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2021年4月8日

続・iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第1回】 反田 任先生

ICTで自ら学ぶしかけを!アウトプット型の英語授業を実現
教育ICTコンサルタント 小池 幸司

「わが校でも今年から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。iPadを活用した学びを実践している先生たちの活用事例をもとに、ICTが苦手な先生でも取り組める具体的な活用方法をご紹介します。

授業スタイルは従来のまま。本当にICTを入れてもいいの?

新型コロナウイルスによる一斉休校。2020年は学校関係者にとってまさに前代未聞の年となりました。ビデオ会議システムを使って、はじめてオンライン授業を行ったという先生も多いのではないでしょうか。またコロナ禍の影響を受けて、GIGAスクール構想も前倒しで実施されることとなりました。

タブレット端末の配備が急ピッチで進められる一方、先生たちの授業スタイルは以前のままという話も耳にします。従来型の一斉授業の中で無理やりタブレット端末を使おうとしても、1人1台という環境はかえってお荷物でしかありません。ではどこから変えていけばいいのでしょうか。

ICTで実現するアウトプット型の英語授業とは

そこで本連載では、実際にiPadを授業でフル活用している先生たちの活用事例を紹介していきます。教科や学年、児童・生徒の学力などのちがいはあっても、生きた授業実践から得られるヒントはきっと多いはず。まずはマネするもよし、自分なりアレンジするもよし。とにかくやってみることが大切です。

今回、お話しをうかがうのは同志社中学校の反田任先生。1人1台のiPad導入を中心となって進めてきた先生で担当教科は英語。Appleが認定する教員(Apple Distinguished Educator)でもある反田先生に、iPadを活用した「アウトプット型の英語授業」についてご紹介いただきました。

ICT先進校として積み上げられてきた7年の運用実績

同志社中学校は、「キリスト教主義教育」に基づき、「良心」を育むことを教育の基本とした私立の中高一貫校。授業ごとに生徒が各教科の専用教室へ移動する「教科センター方式」を採用しています。また生徒が選択して参加できる探究型の「学びプロジェクト」にも力を入れているのが特徴です。

1人1台環境で行われる反田教諭の英語の授業

同校で1人1台のiPadを導入したのは2014年の新入生がスタート。現在ではすべての学年・クラスの生徒たちがiPadを保有しています。全校ではおよそ900台のiPadが稼働しており、教室にはプロジェクターと「Apple TV」が常設。学校内のどこでも使えるようWi-FI環境も整備されています。

反田先生は、教育ICT推進担当(Edtech Promotions Manager)として同校のICT導入を主導。知識、語学力、思考力、コミュニケーション能力をつける発信型の英語教育をめざされています。また最近では、「STEAM」を意識した探究型の授業デザインにも取り組まれています。

iPadを使って思わず英語を話したくなるような授業をデザイン

無料で使えるApple純正の文書作成アプリ「Pages」

「英語の4技能(Listening, Speaking, Reading, Writing)を意識しつつ、iPadを日常的に活用しながら授業を行っています」と反田先生。十分な機能を備えながらも無料で使えるApple純正のアプリを中心に、足りない部分はサードパーティー製のアプリを使って英語の授業を組み立てています。

例えば、「スマホの良い点、悪い点」といった生徒が興味を持ちやすい身の回りの話題でテーマを設定。生徒たちは英語で自分の考えをまとめてiPadに入力していきます。このとき使っているのが「Pages」。マイクロソフト社の「Word」にあたる文書作成アプリですが、iPadユーザーであれば無料で使えます。

・Pages:App Storeで

簡単に動画クリップが撮影できる「Clips」

生徒たちは添削された英文を、他言語読み上げアプリ「iText Speaker」に貼り付け。再生される英語の音声を聴きながら発話練習を行います。さらに、ビデオクリップ作成アプリの「Clips」を使って、スピーチ動画を作成したり「3ヒントクイズ」のビデオを作ったり。アウトプットを意識した授業をデザインされています。

・「Clips」:App Store

アフレコで音声入りの動画がつくれる「Puppet Pals 2」

【本日のワーク】「iText Speaker」で発話トレーニングを個別最適化

25以上の言語にに対応した他言語読み上げアプリ「iText Speaker」

「インターネットの英文や生徒自身が作った英文ををコピペして、聞き取り練習・発音練習に使える手軽で便利なアプリ」と反田先生がおすすめするのが「iText Speaker」。25以上の言語に対応しており、英語だけでも、アメリカ英語、ブリティッシュ英語、オーストラリア英語など細かな指定ができます。

・iTextSpeaker – 多言語テキスト読み上げアプリ:App Store

同じ英語でも国や男女など複数の読み上げ方法が選べる

テキストのサンプルとして、日本語、英語、中国語、スペイン語のサンプルがあらかじめ用意されています。試しに「Steve Jobs 伝説のスピーチ」を開いてみましょう。画面下部の「▶︎」をタップすると読み上げが開始されます。再生中は読み上げている行が黄色くマーキング。「▶︎▶︎」を押すと1行送り、「◀︎◀︎」で1行ずつ戻すことができます。

用意した文章を読み上げするには、一覧画面の右上にある「+」をタップします。グループ名を入れてから言語を選択、コピーした文章を貼り付け保存します。保存後でも「編集」から読み上げ言語を変更することが可能。同じ言語でも男性の声と女性の声とでは聞こえ方がちがうので、いろいろ変えて試してみましょう。

また、右下の歯車マーク(設定)を選択すると、読み上げの「スピード」や「音の高低」まで変更することができます。生徒の学年や英語レベルに合わせて調整ができ、何度でもくり返し聴くことができるので、リスニングの練習はもちろん、自作英文のスピーチ練習の心強い味方になります。

アウトプット型の授業を回すには「しかけづくり」がキモ

アウトプット型の授業を実現するには、「先生抜き」でも生徒が学べるしかけが必要です。「◯◯って英語で何て言うの?」「この単語の読み方がわからない」という質問にすべて個別対応していたら授業は回りません。ICTをうまく使うことで、生徒たちが「自分の力でできた」という実感を持つこと。それこそが、次なるアウトプットへの意欲につながっていきます。

#プロフィール
【実践者プロフィール】
反田 任 (同志社中学校 EdTech Promotions Manager)

2014年度からOne to OneでのiPad導入やWi-Fiネットワークの構築を進めてきた。担当教科は「英語」。ICTを活用しながら、知識、語学力、思考力、コミュニケーション能力をつける発信型の英語教育をめざしている。オンライン英会話を活用した授業や、STEAMを意識した探究型の授業デザインにも取り組む。Apple Distinguished Educator Class of 2015, Intel Teachマスターティーチャー。

【筆者プロフィール】
小池 幸司 (教育ICTコンサルタント)

教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて導入事例やノウハウを発信している。2013年3月にiPad×教育をテーマにした国内初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」を出版。2020年10月より、YouTubeチャンネル「TDXラジオ(https://www.youtube.com/c/TDXRadio)」を開設し、「Teacher’s [Shift]〜新しい学びと先生の働き方改革〜」のメインパーソナリティを務める。NPO法人 iTeachers Academy 理事・事務局長。

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