っていいだろう。

「助けたい人を助けられる社会を一緒に作りましょう」と呼びかける谷山さんの声が、日本中に広まって行くことを期待したい。

関連URL

STOPit

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