2015年2月17日
KDDI/福岡の小学校でiPad使ったアダプティブラーニング授業を公開
KDDIは13日、福岡市立賀茂小学校で2014年9月から進めてきたICT教育実証研究の公開授業を実施した。KDDIは同校にiPadを100台配備し、算数のアダプティブラーニングや、アメリカの教育用SNS「Edmodo」を使った情報リテラシー教育などに取り組んできた。この日の公開授業では、5年生3クラスの授業が公開され、多数の関係者らが集まった。
冒頭の全体説明会では、福岡市教育委員会の池田一司指導部長が「確かな学力の向上を目指してICTを活用した授業を積極的に推進する」と述べ、従来のパソコン教室を中心とした取り組みに加え、ICT活用の範囲を普通教室や学校外へも広げていく考えを示した。また、賀茂小学校におけるKDDIとの実証研究については、福岡市の中でもICT教育導入の先駆けであるとし、今後の礎になるよう様々な視点で検証していくと語った。
5年1組では、朝学習の時間に実施している「計算」と「読書」の学習活動が公開された。計算では、KDDI研究所が開発したアダプティブラーニング型の「算数ドリル」が使われた。同ドリルは、理解度推定エンジンと呼ばれる独自技術で、学習者の理解度の可視化や苦手単元の推定を可能にした。単元間の系統や相関性をモデル化しており、学習者が単元ごとに問題を解くだけで、教師は学習者の苦手な単元や、つまずいた部分などを把握できるのが特徴。当日は児童たちが算数ドリルを使い、自分で学習を進めていく様子が公開された。
読書の学習活動では、アメリカの公立学校で広く利用されている教育用SNS「Edmodo」が使われていた。Edmodoは、教師や生徒だけが利用できるクローズドなSNSで、賀茂小学校では情報リテラシー教育での活用を進めている。クラスでは、Edmodo内に読書グループを作り、普段から、互いにおすすめの本を紹介し合うなど交流を図っている。当日は、児童たちが持ち寄った本を撮影し、紹介文を添えてEdmodoのグループに投稿、コメントし合う活動が紹介された。
5年2組は、電子黒板とiPadを使った算数の授業を公開した。学習のめあては「三角柱の展開図のかき方を考えよう」。 児童はiOSアプリ「TabletSync」の方眼シートを用いて展開図を考えた。それぞれiPad上にかき込んだ展開図は電子黒板で一斉表示し、お互いの考え方を共有した。
5年3組は外国語活動で、iOSアプリ「eCarta」を使った授業を行った。最初にALT(Assistant Language Teacher=外国語指導助手)の教師からこの日学習する8個の英単語の発音を聞き、声に出して繰り返す。次に、eCartaアプリのpracticeを使って個別の発音練習に取り組み、ある程度、発音練習をした後、クラス全員でword quizに挑戦。eCartaを投影した電子黒板から、カードに描かれたイラストを説明する英語の音声が流れ、児童は分かった時点で自分のiPad上に並んだカードをタップする。語彙を増やすことが英語に対する親しみにつながるとして、同クラスでは毎回の外国語活動に取り入れている。今回授業で使用した「eCarta」は、KDDIが同アプリをEdmodo上で動くブラウザ型アプリに開発し、同期機能を加えたものだという。
公開授業の終了後に行われた全体会では、iOSコンソ−シアム文教ワーキンググループの野本竜哉リーダーが登壇し、全国的なタブレット導入の動向や事例を語るとともに、会場に集まった教員らに向けて、「タブレット導入段階で陥りがちな3つの考え方」や「ICTを活用した学びは学力向上につながるのか」などのテーマで講演をした。
その後は、公開授業を担当した教員が登壇しパネルディスカッションが行われた。5年2組担任の須古井直哉教諭はiPad導入後の児童の変化について、「子供たちの学習意欲が向上し、なかでも勉強の苦手な子供や、つまずきのある子供が“やってみよう”と取り組んでいることに手応えを感じている」と話した。また今後の課題として萬野英二教頭は「ネットワークが突然落ちてしまったり、つながらなかったりした際の現場の対応について考える必要がある」と述べた。(取材:神谷加代)
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