2020年2月17日
関西の名門校「関西学院高等部」が挑戦する「探究学習2.0」の取り組みとは?
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関西屈指の歴史と伝統を誇る名門校、関西学院高等部。「キリスト教主義」「リベラルアーツ」「アクティブラーナー」「世界市民」「クラブ活動」の5本を教育の柱として、バランス良くさまざまな分野の知識を得て、人としての基本的な教養を得ることとしている。
同校の教育にはファンも多く、何代にもわたって子どもを通わせる関学ファミリーも少なくないという。中でもユニークなのは、40年近くにわたって実施されてきた「読書科」と呼ばれる独自の探究学習だ。
2月24日(月・振休)に「探究学習×ICTカンファレンス 2020 〜ICTでより深める探究学習のデザイン〜」と題して研究会を開催する、関西学院高等部副部長(教頭)の田澤秀信先生に、同校の探究学習の狙いや研究会の見所などを伺った。
関西学院高等部では「読書科」と呼ばれる独自の探究学習をおこなっているそうですね。どのような授業なのでしょうか
本校の全学年で必須の「読書科」は、「読書」と「研究」の2本柱から構成されています。読書の習慣によって自らの心を耕すことや、読書を通して出会ったさまざまなテーマを持ち続け、これに答えていく技量を身につけることを目指します。
高1は、「テーマ読書」という生徒自らがテーマを決めて、関連する書籍を数冊見つけて読み、そのブックガイドをつくって、同級生にブックトークと呼ばれる発表をおこないます。その過程で情報収集能力や編集力、プレゼン力などを身につけていきます。
高2からは、論文作成演習がはじまります。テーマの設定から、卒業論文の仕上げ・発表まで、2年間かけてじっくりと研究を続けます。
高3になると選択科目も増え、隣接する関西学院大学の教員による経済学、商学や国際関係、心理学や教育学なども選択できます。これらを通じて、自分の興味・関心を掘り下げていきます。
最終的に一つのテーマに決め、先行研究や文献を調べながら、高校3年間の集大成として卒業論文を書き上げます。平均して1万5千字程度、中には5万字も書く生徒もいます。
とてもユニークな授業ですね。なぜそのような授業がおこなわれているのでしょうか
本校では、9割以上の生徒が推薦制度で系列の関西学院大学に進学します。その制度に支えられて、生徒にどのような学びを提供したいかを考えた時に、私たちの先輩教員たちが議論を重ねてたどり着いたのが、この「読書科」だったようです。
高校時代の3年間で、大学に入学することだけを考えるのではなく、その後の社会人生活を見据えて、自ら主体的に追究したい一生のテーマを見つけて欲しい、そんな教員の想いからつくられたそうです。
生徒の皆さんはどのようなテーマを選んでいるのですか
本当に多種多様です。例えば、「生物」の授業を通じて魚類に興味を持った生徒がいました。その生徒は、理科部の活動として、自ら捕った魚を大学の施設を使わせてもらって研究し、最終的には学会で発表したり、関西学院大学の教員が担当する「理工学入門」の授業を選択し、自らのテーマを深めていきました。高等部の卒業論文では魚類について執筆し、大学でも生物学を専攻しました。
野球部のある生徒は、卒業論文はイチロー(元プロ野球選手)について執筆し、大学は人間福祉学部に進学し、スポーツトレーナーを目指して勉強しています。テーマは何でもよくて、自らの興味・関心を元にテーマを設定し、主体的に学ぶ力を育み、それが生徒それぞれの進路にもつながっていけばなおさら良い、と思っています。
高校時代からそのような探究学習に取り組むことについて、どのようにとらえていますか
自ら課題(テーマ)を決め、先行文献にもあたりながら、仮説をたて自分なりに答えを導き出す、という探究学習の一連のサイクル。これは大学生になっても、社会人になっても必要な能力だと思います。
早い段階から探究学習に取り組むことによって、生徒には、学ぶことの楽しさを知ってもらいたい。そして、それらを通じてレジリエンス(逆境に負けない心)を養い、自分との対話や、客観的な自分への理解につなげ、社会で活躍して欲しいと思っています。
