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2021年11月22日

続・iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第8回】図工専科教員に聞く

【第8回】岩本 紅葉先生(新宿区立富久小学校)
図工専科教員に聞く!子どもの発想力を引き出す授業とは?

「わが校でも今年から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。iPadを活用した学びを実践している先生たちの活用事例をもとに、ICTが苦手な先生でも取り組める具体的な活用方法をご紹介します。

「正解のない問い」へのヒントは図工の授業にあり!

「発想力」「アイデア」といったキーワードを聞いてどのように感じますか? 「それならまかせておけ!」なんて先生も中にはいるかもしれませんが、「自分にはちょっと…」という先生の方が多いのではないでしょうか。さらに授業で子どもたちに身につけさせるとなると、なかなか一筋縄にはいきません。

子どもたちの発想・アイデアを引き出すポイントは?

近頃では「正解のない問い」という言葉をよく耳にするようになりました。われわれが学生の頃に教わった学習の多くは、どうやって正解に辿り着くかがゴール。「正解のない問い」などと言われて、なかなかイメージできないのも無理はありません。でも、意外に身近なところにヒントは転がっています。

そのひとつが図工の授業です。絵画や工作に正解なんてありませんよね。ではどうやって図工の授業は行われているのでしょうか。今日はICTを活用して、子どもたちの発想力を引き出す授業を実践している岩本紅葉先生を取材。新宿区立富久小学校で図工専科をされているICT×図工のスペシャリストです。

都内の公立小学校で始めたICT実践が国内外で評価

図工×ICTで数々の賞を受賞している岩本紅葉先生

岩本先生は、2019年の「ICT夢コンテスト」で文部科学大臣賞受賞。また2020年には、教育界のノーベル賞と言われる「Global Teacher Prize」で世界のトップ50にも選ばれました。さらに、2020年度文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞するなど、その取り組みは国内外問わず高く評価されています。

そんな岩本先生が授業でのICT活用を本格的に始めたのは前任校の三鷹市立第一小学校。2014年度の大学連携プロジェクトを機に教員に1人1台のiPadが導入された学校です。2018年度、2019年度には東京都のプログラミング教育推進指定校になり、全学年でプログラミングの研究授業が行われるなど、ICT活用の牽引役となっています。

「人とちがうことがスゴい!」が自由な発想の起点

「夜撮カメラ」で撮影された子どもたちの作品

三鷹市立第一小学校で岩本先生が行ったのが「光で描く」という6年生の図工の授業。ふつう絵を描くにはエンピツや筆、絵の具といった道具を使います。でもこの授業で使うのはペンライト。ペンライトアートのように光で絵を描くという実践です。もちろん紙は使わず、代わりにiPadを使って写真にします。

子どもたちはグループで協力してペンライトを動かし、iPadの「夜撮カメラ」というアプリで撮影します。「夜撮カメラ」はその名の通り夜景や夜空が撮影できるカメラアプリ。シャッタースピードを変えて撮れるため、ペンライトを動かして撮影すれば、幻想的な風景や具体的な絵を描くことができます。

・夜撮カメラ – 夜景・夜空に最高のカメラアプリ:App Store

「夜撮カメラ」で撮影された子どもたちの作品

でも実際に授業をはじめてみると、子どもたちは最初のうち、ただペンを振って動かすだけだったそうです。その様子に岩本先生は不安を感じたと言います。しかし、次第に要領を覚えた子どもたちは、色水に光を通してみたり水面に光を落としてみたりとさまざまなアイデアを実行に移し始めます。

「この子たちなら自然とちがう展開が出てくるはず」そう信じて待ったという岩本先生。子どもたちを信じて待つのは簡単ではないものの、ギリギリまで待つようにしているそうです。例や見本を見せることがあってもその通りにつくる子どもではなく、自分なりに工夫できている子どもを評価します。個性的な作品を大々的に紹介したり、人と違ったアイデアを思いっきり褒めるよう心がけていると言います。

