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2018年11月16日

20世紀型教師はいらない!? 学校にAI・ロボットがやってくる

私たちの知らないところで難しい計算や制御をしてくれるのは「電子計算機」や「マイコン」、「コンピューター」や「プログラム」というものでした。最近では「AI」というものが電気釜や冷蔵庫、エアコンといった家電製品の制御から、自動車や航空機の操縦までやってくれるという。また、自動車の製造ラインや掃除、お寿司の握りやホテルの受付などで活躍するのがロボットです。AIやロボットの導入で教師がいらなくなるって、本当でしょうか。

AIとは何か

AIとはArtificial Intelligenceの略で「人工知能」のことです。AIには、人間の知能に迫って同様の仕事が出来るような幅広い知能と自意識を持つと言われる「汎用人工知能」と人間の能力のある部分や特定の分野に特化した「特化型人工知能」があります。2045年に訪れると予測されているシンギュラリティ(技術的特異点)は、「汎用人工知能」が人間の脳の能力を超えることで、その真偽は学者や研究者の見解が分かれるところです。2018年の時点で、まだ「汎用人工知能」は出来ていません。

Photo by PIXTA

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一方の「特化型人工知能」はめざましい発展を遂げています。チェスや囲碁、将棋といった人類の中では知能が高い人たちが職業としている分野では既に、AIが名人クラスを破っています。スマートフォンやスマートスピーカーでユーザーの要望に的確に答えてくれるのも、客からの電話での問合せやクレームに答えるのも、1秒間で株の売買を決断するのも、一人ひとりの子どもたちに最適な学習方法を提供するのもAIの得意分野となっています。

20世紀の産業を発展させた高度で緻密なコンピューターの「プログラム」とAIはどこが違うのでしょうか。いま活躍しているAI=「特化型人工知能」の特徴は「機械学習」です。
「機械学習」とは、最初に人がすべてをプログラミングするのではなく、大量のデータをAIが自分で解析して、法則性やルールを見つけ出すというもので、まさに「学習」を積み上げていくのもです。もちろん、データの解析方法などの「学び方」は人がプログラムで指示しています。この学び方などのプログラムなしで、AI自身が自分の判断で学んでいく「ディープラーニング」が実現すると、「汎用人工知能」~「シンギュラリティ」となっていくのかもしれません。

AIが教室にやってくる

AIを活用した学習システムを2つ紹介します。1つはすららネットの「すらら」です。「すらら」は、アダプティブ・ラーニングやゲーミフィケーションの要素を取り入れた対話型アニメーションのeラーニングです。一番の特徴は、一人ひとりのペースや学力レベルに合わせて問題を出し、学習計画を立てていけるようなオーダーメイド学習、いわゆるアダプティブ・ラーニングだということです。AIは一人ひとりに対応するために様々に活用されていますが、例えばこんなことができます。

「すらら」の画面イメージ

「すらら」の画面イメージ

中学1年生が数学の問題を解いていて、ある分野になると苦手だということが明らかになります。すると「すらら」は、苦手の原因を履歴から探って特定します。例えば原因を「分数と分数のかけ算が出来ない」と特定すると、小学校の問題から「分数×分数」の問題を選んで分かるまで繰り返し出題して、いま解けない問題の原因から解決します。「すらら」は、小学校1年生から高校3年生までを対象に国語・英語・数学(算数)の3教科を提供していて、導入している学習塾が690校以上、学校では150校以上で利用されています。

1116-qb2つめに紹介する「Qubena」は、最初からAIを活用することを前提に開発された、数学(算数)に特化した世界初の人工知能(AI)型タブレット教材です。「Qubena」を開発したCOMPASSの神野 元基CEOが留学中のシリコンバレーで「シンギュラリティ」に出会い、この時代を生きる子どもたちに「生き抜く力を身につけさせなければならない」という使命感で帰国して開発したものです。間違いの原因を人工知能が分析し、たとえ過去の単元や前の学年の分野につまずきポイントがあったとしても、原因を解決するためにその生徒が解くべき問題へと誘導するのはもちろん、生徒が「解いている問題、解答時間、正答率なと」の学習データを専用の管理システムによってリアルタイムに収集・分析したり、ヒントや解説アニメーションを活用して、上級学年の単元へ進むことも、難易度の高い問題へ挑戦することもできます。

COMPASSが実施した導入実験では、通常14週間かけて行う1学期の授業が2週間分の授業時間で終わり、受講者全員が学校平均点を上回る結果となったといいます。実に7倍の速さということです。現在、経済産業省の「未来の教室」プロジェクトの実証事業にも使われいます。

ロボットも教室にやってくる

AIが学びの形や質、スピードにまで影響をもたらす可能性があることはおわかり頂けてたと思いますが、ロボットも教育現場で活躍の場を広げようとしています。得意な分野は英語とプログラミングです。そもそもロボットはプログラミングで動く訳ですから、プログラミング学習に使われるのは当然として、英語で利用されるのはなぜでしょうか。

