2020年6月1日
学校・教委がICT教育を充実するチャンス、経産省の「EdTech導入補助金」とは
3月に発表された経済産業省の「EdTech導入補助金」だが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う休校措置や緊急事態宣言による影響で募集期間や内容を変更して6月5日から7月17日まで募集が行われることになった。
5月25日に「EdTech導入補助金事務局」から発表された「EdTech(エドテック)導入補助金 令和元年度補正 先端的教育用ソフトウェア導入実証事業 『公募要領』」を元に、学校や教育委員会がICT教育整備に活用する方法を探ってみる。コロナ休校を経て、オンライン授業などICT教育が見直されたことで、補助金の上限額が1校当たり200万円に増額となっているし、対象範囲も拡大しているので、一層有効活用が望まれるところだ。ただし、パソコンやタブレットなどの情報端末や通信設備などハードウェアは補助対象にならない。あくまで今回の対象となるのは、ICT教育の中身だ。
はじめに「EdTech導入補助金」の目的について『公募要領』には下記のように記されている。
つまり、Society5.0時代の学びにはICT環境とそれを活用するEdTechソフトやサービスが必要だから、その導入を推進するEdTec事業者を応援する、ということ。今更だが、EdTechとはEducation(教育)とTechnology(科学技術)を合体させた造語で、Society5.0についてはこちらの関連記事を参照してほしい。ここでは、「Society5.0時代→ICT活用教育→EdTech活用」という流れを認識しておいてほしい。
「EdTech導入補助金」は、教育現場のICT活用を推進するためのものだが、学校や教育委員会が申請するものではない。
本募集は、『公募要領』に掲載されている下記の図のうち、EdTech 導入補助金事務局(一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が運営する)が、EdTech 事業者(補助事業者)の公募を行うもの。申請するのはEdTech事業者(企業)である。
なので、学校や教育委員会は事業者と連携することが必要になる。事業者は、導入実証を行う現場となる学校等教育機関*1とともに計画を策定し、学校等設置者と連携した申請が必須となる。
*1:学校教育法第一条に定める学校(ただし、幼稚園及び大学を除く)の他、教育支援センター(適応指導教室)あるいは一定の基準を満たすフリースクール。
補助対象となる事業は下記の通り。
2. 事務局が求める導入効果の測定等に応じられる規模(少なくとも1学校あたり必ず1クラス相当分以上の児童・生徒及び教職員に対して EdTechソフトウェア・サービスを導入する、又は EdTech ソフトウェア・サービスを用いて教職員研修を実施する等)の EdTech ソフトウェア・サービスの導入実証を行う事業であること。
3. 事業実施主体となる EdTech 事業者(補助事業者)と、導入実証事業の現場となる学校等教育機関および学校等設置者が一体となり、導入実証事業終了後の EdTech ソフトウェア・サービスの継続的な活用の可能性を視野に入れて策定した計画を実行し、事後の成果報告やアンケート等への協力を行うことを確約することができる事業であること。
原則として、導入するソフトウェア(アカウント数)の数量は利用者数を超えない範囲とする。
4. 学校等設置者および学校長等(EdTech ソフトウェア・サービス導入の責を負える者)の事業に対する合意と協力の意志があり、次年度以降の継続活用や予算化を検討できる事業であること。(『公募要領』から引用)
つまり、「学校等教育機関において、EdTech ソフトウェア・サービスの導入実証を行う事業」で「1学校あたり必ず1クラス相当分以上の児童・生徒及び教職員に対して」行われる者で、「事業者と学校が一体となって計画・実行して成果報告を行い」継続活用を検討できること。というのが条件。ただし、国(独立行政法人を含む)の他の補助金および助成金を活用する事業は対象とならない。
補助対象となる EdTech ソフトウェア・サービスの要件は下記の通り。
2. 教職員のみが用いる校務支援システムのような EdTech ソフトウェア・サービスは、児童・生徒が使用する EdTech ソフトウェア・サービスと併せて導入する場合に限って補助対象とする。
3. クラウドサービスであること。
※オンプレミスサーバー等の費用は本事業の補助対象外となる。また、マニュアルやテキスト等の補助教材制作費は EdTech ソフトウェア・サービスの補助手段と判断できる場合に限り補助対象として認める。
4. 導入効果の検証が可能なデータを有し、個人情報を除く統計的なデータを必要に応じて開示できること。
5. EdTech ソフトウェア・サービスの料金形態(定価、希望販売価格)がホームページ、製品カタログに明示されているか、個別に顧客向けの説明資料等に明示されており、事務局に提示できる状態であること。
6. 学校等教育機関の現場の実態および各種法令を踏まえた情報セキュリティの対策が確立された仕様、設計であること。
7. 事務局に対し、EdTech ソフトウェア・サービスのテストアカウントを発行できること。
8. 利益等排除の観点から、原価の算出が可能な EdTech ソフトウェア・サービスであること。(『公募要領』から引用)
つまり、「クラウドサービス」で、「児童生徒、教職員が使用して学習の効率化や高度化、指導の充実化を促し」「家庭学習でも使用できて」「検証データが提供できる」EdTechソフトウェア・サービスということだ。もちろん明確な価格設定やセキュリティも求められている。
具体的には、学習管理・授業支援 (LMS)に分類される、教職員や児童・生徒間で学習データや回答・発表などを共有・管理することで、学びの効率化や協働作業等を促すもの。
個々の児童・生徒の資質・能力を高めるために、または教職員が指導内容の発展や学習支援の円滑化のために用いる学習支援コンテンツ・サービスに分類される、オンライン学習ツール・学習動画・EdTech事業者が実施・提供する遠隔授業サービス、協働学習、ドリル教材、AI教材、プログラミン グ教材等。
そして、特定の教科にとどまらない発展的な学びを促すもの。
また、前述のソフトウェア・サービスと併せて導入実証を行う場合のみ対象となるのが、教職員の業務負担軽減や校務の統一化・標準化・業務改善など、学校内の諸業務を効率化する「校務支援ツール」と、学校と児童・生徒・保護者間で使用する掲示板やチャット・SNS 等での連絡のための「コミュニケーションツール」だ。
それでは、学校や教育委員会では何をすれば良いのか。もちろん、ICT教育環境の現状からこの機会に導入したいEdTechソフトウェア・サービスが絞り込めていれば参加事業者リストから狙いの事業者を見つけ出せば良い。何をしたらよいか、具体的なプランのない人々もまず、リストを見てみることを薦める。
とはいえ、このリストには5月29日時点で73社登録しているので、眺めるだけでも大変だ。細かな字で書かれたこのPDF資料には「事業者名」「取り扱いEdTechソフトウェア・サービス 概要」「ホームページURL」「お問い合わせ先」が記載されている。サービスの概要から使ってみたいEdTechソフトウェア・サービスを探し出し、ホームページにアクセスして内容を確認し、問い合わせ先のメールアドレスに興味のある旨を送信する。事業者とビジョンが一致すれば、導入計画の協議・策定へ進むことが出来るだろう。
かなり面倒な作業かも知れないが、ICT活用教育やオンライン授業など出遅れた感のある学校や自治体にとって最大200万円分のEdTechツールを無料で導入することが出来る大チャンスである。
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」でICT環境を整備して、経済産業省の「EdTech導入補助金」で中身を充実させる。出遅れている学校、自治体がこのチャンスを逃したら、新しい時代の新しい学びにも、Withコロナ時代の止まらない学びからも周回遅れになってしまうだろう。
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