2017年3月16日
~現場の先生に読んでほしい~ 次期学習指導要領が示す“未来の学び”
「幼稚園教育要領案」と小学校・中学校における「学習指導要領案」はパブリックコメント期間を終了し、改訂作業も大詰めを迎えている。2020年実施というと、まだ先感もあるが、幼稚園では2018年度完全実施、小学校・中学校では2018年度から移行期間に突入する。準備期間は、ほぼ1年。今回は改訂される「学習指導要領」=“未来の学び”のポイントと情報活用能力の位置づけについて考えてみる。
答を先に言うとこういうことだ。
「いま社会は第4次産業革命を迎え、10年後20年後の社会がどうなっているか予測不能です。そんな時代を生きる子どもたちの“生きる力”を育むのが学校の教育活動の目的です。“何ができるようになるか”、“何を学ぶか”については『学習指導要領』が示していますが、“どのように学ぶか”については“カリキュラム・マネージメント”をしっかりやって、学校や先生が自ら考えて目指す授業を実現してください。そのためにICTは外せないでしょ」。
「学習指導要領」を掲げられると、お仕着せ、縛り、不自由といった単語が浮かんでしまうが、実際は「学びの理想像」を示しているのであり、実践は現場に任されているのだ。
今回の改訂では、「主体的・対話的で深い学び」の実現、が大きなテーマに掲げられている。新しい時代の子どもたちの資質・能力を育むために求められる学び方だが、これは教師の教え方に変化を求めるものでもある。さあ先生方、「学習指導要領」をちゃんと読んで、すこし未来の授業について考えみませんか。
“未知の未来に対応”学習指導要領のポイント
学習指導要領は10年毎に見直されることになっている。2020年の改定の次は2030年である。3年後の2020年でさえ、世界がどう変わっているのか分からないのに、2030年の世界など想像できるはずもない。まして現在は、第4次産業革命の時代。IoT、AI(人工知能)、ビッグデータ、ロボットなど、日進月歩の表現では追いつかない急速な“秒進分歩”の変化が、私たちの見えないところで進行している。
2020年に実施される「学習指導要領」は、2020年から2030年の10年間に学校で行う学習内容を定めるのものである。2030年の社会がどのようになっているのか、正確な予測が困難なのに、2030年以降の時代を生き抜くのに必要な学習指導内容がどのようなものなのかを具体的に定めることなどできるはずがない。
「学習指導要領」の改訂にあたっては、中央教育審議会の委員たちも、文部科学省の担当者たちもさぞかし悩んだことだろう。しかし、「将来の予測が難しい社会の中でも、未来を作り出して行くために必要な資質・能力を確実に育む教育」、「未知の社会を生き抜く力を育む教育」という素晴らしい視点を示してくれた。
答申でも「解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解いたり、定められた手続を効率的にこなしたりすることにとどまらず、直面する様々な変化を柔軟に受け止め、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え、主体的に学び続けて自ら能力を引き出し、自分なりに試行錯誤したり、多様な他者と協働したりして、新たな価値を生み出していくために必要な力を身に付け、子供たち一人一人が、予測できない変化に受け身で対処するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが重要である。」としている。
更に「生き抜く力を育む」という理念の具体化には、「生きて働く“知識・技能”の習得」、「未知の状況にも対応できる“思考力・判断力・表現力等”の育成」、「学びを人生や社会に活かそうとする“学びに向かう力・人間性”の育成」の3本の柱を偏りなく実現することだ、としている。
また、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という目標を学校と社会が共有し、連携・協働しながら新しい時代に求められる資質・能力を子どもたちに育む「社会に開かれた教育課程」を実現するという基本方針を示した。
子どもたちを育むのは学校教育だけでなく、社会と共有することだと明記された。
アクティブ・ラーニングと情報活用能力の育成
今回の学習指導要領改訂の肝ともいえるのが、アクティブ・ラーニングと情報活用能力(ICT活用能力)である。
中央教育審議会の審議のまとめや答申では、「アクティブ・ラーニング」という言葉を使用していたが、学習指導要領では使用されていない。概ね、「主体的・対話的で深い学び」に置き換えられている。
これは、中教審の議論で「授業改善」を目指して使用されてきた「アクティブ・ラーニング」という言葉には、「形式的に対話型を取り入れた授業や特定の指導の型を目指した技術の改善にとどまるものではなく、子供たちそれぞれの興味や関心を基に、一人一人の個性に応じた多様で質の高い学びを引き出すことを意図するものであり、さらに、それを通してどのような資質・能力を育むかという観点から、学習の在り方そのものの問い直しを目指すものである。」(答申から)とあるように、「アダプティブ・ラーニング」的要素も含まれているためと思われる。
「アクティブ・ラーニング」とか「アダプティブ・ラーニング」とか、用語でイメージを固定化する人がいるからだろうか。
さて、小学校学習指導要領の総則の第3 教育課程の実施と学習評価の1「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」では、はじめに「単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,児童の主体的・対話的 で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと。」
とした上で、「特に、各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性等を発揮させたりして、学習の対象となる物事を捉え思考することにより、各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(「見方・考え方」)が鍛えられていくことに留意し、児童が各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう学習の過程を重視すること。」とある。
つまり、すべての学びにおいて「主体的・対話的で深い学び」を取り入れた授業改善を行いになさい、ということのようだ。
すべての教科で活用するのは「情報活用能力の育成」も同じこと。
「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の(3)として「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。ま た、各種の統計資料や新聞、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。」とある。
あわせて、「児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動」と「児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」を、各教科等の特質に応じて計画的に実施すること、としている。
つまり、「主体的・対話的で深い学び」と「情報活用能力の育成」はすべての教科・学習の場面で計画的に取り組まなければならないということである。
引用ばかりが多くて読みにくい文章になってしまったことをお詫びする。
次ページに前文を全文引用しておくので、学校関係者には是非読んで「学習指導要領」の目指すところをそれぞれで感じ取って欲しい。下記の下記関連URLからダウンロードして、自分で解釈して欲しい。
関連URL
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案等の概要(PDF)
幼稚園教育要領案(PDF)
小学校学習指導要領案(PDF)
中学校学習指導要領案(PDF)
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