2020年の学習指導要領の改訂により英語は小学校では、5~6年で「外国語」として教科化され、3~4年では「外国語活動」が必修化されます。これまで「慣れ親しむ」程度だった小学校英語が、「コミュニケーションできる」レベルを求められることになります。3~4年で「聞く・話す」を体験し、5~6年では「読む・書く」能力が求められることになりそうです。また、中学校でもこれまで高校で実施されていた「英語で英語を教える」という指導方針が示されています。中学や高校では英語の専任教師がいますが、小学校ではどうでしょうか。「読む・書く」は学生時代に学んだでしょうが、「聞く・話す」まで自信のある教師は少ないことでしょう。ALT(外国語指導助手)を活用すればいいのでしょうが、人材や費用の問題で簡単ではありません。そこで登場するのがロボットです。

柏の葉T-SITEのイベントで

柏の葉T-SITEのイベントで

英語学習ロボットとして最も有名なのは「Musio(ミュージオ)」です。「Musio」は、人工知能エンジンや人工知能ソーシャルロボットを開発している米国企業のAKAが開発した英語学習AIロボットで、自ら考えて会話し、その内容を記憶していくコミュニケーションロボットです。米国のネイティブ英語での自然な英会話ができるチャットモード、専用教材でレベル・目的別の英語学習ができるチューターモード、単語や表現、会話フレーズの発音練習ができるエデュモードを搭載し、英語学習を楽しくサポートしてくれます。サイズは幅174×奥行き83×高さ218mmで、重さ約 850gです。

昨年発売以来、多くの学校や教育機関で実証研究やプロジェクトが進行していて、ICT教育ニュースでも度々取り上げています。例えば、明星中学校・高等学校は昨年4月、「Musio」を、私立中学校としては日本で初めて授業に導入。週5コマある英語の授業時間内で、概ね週2回利用しているということです。生徒が使い慣れた段階では、生徒が自由に使える時間を増やしていき、生徒の発話量を増加させるとともに、「(非人間との)リアルな英会話」を通して「実践で使用できる本物の英会話力」を養っていくとしています。

戸田市の導入イメージ

戸田市の導入イメージ

埼玉県戸田市教育委員会では昨年10月から、同市の公立小・中学校向けに「Musio」を活用した外国語活動授業を開始。戸田第二小学校では、5年生を対象に週2回の外国語活動のモジュール授業で、「Musio」を活用した授業を実施しています。あらかじめ設定された文章を、「Musio」に続いて児童が発声し、発音や抑揚などを「Musio」がチェックするというものです。今年1月からは戸田東中学校で、グループごとに「Musio」を使い、その日の重要表現の発音練習に取り入れています。授業では、Musioが一人ひとりの発音を分析・評価し、適切な発音になるまで繰り返し練習するというもの。これまで教師1人では難しかった個人の発音チェックを「Musio」が代行することで、クラス全体の発音レベルの向上を目指しているといいます。

教室の「NAO」

教室の「NAO」

もう一つ、今年になってメディアへの露出が増えてきたのがフランス生まれの人型ロボット「NAO」です。身長は58㎝、体重は5.4㎏。Pepperに比べたらものすごく小型で軽量ですから、持ち運んだり収納したりするのに便利。でも、もっと小型のロボットに比べたら存在感も充分あるので、教室の一番前のデスクの上にいてもしっかり見える、ちょうどいい大きさ。「NAO」の1番の特徴は「かわいい」ことです。可愛くて親しみやすい。この親近感を得やすいというのは、学校教育の現場ではおおきなメリットを生み出すのだそうです。英会話を学ぶ日本人の多くは「恥ずかしい」「失敗したくない」という思いが強く、生身の先生と対面しても上手にコミュニケーションできません。子どもも同じです。そんな時、可愛いロボットが相手なら、ゲーム感覚で楽しく対応できるし、恥ずかしい事もない。

教師という職業は残れるか

さて、AIの進化によって社会のあり方が変わり、「何年後には何パーセントの職業がなくなる」といった記事を見かけます。なくなる職業としては「電車やバスの運転手」「工場の組立工や梱包担当」「銀行の窓口」「スーパーのレジ担当」などがあげられます。一方、なくならない職業には、「小学校の教員」「中学校の教員」が必ず入っています。しかし、安心してはいけません。教壇に立って、一方的に知識を伝授するだけの20世紀型教育を続けていたら、すぐにAIやロボットに取って代わられるでしょう。

「教師」がなくならない理由は明らかにされていませんが、おそらく「触れあい」「見守り」「気配り」「思いやり」といった、人間的で曖昧な要素が重要な職業だからではないでしょうか。21世紀型のICT活用教育になっても変わらず教師に求められる能力かもしれません。因みに、なくならない職業に「高校の教員」はありません。なぜでしょうか。(編集長:山口時雄)

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