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2026年9月17日
AI添削だけで総合型選抜対策は完結するのか。プロ講師3名に聞いた「掘り出す力」と「語れる力」
オンライン家庭教師マッチングプラットフォーム「マナリンク」を運営するNoSchoolは15日、総合型・学校推薦型選抜対策に関する利用データの分析と、プロ講師への取材を実施し、その結果を発表した。
AIを使えば、志望理由書や小論文の作成だけでなく、自己分析や模擬面接まで、受験生が一人で進められるようになった。
それでも、総合型・学校推薦型選抜対策として、オンラインで個別指導を受けたいという相談は前年度比38%増加しているという。さらに、まずは1回だけの単発授業を受けた家庭の多くが、その後も追加授業を受け、対策を続けていた。
利用データからは、家庭からの相談が単に「文章を直してほしい」というものだけではないことが明らかになった。また、総合型選抜を指導するプロ講師3名への取材からは、文章が完成する前と完成した後のそれぞれで、プロ講師との対話が担っている役割が見えてきた。
オンライン家庭教師マナリンクの利用データと指導現場の声から、AI時代の総合型・推薦対策について調査した。
オンライン家庭教師マナリンクに寄せられた相談を家庭単位で集計したところ、総合型・学校推薦型選抜対策に関する相談は、2024年度から2025年度にかけて38.0%増加していた。
文章の作成や添削、模擬面接をAIでも行える環境が広がるなかでも、プロ講師へ相談する家庭は増加傾向にある。家庭教師による指導では、文章の添削以外に何が行われているのか。プロ講師への取材から、まず見えてきたのが、本人がまだ言葉にしていない経験や考えを「掘り出す」という役割。
AIは、本人が入力した経験や考えを整理し、文章の構成を整えたり、追加の質問を投げかけたりできる。しかし、AIが本人固有の経験を扱うにはその経験が対話の中に持ち込まれる必要がある。本人が重要性に気づいていない経験や、「入試では使えない」と自分で外している気持ちは、AIとの対話にも出てこない可能性がある。
また、どのような問いをAIに投げかけるかは、使う本人が持っている視点にも左右される。プロの講師が担っている1つ目の役割は、本人が最初に示した情報だけを整理するのではなく、会話や反応を見ながら、まだ言葉になっていない経験や考えを掘り出すことだということがインタビューを通じて見えてきた。
「本人が自分で外していた経験を拾い直す」
高校生たちには自主規制があると思います。総合型選抜って評価されることが前提の枠の中にいるので、これは喋っちゃいけないとか、ここは見せないとか、いろいろあります。受験生は入試で評価されることを意識すると、本来の経験や気持ちを自分で話題から外してしまうことがあるんです。私は生徒との対話を重ねながら、その自主規制を少しずつ外し、本人が本当に伝えたかったことを一緒に探しています。本人が重要ではないと思っていた経験や、うまく説明できず避けていた気持ちの中に、その生徒ならではの志望理由が隠れていることもあります。目的は、志望理由書に使えそうなエピソードを探すことだけではありません。本人が自分の経験や価値観を捉え直し、「自分はなぜこの進路を選びたいのか」を発見するところから支援しています。
「偏差値が高くても、物事を見る角度が多いとは限らない」
面接も小論文も、当日はAIもいないし誰もいない状態で取り組まなくてはいけません。試験当日までに自分の心と頭の中にぱんぱんに詰め込んでおいて、当日その中から適切なものを取り出す。それができるようにするための対話を、大事にしています。
どれほど学力が高くても、生きてきた時間はまだ18年ほどです。一つの問題を誰の立場から考えるかによって答えが変わることまでは、一人ではなかなか気づけません。
例えば医学部では、人の命に関わる、正解のないテーマについて問われることがあります。知識だけで答えを出すのではなく、異なる立場から考え、自分なりの判断を組み立てる力が必要です。
プロ講師への取材から見えてきたもう1つの役割が、整えられた文章を本人が自分の言葉で語れる状態へつなげること。
オンライン家庭教師マナリンクの受講状況を調べたところ、最初に授業1回のみの単発コースを選んだ家庭の72.7%が、初回授業後3カ月以内に推薦対策の授業を追加で申し込んでいた。さらに、追加受講の内容を確認すると、そのうち56.3%が、面接・口頭試問・プレゼンなどの「話す対策」を受講していた。
追加受講の内容には、志望理由書や小論文などの「書く対策」を受けた後、面接等の「話す対策」を追加したケースが含まれていた。また、最初に面接対策を受け、その後も同種の授業を追加で受講したケースも確認された。
これらのデータから、家庭教師による推薦対策が、一度文章を添削して終わる形だけではなく、書いた内容を面接等で語る段階まで続く支援として利用されていることが分かる。では、文章が完成した後、受験生は実際にどのような壁に直面しているのか。
「AIで書いたのに、本人が内容を説明できない」
「一旦AIで書いてきました」っていう生徒さんはよくいらっしゃいますね。文章だけを見ると、語彙や構成が整い、説得力のある志望理由書になっていることもあります。ただ、書かれている内容について聞いてみると、本人から言葉が出てこないことがあるんです。
話し言葉をAIが高度な書き言葉に変えてくれるんですが、それが実際にちゃんと自分の意図を反映しているかどうか、本人がわからなくて自信がない、というケースが多いです。喋っている時の間合いと文字の言葉の間合いで、AIが書いたかどうかはすぐにわかりますし、深掘りしても言葉が出てこないので、面接では一発でわかってしまいます。
だから私は、完成した文章を直すだけでなく、一つひとつの表現について、これはどういう意味か、なぜそう思ったのかを本人に問い返すようにしています。こうした対話を繰り返すことで、書類上の言葉を、本人が理解し、質問に応じて自分で取り出せる言葉へ変えていくようにしています。
AIが志望理由書や小論文を整えることが当たり前になれば、文章の完成度だけで受験生を見極めることは難しくなる。今後は、面接や口頭試問の場で「なぜそう考えたのか」「その言葉はどの経験から生まれたのか」を掘り下げ、本人が自分の言葉で説明できるかどうかを確かめる重要性が、これまで以上に高まっていくと考えられる。
プロ講師への取材でも、AIを使って整えた文章であっても、本人の話し方との違いや、質問を重ねたときの受け答えから、理解が伴っているかどうかは分かるという指摘があった。AIは文章をつくることはできても、その内容を本人の考えとして定着しているとは限らない。大学側も、完成した文章の奥にある、受験生自身が何に関心を持ち、何を追究しようとしているのかを見ようとしているのではないか。
AIが書類の完成度を引き上げるほど、その文章の奥にいる本人を確かめる必要性は高まっていく。プロ講師に今後求められるのも、AIより整った文章をつくることではなく、AIが返した答えの妥当性を見極め、本人の中にある問いを掘り出し、それを自分の言葉で語れる状態まで導くことなのかもしれない。
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