2021年5月17日
考査の振り返りに活用。生徒自身が解説し学び合う姿勢を醸成/大宮北高校・スクールタクト導入事例
さいたま市立大宮北高等学校(埼玉県)スクールタクト導入事例
考査の振り返りに活用。生徒自身が解説し学び合う姿勢を醸成
さいたま市立大宮北高等学校は、普通科・理数科を併設し、1学年8クラスから成る高等学校です。埼玉県の市立高校としては初めてSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定され、高度で幅広い教育を実践しています。生徒全員がタブレットを所有し、2019年度からスクールタクトを導入いただいています。
GIGAスクール構想でICTを導入する機運が全国的に高まる中、ICT導入成功の鍵を紐解くべく、実際にスクールタクトを授業に活用されている瀧澤千歳教諭(生物)、野間瑞乃教諭(英語)にお話を伺いました。
※さいたま市立大宮北高等学校でご利用いただいているサービスの名称はClassiNOTEです。ClassiNOTEは、Classiユーザー用に提供しているスクールタクトの別名称です。システム上の違いはありません。
「先進的な環境をいかさなければ」という試行錯誤
―貴校のICT環境の特長をお聞かせください。
瀧澤:おそらく公立高校の中ではトップクラスの環境だと思います。1人1台のiPadはもちろん、全教室にプロジェクタも整備されています。他校から異動して来た教員は、前任校との違いの大きさに最初は戸惑うほどです。
野間:私は本校が初任地でしたので先入観なく入っていけましたが、教育実習時のことを思い起こすとやはり全く違いますね。板書中心の授業でしたから、いま思えば、あの時間がいかにもったいないものだったかよく分かります。
―これほどの先進的な環境が整っているということは、何らかの強い利用目的があったのでしょうか?
瀧澤:本校はICT化を促進している学校なので、ICTにせよスクールタクトにせよ、特定の課題を解決するためのツールというよりは「それがあること」を本校の特徴として活用していこうという考えがスタートでした。この環境を活かし、スクールタクトの利用方法を各教員が研究していくという姿勢も強いんです。
野間:情報管理の先生やICTに詳しい先生が他の先生に声をかけたり、教員間の勉強会があり、私が入った頃には「使うのが基本だよね」という雰囲気がありました。
―それはすごいですね。うまく利活用が進んでいる理由はなんでしょうか。
瀧澤:「使ってみたら思った以上に良かった」だから広がったというのが大きいでしょうね。例えばスマホがなかった時代、「スマホがあれば便利なのに」なんて思わなかったじゃないですか?
野間:先ほど申し上げた板書にしても、実際にICTやスクールタクトを活用して初めて、「ああ、あの時間は無駄だったんだな」と気付く感じです。
―使う人の意識しだいでICT導入が加速する素晴らしい事例ですね。
瀧澤:始まりは「学校として推進しているのだから使わなければいけない」でしたが、学びのアクティブラーニング化が進む今、講義型の一斉授業ばかりというわけにはいきません。そのためにも有効なツールだと思います。
野間:私も、紙ベースの授業は減っていくだろうと思います。一方で、紙のほうがやりやすい場面もあるでしょうし、うまく併用していきたいです。
個人の課題やワークを共有する学習と、抜群の相性
―「使ってみたら良かった」とのことですが、どのような点にそれを感じましたか?
瀧澤:生徒全員のノートを共有できるのがスクールタクトの強みだと思いますが、本校の場合は「それをどう使うか」から考える必要がありました。現在も試行錯誤しているところですが、手応えを感じているのは「一人ひとりが何を書いているかすぐ分かる機能を活かす」こと。中でも「できる子」のノートです。その共有は良い学び合いになりますし、定期考査前は特に効果的ですね。
野間:英語の授業ではT-F問題(正誤問題)やディクテーションも行いますが、紙を利用した方法では、各生徒の答えを教員がすぐには把握することができません。その点、スクールタクトは瞬時に全員の答えと傾向が分かります。そこに時間がかからないぶん、すぐに正解を教えてしまうのではなく、対話を重ねながら正解に「導く」指導ができるようになりました。
―LHRでもスクールタクトを活用していただいていると伺いました。
瀧澤:修学旅行先について調べ学習を行ったり、気になった新聞記事を貼り付けて、それに対する意見を述べてみたり、いろいろ試しています。その中で感じるのは、「各自が調べて書いたものを共有する」学習にスクールタクトがとても向いていることです。今までは「紙に答えを書いて提出→教員がチェックして戻す」という、宿題のような閉じられたルーティンでしたが、スクールタクトは同じ工程で全員がそれを共有することもできますから。
野間:課題との相性が非常に良いですね。未提出になっている生徒のチェックもしやすいですし、課題を配信し、調べ学習をするには教員側もとにかく楽です。
定期考査の解説を生徒自身が行って共有
―試行錯誤しながら「とにかく使ってみる」姿勢が大事なのですね。では、その試みの中から良い活用方法は見つかりましたか?
瀧澤:考査の振り返りです。答案返却後に、難しく感じた問題を選んで再挑戦し、解法をまとめたものをスクールタクトにアップしてもらいます。共同閲覧モードにし、特に良かった解説を「問1はAくんのを見て」「問2はBさんのが分かりやすいよ」と指示しておくのです。
―指名された生徒は嬉しいでしょうね!
瀧澤:そうですね。以前は私が解説していましたが、解き直しを指示してもやらない生徒が多いのが実情でした。でも、この形だとやってくるんですよ。他の生徒も、やはり友達が作った解説は積極的に聞こうとします。
単に「良い解説」を求めるのであれば、参考書があります。そこをあえて生徒が作ることに大きな意義があると思うんです。この解説のデキが成績評価に反映されることはないのですが、それでもしっかりやってくる生徒が多いのは、やはり楽しいのでしょうね。自分の解説を代表に選んでもらうために、あえて難しい問題を選んで解説しようという雰囲気さえあります。
―まさしく理想的な「主体的な学び」ですよね。野間先生はいかがでしょう?
野間:授業中に課題を課したとき、その進捗状況がすぐ分かるのが良いと感じています。例えば遅れが見られる生徒には個別に声掛けをしたり、全体の進捗が遅いと判断したら制限時間を伸ばしてみたり。そうした授業の進行管理にも役立てています。
スクールタクトが「当たり前」になる学校の日常
―スクールタクト導入で、授業や生徒さんにどんな変化が生まれましたか?
瀧澤:そもそも以前は私の中に「ノートを共有する」という概念がありませんでしたが、スクールタクト導入でそこが変わったのは大きいです。生徒もペーパーレスに慣れ、「なぜ紙で提出物を出さなければいけないのか」という意識になってきました。
野間:自分が高校生だったころと比べても、授業の常識は覆りましたよね。授業では、教員よりも(課題の共有によって)生徒同士が喋ってくれるのが理想だと思うようになりました。生徒からは「友達の意見を聞いて『そうだったんだ!』という新しい知識との出会いになる」という声も聞かれ、教員よりも友達の意見や解説を頼りにしているように感じます。そのほうが、私自身も授業をしていて楽しいです。
瀧澤:生徒たちもスクールタクトを使うのが当たり前になり、あえて「これっていいよね!」と意識しなくなっていると感じます。先ほどのスマホの話と逆のイメージです。これからもどんどん使って、新しい発見をしていきたいです。
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