本校では、大学卒業後の卒業生の進路なども見ているのですが、高等部時代の探究学習が、その後の進路に大きく影響しているようです。自らの道をきちんと開拓して、歩んでいる人が多いと感じています。
一方で、この数年で従来の取り組みに課題も感じているそうですね
40年近くにわたり「読書科」としてしっかりと「探究学習」に取り組んできた一方で、日本では社会が変わってきて、学力観自体も変わってきました。この4、5年で、私たちが取り組んできた「探究学習」も一般的になってきました。
目の前にいる生徒が大人になる未来は、AIも当たり前になって、当然求められる力も変化していきます。本校では、数年前から、教員も授業もバージョンアップしていかないといけないと感じはじめ、教員内で議論を重ねてきました。
その結果、探究学習を「読書科」に任せっきりにするのではなく、各教科の授業を探究型や教科横断型にしたり、生徒がフィールドに出ていったり、外部講師(企業や大学)を招聘するなど、より生徒の学びを深めていく機会をつくることにしました。
本校は、2014年に文部科学省「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」指定校、2019年には「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」の拠点校にも指定されました。これらを契機に、全校で新たな「探究学習」の推進を進めています。
「探究学習2.0」とも言える新たな取り組みで、大切にしているポイントなどがあれば、教えてください
全校の教員が協力してやること。今の世の中で必要な力は、従来の「読書科」だけでは身につくものではなく、他の教科でも当たり前に探究的な学びをおこない、教科横断で複合的に結びつけながらやっていく必要があると思っています。
本校が、高1・高2の生徒に対して一人1台の「iPad」と「Classi」を導入し、ICTを積極的に活用しているのも、探究学習を全校で推進するにあたり、大きなサポートになると思ったからです。
WWLでは、教科横断的に複数の教員が関わり、また大学の教員やNGO、地方自治体、企業に所属する方々にもご協力いただきながら、生徒たちがフィールドワークに出ていくことも必須にしています。その中では、各種ICTツールも積極的に使っていきます。ICTも活用しながら、全校としての動きにしていきたいと思っています。
今回、探究学習に関する研究会を開催しようと考えた理由を教えてください
研究会を通じて、本校の取り組みを全国の先生方に紹介することで、ぜひフィードバックをもらいたいと思っています。また、本校以外にも、探究学習を推進している先進校の先生方に登壇いただきます。兵庫県内だけでなく群馬県や静岡県、大阪府、私学だけでなく公立高校での取り組みも発表いただくので、非常に楽しみにしています。
過去の経験から、本校の教員だけで探究学習をおこなうのには限界があると感じています。ぜひ、本研究会に参加される全国の学校の先生方とつながり、刺激を与えあうようになりたいと思い、今回の研究会を開催することになりました。
研究会での見所があれば教えてください
本校では、「探究×ICTの取り組み」と題して発表を行い、WWLの取り組みとして来年度から新たに開講予定の科目についてもご紹介します。
伝統的に「読書科」は、先行研究や基礎文献にあたることに強い。一方、WWLの取り組みでは、ICTを道具として駆使しながら、生徒が積極的にフィールドに出て、そこで感じたことや新たに得た知識・疑問を出発点にして、さらに自分達の活動に磨きをかける、といったことに力を入れていきます。この2つが融合して、最終的に1つの論文にできると、理論と実践の伴った、私たちの考える探究学習に近づけるのではと期待しています。
また当日は、ICTとは少し離れますが「読書科」の教員による授業の紹介や、探究からは離れますがICTの導入に関しての発表もさせていただきます。道半ばではありますが、さまざまな視点から本校の取り組みを見ていただいて、ぜひ全国の先生方からもご意見いただければと思っています。
当日の発表が楽しみですね。ありがとうございました。
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