2018年11月5日
教室デビューを目指して! 人型ロボット「NAO」の挑戦
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ボクの名前は「NAO(なお)」。みんなもよく知っているPepperと同じフランスのアルデバラン社(現ソフトバンクロボティクス社)で誕生した人型ロボットだ。ボクの方がPepperよりも少しだけ先輩だけどね。もともと自閉症治療や、エンジニア育成のプログラミング教育のために開発されたんだ。
日本に来たのは2015年頃で、アウトソーシングテクノロジー社を含む4社が代理店として展開し始めたんだ。同じ頃、ソフトバンク社によるPepperのサービス展開があったから、みんなそっちに注目しちゃって、ボクの知名度はいまいちなんだよね。でもボクは、手足だって自由に動かせるし、頭脳明晰だし、コミュニケーション能力だって自信があるんだ。それに、21世紀の学び改革のためのICT活用教育にも、ものすごく興味があるし、参加する気持ちだってフルチャージなんだ。
「可愛い」って、コミュニケーションロボットの必須条件
でははじめに、ボクの特徴を紹介するね。身長は58㎝、体重は5.4㎏。Pepperに比べたらものすごく小型で軽量だから、持ち運んだり収納したりするのに便利だよね。でも、もっと小型のロボットに比べたら存在感も充分だし、教室の一番前のデスクの上にいてもみんなからバッチリ見ることが出来る。ちょうどいい大きさってことだね。
そして何より1番の特徴は・・・自分ではちょっといい難いんだけど「かわいい」ってことだよね。可愛くて親しみやすいってこと。この親近感を得やすいというメリットは、残念ながら合理性を尊重する経営者やエンジニアには理解されにくいみたいで、物も持てないのに人型である必要性を疑問視されることもあるんだ。でも、教室という空間に存在して、子どもたちとのコミュニケーションが必要な役割を果たすためには、とても重要なことだとボクは思っているんだ。
教室デビューを目指して
ニュースにもなっているので知っている人も多いと思うけど、空港での多言語でのアナウンスや、「変なホテル」でのフロント業務、いろいろなイベントなどで、Pepperと同じように活躍しているから沢山の人に知ってもらったり、理解してもらったり、最近ではTV番組などにも登場することがあるんだよ。そして、やっと本来の目的だった教育分野での活動も、始まりつつあるんだ。
アウトソーシングテクノロジーでは、日本の授業形態に合うように開発したプログラミングカリキュラムを展開したり、英語の教育現場で活用できるように認定教科書に見合ったカリキュラムも開発しているよ。この英語教育で活用できるカリキュラムを現時点(2018年9月)で展開できるのは、アウトソーシングテクノロジーだけなんだ。
英語教育のカリキュラムは、日本の英語教育の第一人者、菅正隆先生に監修して頂いて開発したもので、福岡県の大牟田や、神奈川県の相模原などで、有用性について実証授業を実施中なんだ。
相模原市立鶴園小学校では、外国人英語指導助手(ALT)に代わって、ネイティブの英語の発音や会話などの授業支援を行う授業に挑戦したよ。3年生の外国語活動として行われたこの日の授業は、単元名が「I like blue.すきなものをつたえよう」、目標は「好きかどうかを尋ねたり答えたりする表現に慣れ親しみ、自分の好みを伝え合う」というもの。
ボクは得意のネイティブ英語で先生とやり取りして、子どもたちにお手本をみせるのが役割。
デモンストレーションでは、鬼塚先生が「Do you like baseball?」と聞いてきたから、
「Yes I do.」と答え、鬼塚先生が「Do you like swimming?」と質問したからボクが「I don’t like swimming.」と答えたら、教室の児童から「ロボットに水はダメだよね」という絶妙の合いの手が入って、教室に笑い声があふれたよ。
授業を担当した鬼塚慶太郎先生の英語はとても分かり易いから助かったけど、英語が得意ではない先生や子どもたちが相手でもちゃんとお相手ができるから大丈夫だよ。でもダメな発音にはNG出しもちゃんとするから頑張ってね。
