2020年2月3日
iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第21回】VR・ARを「学び」に
iPadでバーチャルの世界を体験!VRやARは「学び」にも使える?
教育ICTコンサルタント 小池 幸司
「わが校でも来年度から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。導入までの残された期間で、授業での使い方を考えておくようにとのこと。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。ICTが得意でない先生が、タブレット端末を用いた新しい学びを始める際に知っておいてほしいこと、具体的な活用方法をわかりやすくお伝えしていきます。
リアル×バーチャルの融合!? VRとARのちがいとは?
「Pokémon GO」「ドラゴンクエストウォーク」といったスマホゲーム、アミューズメントパークのアトラクションなど、「VR(仮想現実)」や「AR(拡張現実)」といったテクノロジーが身近になってきました。いまの子供たちにとって、リアルとバーチャルの世界を行き来するのは日常のものになってきています。
ところで、「VR(仮想現実)」と「AR(拡張現実)」は何がちがうのでしょうか。どちらもコンピュータが作った仮想世界と現実の世界とをつなぐ技術ですが、ざっくり言うと、人の側からバーチャルの世界に飛び込むのが「VR(=VirtualReality:バーチャルリアリティ)」です。専用のゴーグルやセンサー付きグローブなどを身につけることで、仮想世界でのアクティビティが可能になります。
一方、「AR(=AugmentedReality:オーグメンテッドリアリティ)」は現実世界にバーチャルを反映させる技術。スマホなどのカメラを通して見ると、現実にはない映像がそこに存在するかのように映し出されます。わかりやすく言うと、現実世界にバーチャルを「ちょい足し」するイメージです。
今回は、そんな「VR」や「AR」の世界をiPadを使って体験してみたいと思います。教育現場でVRやARはどのように活用できるのか。授業やコミュニケーションを変える存在になりうるのか。その可能性を一緒に探っていきましょう。
ARの世界を体験できるおすすめのiPadアプリとは?
「AR(拡張現実)ってなんなの?」を理解するのに、まず触ってみてほしいのがGoogle社の「Just a Line」というアプリ。その名の通り「線を描く」機能しかありません。しかしこのアプリ、なんと空中に線を描くことができるのです。
・Just a Line – Draw in AR:App Store
同じWi-Fi内であれば、空中に描いた線を複数の端末でシェアすることも可能です。友だちと一緒に絵を描いたり、「空中◯×ゲーム」をしたり、そんな夢のような世界を体感できます。シンプルだからこそ、ARの可能性を実感できるアプリの1つです。
・Just a Lineの紹介ビデオ(出典:Google/YouTube)
次にご紹介するアプリは「Figment AR」。
バーチャルのキャラクターやアイテムが多数用意されていて、部屋の中や道端など、好きな場所に簡単にARを配置できるのが特徴です。動画に保存して再生すれば、現実世界に本当にキャラクターがいるような不思議な光景が映し出されます。
特におすすめなのがARフレームの機能です。窓枠(フレーム)を配置したら、iPadを手に持って窓枠を潜り抜けてみましょう。すると周りの景色が一変。深海や海外のマーケットなど、別世界の風景に囲まれます。再び窓枠を潜り抜けると元の現実世界へ。あの「どこでもドア」をバーチャルで体験できるわけです。
VR・AR教材のプラットフォーム「Expeditions」
「Expeditions」はVR・ARの教材を集めたGoogle社の教育用プラットフォーム。ツアーと呼ばれる1,000以上の教材を無料でダウンロードできます。ツアーに参加することで、歴史的建造物を調査したり、原子レベルの物質を見たりできるほか、サメを間近に見ることも、宇宙に行くこともできます。
ツアーには先生も生徒も一緒に参加することが可能。先生がガイド役となって数十人の生徒たちを引率し、バーチャルの博物館をクラスで見学するといった使い方ができます。また先生用のiPadにはガイドが表示。生徒に出土品を見せながら解説を聞かせるといったことが教室にいながらにして行えます。
VRツアーの場合には生徒全員分のVRゴーグルが必要になりますが、ARツアーなら、グループに1台のiPadがあれば実現可能です。いまのところ海外のものが多いですが、日本語対応しているツアーの数もありますので、ぜひ一度、使えそうなものがないか覗いてみてください。
【本日のワーク】色塗りした絵が動き出す!ARぬり絵を体験
今回のワークでは誰もが楽しめて、ちょっとした未来を味わえる「ARぬり絵」にチャレンジしたいと思います。使用するのは「Quiver」というアプリ。とっても簡単で、大人から子供まで楽しめますので、お子さんがいる方はぜひ一緒に遊んでみてください。
・Quiver – 3D Coloring App:App Store
まずは、ぬり絵の台紙を印刷しましょう。アプリを起動すると「ぬりえパック」というボタンがありますのでタップします。有料のぬりえパックもありますが、まずは無料のものでOK。はじめての場合は「Quiverスターター」がおすすめです。
iPadからの印刷(Air Print)がむずかしい場合には、パソコンでQuiverのWebサイトにアクセス。台紙のPDFファイルをダウンロードして印刷しましょう。ちなみに、A4サイズだと塗るのが結構大変なので、お試しであればA5〜B5サイズで印刷するとちょうどよさそうです。
続いては、ぬり絵タイム。色鉛筆やクレヨン、マジックなど使用する文具はなんでも構いません。童心に戻って思い思いの色で塗っていきましょう。AR体験という意味では、なるべく濃いめの色でカラフルに塗った方がおもしろいものができます。
色塗りが終わったらいよいよお待ちかねのARタイムです。アプリを起動して画面下にある蝶々のボタンをタップ。iPadのカメラをぬり絵にかざして、画面の赤い色が青に変わるように距離を調整してください。フォーカスが合うと、色を塗ったキャラクターが飛び出してきます。
子供たちがワクワクする!そんなテクノロジーに触れる機会を
AR体験はいかがでしたか。ちょっとワクワクする体験だったのではないでしょうか。ARもVRもまだまだ発展途上の技術。無理に授業で使おうとする必要はありません。大切なのはこういった技術に子供たちが触れる機会を作ること。一緒に遊ぶことではないでしょうか。「これってどんなことに使えるかな?」そんな問いかけをして、子供たちと一緒にアイデアを出してみるのもいいかもしれませんね。
【筆者プロフィール】
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)
2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。NPO法人 iTeachers Academy 事務局長。オンラインショップ「先生のためのICT活用塾」を運営。
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