2018年2月2日
世界初、関西大と北海道大の研究グループが分子ロボットの開発に成功
北海道大学大学院理学研究院の角五彰准教授、関西大学化学生命工学部の葛谷明紀准教授らの研究グループは1日、ロボットに必要な3要素である駆動系(動く)、知能・制御系(考える)、センサー(感じる)を備え、群れのように振る舞う分子ロボットの開発に世界で初めて成功したと発表した。
本研究では、北海道大学が駆動系の設計、分子ロボットの組み立てと集団運動の実演を、関西大学が知能・制御系部分の化学合成とセンサーの組み込みを担当した。本研究成果は、英国時間2018年1月31日公開のNature communications誌に掲載される予定。
ロボットの一種に、鳥や魚のような群れを再現する「群(ぐん)ロボット(*1)」 がある。群ロボットは、リーダーがいなくても自発的に環境に合わせて群れの形を変えるほか、仕事を効率よく分担したり、不具合を補い合ったりするなど、単体のロボットでは不可能なこともできるのが特徴。
医療や災害の現場での応用が期待されており、世界的にも競争の激しい分野だが、ミクロサイズのロボットの開発は難しく、これまで成功例はなかったという。本研究では、機械による従来のロボットではなく、化学的に分子部品を組み立てることで、世界最小の群ロボット(分子ロボット)を作った。
今回の分子ロボットは、ヒトの細胞内で物質輸送に使われているモータータンパク質(*2)と遺伝情報を記録するDNAが組み合わされており、ロボットの3要素では前者が駆動系、後者が知能・制御系に相当する。さらにセンサーとして、光を感知する色素をDNAに人工的に組み込んだ。これにより、化学的信号だけでなく光などの物理的信号を感知し、自発的に群れたり別れたりする分子ロボットができた。将来は、体中などで働くナノマシンとしての応用が期待される。
人工知能(AI)が急速に発展するなか、AIがヒトの知能を超える「技術的特異点(シンギュラリティ)」が話題に上るようになった。一方、2016年度ノーベル化学賞の受賞テーマになるなど「ナノマシン(分子機械)」も注目を集めており、人知を超えたAIがナノマシンを制御することで、社会に計り知れない変化をもたらすと予測される。
AIは情報科学分野の研究対象だが、ナノマシンは化学や工学などの応用科学分野に属しており、AIによるナノマシン制御のためには、両分野にまたがる新しいアプローチが必要。このような背景から、従来のロボット工学の手法に倣って、分子サイズの部品から分子ロボットを組み上げる新しい学術分野「分子ロボティクス」が創成されている。本研究グループは、ロボット工学で最も注目される研究対象の一つである「群ロボット」を分子システム(分子ロボット)として開発することに、世界で初めて成功したという。
*1:群ロボット とは、多くの単純なロボットから構成されるロボットシステム。ロボット間で相互作用しながら群れとして行動することで、単体のロボットにはできない複雑な仕事を効率よくこなすことができる。鳥や魚、昆虫などの群れが群ロボット開発のヒントになっている。
*2:モータータンパク質とは、アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解によって生じる化学エネルギーを運動に変換するタンパク質。生物のほとんどすべての細胞に存在しており、物質の輸送や細胞分裂に関わっている。アクチン上を動くミオシン、微小管上を動くキネシンやダイニンが知られている。本研究では微小管とキネシンを使用した。
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