2014年11月10日
第16回図書館総合展/電子図書館などテーマに過去最高の来場者記録
第16回図書館総合展は、5日から7日までの3日間パシフィコ横浜で開催され、図書館に関する最新システムや設備事例を紹介する140社を越える展示や90余りのセミナーが行われた。来場者は過去最高の3万1632名を記録した。
展示会場では、電子図書や電子図書館、管理システムなど、図書館の電子化の流れが加速される動きが多数見られ、従来の「地味で古びた」図書館イメージを打ち破るエネルギーが感じられた。
全国の図書館関員、行政関係者、研究者などが来場する会場では、至る所で電子機器を使用した事例紹介やプレゼンテーショ、ミニセミナーが開催され、どれも人だかりができる賑わいだった。
また、恒例の「古本市」も開催され、本との出会いを求める人たちが紙の本を手にする光景が見られた。
展示とともに2日から8日に開催された図書館総合展週間フォーラムは、「図書館の電子化」「都市計画や地域との連携」「学校教育と図書館」「未来の図書館」など多彩なテーマ90余りが行われた。
7日に展示会場内で行われた「公共図書館の電子サービスの新展開~障害者差別解消法と読書アクセスビリティ~」は、2016年4月に「障害者差別解消法」が施行されるのを前に、来場者の関心も高くほぼ満席の入りとなった。
この中で「アクセスビリティの視点から電子書籍の圧倒的成功を望む」と題した基調講演を行った静岡県立大学国際関係学部教授の石川 准氏は、「視覚障がい者の読書ということを考えた場合、音声読み上げ機能のあるWebブラウザやソフト、ブックリーダーなどを利用することが可能だが、その元となるデジタル情報が必要。障がいのある人が、今日読みたい本を今日読める環境を作るためには、書籍のデジタル化の推進は欠かすことができない」と、その必要性を語った。
基調講演後のパネルディスカッションでは、立命館大学における学生向け音声サービスが紹介された。紙の書籍をスキャンして画像データにし、OCR(光学式文字読取装置)を使って文字データにする。大学で使用する書籍は専門用語や数式などもあって文字化けすることが多く、また論文の引用に使われるために正確さも求められるので、人手を使った校正を行う。こうした過程を経るため、要望のあった書籍の音声サービスが可能になるまでに半年近い期間が掛かり、費用も学生数名に対して数百万円が必要だという。
石川教授は、「書籍のデジタル化によるアクセスビリティの向上は、視覚に障がいのある人だけでなく、お年寄りや幼児など多くのニーズがある。『障害者差別解消法』施行に向け障がいのある人に優しい環境を、というのではなく、当たり前のことを当たり前に行う。意識を『善意から義務へ』変換することが必要だ」と、電子書籍サービスの必要性を強調した。
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