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2018年8月22日

私立高校の校長先生へ/高等学校学習指導要領の「情報科」対応できますか

学習指導要領は、国公立・私立を問わず適用されるものですが、私立の高等学校ではさほど重要視されていないという話を聞きます。もちろん、独自の校風に従って教育を実践するのが私立学校の特徴なのでしょうが、これからの時代「伝統」や「校風」だけで生き残っていけるでしょうか。時代の変化を反映して導入された新しい「情報科」、その目指すところを探ってみました。

文部科学省は今年3月、高等学校の次期学習指導要領を告示しました。そして7月に、学習指導要領「生きる力」高等学校学習指導要領解説を公開しました。

高等学校学習指導要領解説「情報編」の第1章総説の第1節改訂の経緯及び基本方針の「改訂の経緯」では、子どもたちが成人する今後の社会の変化やその時代を生き抜く資質について下記のように記述しています。

内閣府Webサイトより

内閣府Webサイトより

「進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり,身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする IoT が広がるなど,Society5.0 とも呼ばれる新たな時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測もなされている。また、情報化やグローバル化が進展する社会においては,多様な事象が複雑さを増し、変化の先行きを見通すことが一層難しくなってきている。そうした予測困難な時代を迎える中で,選挙権年齢が引き下げられ、更に2022年度からは成年年齢が18歳へ引き下げられることに伴い、高校生にとって政治や社会は一層身近なものとなるとともに、自ら考え、積極的に国家や社会の形成に参画する環境が整いつつある。

このような時代にあって、学校教育には、子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め、知識の概念的な理解を実現し、情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。」

2つの情報科

資料が公開された文部科学省のWebサイトを見ると、「総則」にはじまり「国語」「地理歴史」「公民」「数学」「理科」などが並び、「情報」が2つあります。「情報(各学科に共通する教科)」と「情報(主として専門学科において開設される教科)」です。

共通教科情報科(各学科に共通する教科))の科目構成については、これまでの学習指導要領にある2科目からの選択必履修を改め、全ての生徒共通の必履修科目としての「情報Ⅰ」を設けるとともに、「情報Ⅰ」において培った基礎の上に、「情報Ⅰ」の発展的な選択科目としての「情報Ⅱ」を設けました。生徒全員の情報活用能力を高めるとともに、より高度に学びたい生徒にも対応できる内容となります。

photo by PIXTA

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「情報Ⅰ」では,プログラミング、モデル化とシミュレーション、ネットワーク(関連して情報セキュリティを扱う)とデータベースの基礎といった基本的な情報技術と情報を扱う方法、コンテンツの制作・発信の基礎となる情報デザイン、更に、この科目の導入として、情報モラルを身に付けさせ情報社会と人間との関わりについても考えさせる学びを。

「情報Ⅱ」では、情報システム、ビッグデータやより多様なコンテンツを扱うとともに、情報技術の発展の経緯と情報社会の進展との関わり、更に人工知能やネットワークに接続された機器等の技術と今日あるいは将来の社会との関わりについて考えさせる学びとなっています。

3つの情報活用能力

話の順番が逆になってしまったかもしれませんが、そもそも情報教育の中での共通教科情報科の位置付けはどうなっているのでしょうか。情報教育とは情報活用能力を育む教育のことです。

photo by PIXTA

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情報活用能力を整理すると、「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参画する態度」の3点だと解説では述べています。
1)「情報活用の実践力」とは、課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力のこと。
2)「情報の科学的な理解」とは、情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と、情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解のこと。
3)「情報社会に参画する態度」とは、社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し、情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度のこと。

photo by PIXTA

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また、情報活用能力を構成する資質・能力のイメージとして、情報活用能力を資質・能力の三つの柱に沿って整理すると下記となります。
1)「知識及び技能」では、情報と情報技術を活用した問題の発見・解決等の方法や,情報化の進展が社会の中で果たす役割や影響、情報に関する法律・規則やマナー、個人が果たす役割や責任等について情報の科学的な理解に裏打ちされた形で理解し、情報と情報技術を適切に活用するために必要な技能を身に付けていること。
2)「思考力、判断力、表現力等」では、様々な事象を情報とその結び付きの視点から捉え、複数の情報を結び付けて新たな意味を見いだす力や、問題の発見・解決に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身に付けていること。
3)「学びに向かう力,人間性等」では、情報や情報技術を適切かつ効果的に活用して情報社会に主体的に参画し、その発展に寄与しようとする態度を身に付けていること。

photo by PIXTA

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そして、高等学校段階における情報教育を、共通教科情報科だけが担うように極めて限定的に捉えてはならないとして、情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ることと言明しています。あわせて、学校全体での情報教育を考えるときには、共通教科情報科と他教科等の学習内容や学習活動との関連をよく検討してカリキュラム・マネジメントを行い、効果的な指導計画を立てることが大切だとしています。

さて、共通教科情報科の学習は、社会、産業、生活、自然等の種々の事象の中から問題を発見し、プログラムを作成・実行したりシミュレーションを実行したりするなど、情報技術を活用して問題の解決に向けた探究を行うという過程を通して展開されるもので、実際の学習過程には多様なものがあると考えられます。これは「学びを変革」する大きなチャンスです。

しかし、皆さんの学校で、こうした「情報科」の授業は可能でしょうか。担当できる教師はいますか、実施できる設備環境は整っていますか。2022年実施の学習指導要領とはいえ、準備を始めないと取り残されてしまいますよ。

関連URL

文部科学省 / 高等学校学習指導要領解説

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