2022年10月17日
地理的ハンデもなんのその、山あいの高校が ASUS Chromebook で繋がる地域・世界/島根県立津和野高等学校
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都道府県や市町村の特性をふまえた端末選び
校務負担の軽減であったり、より進化した授業づくりであったり、教育現場へのICT導入において何を求めるかはケースバイケースだ。端末の選定についても同じことが言える。
これが私立校であれば、各校の課題や環境に照らして選ぶことができるが、公立校の場合は多少事情が異なる。都道府県や市町村(教育委員会)が選定し、地域内の公立校へ同じものが一斉配備されるのが原則だからだ。そのため公立校での端末選びを見れば、地域の特性や、自治体全体として目指す教育の在り方が見えてくる。
そんな中、島根県教育委員会が採用したのが「ASUS Chromebook Detachable CZ1 (CZ1000)」だ。2022年度に県立高校へ入学したすべての生徒を対象に、約5700台が配備された。県内公立高校の中で、先行実証校として2020年から取り組みを開始している同県立津和野高等学校の山根幸久教諭に話を聞いた。
隣の学校まで20㎞以上、出張は片道4時間
開口一番、「島根県には地理的ハンデがある」と語る山根教諭。同県は東西に長く、その延長は約230㎞。比して人口は約66万人と全国で2番目に少ない。つまり、少ない生徒と学校が広い範囲にわたって点在しているということだ。
その影響で、他校との交流や大学・企業との連携教育を行おうにも、距離や交通便が邪魔をする。「特に本校のような中山間地は深刻です。隣の高校ですら、20㎞以上離れています。県庁所在地である松江市まででも片道4時間かかり、教員の出張も一苦労。島根県下は、そういった学校が少なくないのです」。
条件をすべて満たした ASUS Chromebook に白羽の矢
そこで同県が目指したのが、ICT活用で物理的な壁を乗り越えることだった。端末選定において重視したのは「ハイスペックである必要はないが、相応のことができる」「公立校のBYAD形式であるため、廉価であること」「端末に情報(データ)が残らず、壊れても代替が容易であること」など。これらをすべて満たしたのが Chromebook だった。
Chromebook は、Google 独自の「Chrome OS」を搭載したノート型PCで、各種のアプリケーションやデータがすべてクラウド上で稼働することが特徴。中でも今回採用された「ASUS Chromebook Detachable CZ1(CZ1000)」は、本体とキーボードが着脱可能なデタッチャブル式、本体に格納可能なUSIペンが標準搭載、MIL規格準拠で120㎝(カバー装着で150㎝)の高さから落としても大丈夫な堅牢性が魅力だ。山根教諭も、こうした特徴は「管理がしやすく、極めて学校向き」と評価する。
「学びの主体」を子どもたちへ
新しい学習指導要領にも見られるように、現在の教育における主体は、教育者から学習者に移りつつある。「何をどう教えるか」という教員が主語となる学びから、「何をどう学ぶか」という学習者(児童・生徒)が主語となる学びへの転換だ。
「とにかく、生徒たちが自分で考えたり、手を動かしたりする時間を増やしたかったのです。ICT(端末)をツールに使うと、いやでも生徒を主体にせざるを得ないですからね」と笑う。
山根教諭は「主体的な学び」の研究教員を務めており、以前からグループワークや探究要素の強い授業に熱心だったが、アナログでこれらを行うのは骨が折れたと言う。例えば、すべての資料やワークシートを紙媒体で作らなければならない。ポスターセッションのように1枚の模造紙にまとめる場合、その紙のある場所に生徒全員が物理的拘束を受ける。結果、準備や作業に時間が取られ、同県や教諭らが目指した「生徒が主体になる時間」がどうしても不足しがちだった。
しかし、Chromebook の導入でこれらは一気に解決へと向かう。資料の配布はすべてオンライン、成果物もクラウド上で共同編集できるため、場所も問わない。作業の時間が減ったため、考えるための時間をより多く使えるようになり、さらに他校や外部との連携も容易になった。
Chromebook 導入で、生徒が課題と向き合える時間が大幅UP
この日、山根教諭が行ったのは英語の授業だ。しかしそこには、教科書本文を訳したり音読したりするだけの、従来の授業の姿はなかった。エコカーや自動運転など車に関する事前資料を読んだのち、知識構成型ジグソー法で意見を集約して、自分なりの「未来のクルマ」を(英語で)プレゼンテーションするというグループワークだ。
Chromebook 導入以前から同じ内容の授業は行っていたが「以前は、やはり時間的制約が多すぎました。全員が発表する時間がないとか、ディスカッションをしても消化不良で終わってしまうとか。しかし今はそんなことはありません。生徒が課題に向き合う時間が圧倒的に増えました」と目を細める山根教諭。
他教科でもさまざまな活用が見られる。例えば Google Earth を用いた地理の授業や、数学でのグラフ作成、あるいはアプリを用いて実際に作曲する音楽の授業など、各教員が創意工夫を凝らして「学びの主体を生徒に」移そうとしている。
ICTと Chromebook で、一人ひとりが輝ける学校に
また同校は、「高校魅力化プロジェクト」の人気校としても知られる。主に離島中山間地の小規模校などが、独自の教育コンテンツを作って生徒を全国から募集し、魅力ある学校づくりを進めるムーブメントだ。特に地域と連携した探究学習は同校の強みの一つだが、山根教諭は「探究学習は格段にやりやすくなった」と言う。
地域探究学習では、地域住民や遠方在住の専門家などから指導を受けることも多いが、ICTと Chromebook で課題や資料のやり取りもスムーズになった。「こんな僻地でも、世界と簡単に繋がれる。サポートも手厚くできる。実際、 Chromebook を取り入れてから生徒の課題への添削やメッセージなどは格段に増えました。子どもの可能性を伸ばすオプションが増えたと言えばいいでしょうか」(山根教諭)。同校はこれらの活動が評価され、Google for Education 事例校にも認定されている。
現在進められている高校の普通科改革を背景に、地域連携をさらに深めて特色を出していきたいと展望を語る山根教諭。「小さな学校ですが、だからこそ一人ひとりに目が届き、誰もが輝ける学び舎にしたいんです」。
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