2024年5月22日
マイクロソフトが向かうNEXT GIGA 「AI in Education 教育現場にもAIを」/EDIX2024リポート
~自治体、教員、児童生徒の「三方よし」実現のために~
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5月8日〜10日、東京ビッグサイトで開催された教育総合展(EDIX2024)において、マイクロソフトは「AI in Education 教育現場にもAIを」というコンセプトのもと最新のAIソリューションなど多数展示。「特別セミナー」エリア、ハンズオンで体験できる「体験学習」エリア、「児童生徒向け」「教員向け」「教育委員会向け」の各ソリューションと「次世代端末」展示エリアが設置され、多くの来場者がAIソリューションに触れ、事例に耳を傾けた。EDIXのマイクロソフトブースで体験できるこれらAIソリューションを紹介しよう。
事例紹介セッション:リーディングDX事業の取り組みを通してみえてきた
教育現場における生成AIとの付き合い方 〜大阪市教育委員会
「特別セミナー」エリアでは、大阪市教育委員会 今利康博 総括指導主事と倉木直也 総括指導主事によるAIを活用した教育実践事例の講演が行われた。大阪市は令和5年度、文部科学省のリーディングDXスクール事業 生成AIパイロット校に小中4校が選出された。
◆小学6年生国語 俳句の授業での活用例
俳句の授業でのAI活用という斬新な事例が紹介された。学習のねらいは「様々なアドバイスを受け俳句の表現を工夫する」「生成系AIの情報を鵜呑みにせず内容を吟味する」。
まず児童らは、心が動いたことを十七音の俳句で表現する。教員がマイクロソフト社の生成系AIである、Microsoft Copilot(コパイロット)を活用し児童の俳句へのアドバイスを取得、児童に個別にフィードバックする。児童らはグループで話し合い、俳句の表現を工夫してよりよいものとし、自分の意見をまとめるという流れだ。Copilotには俳句の特徴などの基本情報を与え、「小学6年生にわかるようなアドバイス」という指示を出している。
Copilotのアドバイスに期待したり、あるいは「このアドバイスはいいけど、これはイマイチやなぁ」とアドバイスに納得できない様子であったり、「いろんな意見があるけど、どうまとめようかな」と試行錯誤したり、「負けんとこう」とライバル視したりと児童らが授業を楽しんでいる様子がみてとれる。
「もっとオノマトペを知りたい」という質問が出た際は、教員が代理でCopilotを使ってアドバイスを得た。
倉木総括指導主事は、グループで協議させた点、Copilotのアドバイスを鵜呑みにせず有りか無しかを相談させた点、インターネット上の情報を参照して児童自ら調べさせた点を工夫点としてあげた。「生成系AIからのアドバイスは納得できないものもあったけど友達と相談して、いくつかのアドバイスは参考にできました」「オノマトペの例をたくさん出してくれてよかった。切れ字(俳句の技法の1つ)などの難しいアドバイスは自分なりに調べることができました」という児童の反応は、まさに学習のねらい通りだ。Copilotを 1つの道具として活用し、情報を精査し、さらに深い学びにつながっていた。
◆中学2年生英語 英語と生成系AI活用法を同時に学ぶ授業例
英語での活用例が紹介された。学習の狙いは「既習事項を活用して、理想とするイラストを生成するための英文を書く」。
生徒はグループで「There is /are」を使い、事前に用意されているイラストを英文で表現する。教員がAIを使って無料でデザインや画像を生成できるアプリであるMicrosoft DesignerのImage Creatorで生徒の英文からイラストを生成。元の絵に近づけるように生徒らは試行錯誤し英文を修正し、プロンプトを工夫する。最後に教員が生成系AIを使って生徒の英文を添削し、生徒は正しい英文であるか確認をするという流れだ。
生徒からは「生成系AIは速いけれど一方で自分が思っていることと違う返事をしたり、間違ったことを教えたりすることがあると、知ることができた」という声があった。今利総括指導主事は、便利ですごいと鵜呑みにせずに自分で判断すること、自力で調べること、ファクトチェックの重要性を繰り返し説いた。
大阪市では、今年度以降も校務と学びでCopilotなど生成系AIの利用を継続しモデル化していく。児童生徒の利用も視野に入れた実証実験、教職員向け研修での周知にも取り組んでいくという。
児童生徒向けソリューション
AIを活用した新しい学びとして、Microsoft Teams for Educationで提供されるLearning Accelerators(ラーニングアクセラレーターズ)が展示された。音読や数学、情報検索と表現力を全ての子ども達が学べ、教える教員を支援し容易にデータ分析を実現するAI学習アプリだ。
◆AI音読練習ツール Learning Accelerators Reading Progress/Coach
Reading Progress/Coachは、英語の音読学習・評価ツール。学年、テーマ、単語数を設定し課題文章を生成することも、ファイルからアップロードすることも可能だ。配信された課題を児童生徒が読み上げるとAIが採点、フィードバックを元に何度でも復習し、納得がいった録音を教員に提出することができる。