【本日のワーク】低学年の子でもOK!簡単コマ撮りアニメーション

誰でも簡単にコマ撮りができる「KOMA KOMA for iPad」

「シンプルなインターフェースで手軽にコマ撮りアニメーションを撮影することができます」と岩本先生がおすすめするのは「KOMA KOMA for iPad」というアプリ。粘土でつくったキャラクターを動かすクレイアニメなど、ストップモーション動画を小学校低学年の子でも簡単につくることができます。

・「KOMA KOMA for iPad」:App Store

被写体をカメラの前に置いたら、「◎」ボタン(=シャッター)をタップして撮影。そのままiPadは動かさず被写体だけ少し動かしてみましょう。すると画面が二重にぶれた状態で表示されます。「オニオンスキン」という透かし表示機能で、前のコマとのずれ具合を確認しながら撮影することができます。

一定時間で自動撮影できるインターバル撮影機能

こうして被写体を動かしては撮影、動かしては撮影をくり返してアニメーション作品をつくっていきます。取り消したいときは青い「×」ボタンを押すと1コマ削除されます。10コマほど撮影できたら一度、動きを確認してみましょう。緑色の「▶︎」ボタン(=再生)をタップするとアニメーションが再生されます。

一定時間で自動撮影する「インターバル撮影」も可能です。左上のスパナのアイコンをタップし、インターバル撮影と書かれた時計を選択すればOK。撮影間隔は3秒〜10分で設定することができます。これなら1回1回シャッターボタンを押さなくていいので、被写体を動かすことに集中できます。

台紙を印刷すれば紙のパラパラ漫画もつくれる

できあがったら、黄色の矢印ボタンを押しましょう。作品が保存され撮影枚数が0(ゼロ)にリセットされます。保存した作品は画面右上の3本線ボタンをタップすると作品リストとして確認することができます。作品を見たり、続きを撮影することも可能。またカメラロールに動画として保存もできます。

さらに、作品を選択して「パラパラ漫画をメール」を選択すると、パラパラ漫画の台紙が自動生成されてメールで送信されます。台紙をプリントアウトして切り取ったものを束ねれば、あっというまにパラパラ漫画のできあがり。デジタルだけでなくアナログの工作としても楽しむことができます。なお、2021年夏にはブラウザ版も開発されました。iPad以外の端末でも取り組むことができるのでおすすめです。

・KOMA KOMA×日文|日本文教出版

子どもたちの発想の芽をじっと待てる先生に!

「動かない子どもたちを見るとつい教えたくなってしまう…」そんな先生は少なくありません。でもそこで教えてしまえば、先生に正解を求めるようになってしまいます。大切なのは信じてじっと待つこと。そしてオリジナルの発想やアイデアを褒めること。いっそ、先生自身が一緒に楽しんでしまうのが一番の近道なのかもしれませんね。

【実践者プロフィール】
新宿区立富久小学校
主任教諭・図工専科
岩本 紅葉 先生

2018年第21回東京新聞教育賞。2019年ICT夢コンテストにて文部科学大臣賞受賞。2020年Global Teacher Prize TOP50。令和2年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。「SOZO.Ed」「MIEE Talks@Admin.」「Type_T」「美術による学び研究会」所属。2018年よりマイクロソフト認定教育イノベーター。2021年よりAdobe Education leader。

【筆者プロフィール】
教育ICTコンサルタント
小池 幸司

教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて導入事例やノウハウを発信している。2013年3月にiPad×教育をテーマにした国内初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」を出版。2020年10月より、YouTubeチャンネル「TDXラジオ(https://www.youtube.com/c/TDXRadio)」を開設し、「Teacher’s [Shift]〜新しい学びと先生の働き方改革〜」のメインパーソナリティを務める。NPO法人 iTeachers Academy 理事・事務局長。

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