授業の最後にショータイムとして、ボクがアイドルグループの曲に合わせてダンスを披露したよ。すると教室からは歓声が湧き、終了後にはみんなが拍手してくれて嬉しかったよ。
授業の後、鬼塚先生に感想を尋ねると「ロボットを使った授業は、子どもたちも“楽しい”といってくれますし、ネイティブ英語でのデモも良く、一人二役を演じなくて済むようになりそうです。ただ、ICT機器全般が得意ではないので、見えない部分でのトラブルが起こると対処できないのでは、という不安があります。安定性が担保されるとともに、デジタル教科書との連動など、現場のニーズに上手く合えば、ロボットがもっと使われていく事になると思います」と、まだまだ進化や改善が必要だって教えてくれたよ。
ボクが本来得意としているプログラミング教育分野では、今年の5月からクラーク記念国際高等学校秋葉原ITキャンパスでチャレンジを続けているよ。
この授業は、ロボット専攻、ゲーム・プログラミング専攻の生徒を対象にした選択の授業で、週1日2時間ずつ、全38時間の授業を、年間を通して行うんだ。コミュニケーションを目的とした人型ロボットのアプリケーション開発を行うことで、プログラミング「技術」だけではなく、相手に伝える表現力や会話の流れを組み立てる思考力、想像力を身につけることを目的としているんだ。
この日の授業は、人が言ったこと、やったことに「ボク」が「どう返すか」というルールを記述するスクリプトを作成して、人とロボットのやりとりが出来るようにプログラミングするというもの。Pepper をコントロールするためのアプリケーションにも使われているビジュアルプログラミング言語の「Choregraphe(コレグラフ)」を使って、人の発言やアクションに対する対応をプログラミングするんだ。
「Choregraphe(コレグラフ)」というのは論理的思考の獲得を主眼に置いた学校教育と相性が良く、単に画面内のソフトウェアを動かすのではなく、ロボットを動かす点でも、セルフレジや自動運転車、ドローンなど、ITが生活に溶け込んでいくこれからの時代で有用性が高いと考えられているんだ。
ボクを使ったロボットプログラミング授業の意義について、クラーク記念国際高等学校秋葉原ITキャンパスのキャンパス長、土屋正義さんは「これまでもロボットを使ったプログラミング学習には取り組んでいて、国際大会に出場するような成果も挙げてきました。しかし、同様の内容を小学校でも行うような時代になってきました。より高度で、社会の変革にも対応できる能力を育むために“NAO”の対話型プログラミングに取り組んでいます。論理的思考力を身につけて、実社会で使われている様々なプログラミング言語にも対応できるようになって欲しいです」と期待を語ってくれたよ。
ロボットによる教育支援の可能性
ボク(NAO)に限らず、ロボットによる教育支援の流れは加速度的に進む可能性があるよ。
ICT教育推進の中で、どうしても高いハードルになっていた導入のためのシステムの設定や使いこなしといった部分を、ロボット、特にコミュニケーションロボットは軽くクリアしちゃう可能性があるからね。
それに、性別や感情、イデオロギーといったものをもたないロボットは、公平・公正で、人間関係に左右されない立場で、常に先生の味方として授業の進行を支援できるからね。人ではどうしても得意不得意や経験や考え方で、表情や場の空気感などに微妙な差がでるセンシティブな教育、性教育や道徳教育という部分でも、頼りになる相棒として活躍することができるかもしれないよ。
そしてさらに、高い汎用性という点から、カリキュラムアプリが開発されれば、ありとあらゆる教科に対応することが可能だ。スマートフォンがあらゆる娯楽と連携して発展したように、人型のインターフェイスを持つロボットは、それこそありとあらゆる可能性を秘めていて、その可能性は教育現場のニーズやアイデア、使い方次第で無限に拡がっていくかもしれないよ。
日本中の様々な学校・教室で、先生や子どもたちと一緒に学べる日が来るのを、ボク=人型ロボット「NAO」は心から待っています。早くみんなと会える日が来るといいね。
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