いつでもどこでも音読学習ができること、AIが相手なのではずかしくないこと、何度でもやりなおせること、評価がやる気につながることなど児童生徒にとってのメリットは大きい。正解率、1分あたりの正確な単語数、韻律など確固とした基準のブレない評価、成長の把握、フィードバックのしやすさ、課題作成から配信・回収・評価と圧倒的な効率化など教員側のメリットも計り知れない。今年度中には算数/数学の学習・評価ツールMath Progress/Coachもリリース予定だという。
◆AIによる自己学習支援 Learning Accelerators / Search Progress
Search Progressは、調べ学習における児童生徒の検索アクティビティを教員が把握、正しく制限し情報リテラシーを指導するツール。児童生徒の検索ソースサイトを保存し、何回、どのサイトを利用したのかプロセスを教員が把握できる。一次情報のみに制限するなどフィルターの設定も可能だ。適切なサイトで十分に調べた生徒には「よく調べたね」と声掛けをし、そのやり方を参考に苦手な生徒へ指導しスキルトランスファーを実現する。
教員向けソリューション
Learning Accelerators などAIを活用した学び支援と併せて、デジタルツールで教員の働き方改革を推進するソリューションが展示された。これらは教育ライセンスの中で無償提供されている。
◆面談の予約 Microsoft Bookings
保護者との面談の調整は、プリントの配布、希望日の回答回収、時間の割り当て、通知といった手間と時間がかかっていた。オンラインのスケジューリングツールBookingsを活用すれば教職員は簡単な設定だけで、保護者はスマホから予約可能だ。劇的な業務効率化を実現する。
◆保護者との連携 Microsoft Teams for Education / Microsoft Forms
電話やプリントといった従来の学校と保護者の連携をTeamsやFormsの活用でデジタル化し双方の負担を軽減する。ペーパーレス化、教職員のオペレーション時間短縮、コスト抑制といったメリットがある。
教育委員会向けソリューション
教育委員会向けには働き方改革や情報セキュリティに関する展示があった。
◆働き方の見える化 Microsoft Power BI / AIによる働き方改革Copilot for Microsoft 365
Power BIはデータをまとめ分析し視覚化するツールだ。Copilot機能で「先生の残業状況をまとめて」と指示すれば適切なグラフやテーブルが簡単に出力*される。Microsoft PowerPointやMicrosoft Excel出力も可能だ。さらに残業の分析結果に対してCopilotを活用し解決策を生成し働き方改革への道筋をつける。
*Power BIのCopilot機能は2024年5月現在プレビューとなっています。
Microsoft Copilotは、人間に取って代わるものではなく、副操縦士という名前の通り、パイロットつまり先生の行き先、やりたいことを聞いて早く行けるよう支援し、プラスの提案をするものだという。
◆情報漏洩への対策 Microsoft 365 A5
Microsoft 365 A5ライセンスには高度なセキュリティ機能が搭載されている。情報漏洩への対策として、教員用ラベルのついたファイルは児童生徒や外部の人が開こうとしてもブロックされる。また誤ってメールに添付した場合も送信自体がブロックされ情報漏洩を防ぐ。
次世代端末エリア:9社20製品と豊富なパソコン ラインナップを展示
教職員・管理者向け、児童生徒向けのNEXT GIGA対応のパソコン、9社20製品と豊富なラインナップが展示された。児童生徒向けパソコンでは、完全クラウド型の「GIGA Basic パソコン」とオンプレミスでも利用可能な「GIGA Advanced パソコン」がある。
Dynabook K70は1,097グラムと軽量ながらバンパーを装備、MIL規格に対応し、机の縁においても落ちにくく壊れにくいのが特長。Lenovo 300w Yoga Gen 4は、Intel Processor N100搭載、普通の鉛筆がタッチペンになるという驚きの機能がある。
自治体、教員、児童生徒の「三方よし」実現のために
NEXT GIGAの教育をより良いものにするために自治体、教員、児童生徒の「三方よし」の実現が必要だとマイクロソフトは説く。教育現場には「自治体予算には限りがある」「教員はとにかく忙しい」「生徒達の低い精神的幸福度と学習意欲」といった解決すべき課題がある。課題を解決し「三方よし」を実現するために、EDIXでの展示にも見られるように「学校での働き方改革」「教員の教え方改革」「生徒たちの学び方改革」と三位一体の改革が欠かせないという。マイクロソフトは教育現場にベストな「AI」で改革を強力に後押しする。
※記事中で紹介した大阪市教育委員会のセッションの様子はこちら。
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