2021年12月14日
すららで変容を目指す大規模校「すべての生徒の夢を叶えたい」 /文徳高等学校・中学校
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多様な生徒が集うマンモス校ならではの魅力と課題
例えば「進学校」「スポーツ校」といった枠組み、偏差値帯で輪切りされる受験……それによって属性の近い生徒層が集まることは、カリキュラム編成や学習指導のやりやすさにおいては非常に合理的だ。その一方で、生徒層の多様性が失われて価値観が均一化されがちだという側面も指摘される。
その点において、文徳高等学校・中学校(熊本県)は非常に多彩な生徒たちが揃うことが魅力だ。普通科だけでも「東大・医進コース」「進特コース」「普通コース」を擁し、工業科目を学ぶ理工科も、「特別進学コース」「専門コース」に分かれている。生徒それぞれの夢・目標に沿ったコース編制が行われており、体育大会・文化祭などの学校行事において、この多様性が学校全体に躍動感をもたらす。
ただし、その魅力を持つがゆえに、当然ながら表裏一体の課題も抱える。生徒の学習意欲と学力に自然と生じてしまう広がりである。同校の緒方浩教頭、栃澤純治教務部長はこう明かす。「生徒たちは様々な目標を持って学校生活を送っています。学校での活動に懸命に取り組む生徒がたくさんいます。部活動も活発です。こうした中でも、すべての生徒に、それぞれの進路目標に向かう学習意欲と学力を維持させ、進路保障に結びつけることは、どの時代にも変わることのない、学校の課題だと考えています。」
さらに同校は、約1200名もの生徒が通う地元でも屈指のマンモス校。生徒が多ければ多いほど、生徒の学校へのニーズも多様になる。大規模校ゆえに、課題も複雑である。
始業前の学習「朝トク」を実施するも、増える業務負担に苦慮
これまで、普通科の「東大・医進コース」「進特コース」および理工科の「特別進学コース」においては、毎朝課外授業を実施し、普通科『普通コース』理工科『専門コース』では基礎学力向上を目指し、「朝トク」と銘打った始業前の学習時間を設定して、プリント学習を中心とした演習に取り組んできた。「早起きは三文の“徳”」、校名である「文“徳”」、「問題を“解く”」というトリプルミーニングを込めて付けた名前だ。
しかし、なにぶん生徒数1200名を誇る学校である。毎日のように作問し、印刷し、配布し……という教員の負担は非常に重いものになっていた。現有学力を考慮して問題を検討し、結果を分析することも、負担に拍車をかけていた。一定の成果を得てはいたものの、完全な問題解決には至っていないのが実状だった。
個別最適化と教員の負担軽減の両立を目指し、「すらら」導入
2020年、GIGAスクール構想によって同校(中学校)にも1人1台の端末が配備される。これに伴って、高校でも同様の環境を整備した。そこでICTを活用して、長年の課題であった学力差解消へ向け、さらに力を入れることに乗り出す。重視したのは、演習の「個別最適化」である。栃澤教諭は言う。「朝トクを継続する中で、朝の学習へのモチベーションにも開きが生じ、朝トクそのものに負担を感じる生徒も出てきました。そのようなことを踏まえた上で、より効果があり、なおかつ、生徒全員が進んで参加できるものを目指しました。そこで導入したのが『すらら』(すららネット提供)です」。
「すらら」は、問題の理解度や誤答の原因などを学習者ごとに分析し、採点から出題、誤答へのレクチャー、再出題などを自動で行うことができるAI教材だ。主要5教科、小学生から高校生までの学習範囲を網羅し、選択式・記述式といった出題形式なども個別に分析して自動アレンジされる。つまり同校が最も必要としていた「個別最適化」を可能としており、かつ教員のアナログな負担はほぼゼロになるという点でも、理想的な教材だったと言えるだろう。
教員の手間が省け、より発展的な授業が可能に
「すらら」を導入したのは2021年度から。使用方法は原則として各教員に委ねつつも、組織的な使い方を模索しようと、高校2年生普通コースを中心に朝トクの数学と英語を「すらら」に置き換える試みを始めた。数学科の佐藤誠哉教諭は、「すらら」導入時を振り返りこのように語る。「すべての生徒に、授業以外の時間で主体的に勉強と関わる習慣を身につけてほしい。自ら取り組む勉強の楽しさを知ってほしいという思いでした。」
実践してまだ半年強、生徒の意識改革にはもう少し時間がかかるかに思えたが、小さいながらもさっそく変容が見え始めている。少なくとも「朝、学校に来て『すらら』をやる」という習慣はついてきたそうだ。事実、日々の朝トクの時間、前向きに学習に取り組む生徒の姿勢が実感できるようになった。
それは、確かに派手な成果ではないかもしれない。しかし、エンジンは「動き始め」が最もパワーが必要な工程だ。受動的な学習参加から、能動的な学習への第一歩。この一歩は、生徒たちの心にとって、とてつもない一歩と言える。
「学習記録が残りますので、『すらら』で『これをやった』という自分の軌跡が蓄積されていくのが楽しいようです。その積み重ねはランキング形式にもなっていますから、『頑張って次のランクを目指そう!』と声をかけると、『やります!』という頼もしい返事が。こんなこと、今までほとんどありませんでした」と佐藤教諭は目を細める。
主体性を持って取り組めば、失敗も成功への糧となる。成功すれば達成感として心にとどまり、成功体験となる。この小さな達成感がその壁を越えさせたのだろう。導入前は、2次関数の分野に苦手意識があり、取り組みに消極的であった生徒も、「すらら」導入後、積極的に取り組むようになったと言うから驚きだ。
朝トク以外の活用法も追求し、校内でナレッジのシェアを
各教員の裁量のもと、朝トク以外の使い方もさまざまな形で挑戦している。授業終わりの確認テストに用いたり、定期テスト前の試験勉強の題材にしたり、夏休みの宿題に課したり、教員が出張で授業ができない際の自習用教材にしたりなどだ。
生徒たちも「朝から『すらら』に取り組むことでスイッチが入り、この後の授業も、家に帰ってからも勉強を頑張ろうという気になる」「自習しようとすると、どの問題を解けばいいか分からず面倒だったが、自動で必要な問題を出してくれるので助かる」「定期試験で『あっ、これはすららで見た問題だ!』というケースが増えて嬉しい」と、確実に成長を感じているようす。
今後は、教員研修用の公開授業などでそうした多様な取り組みをシェアしつつ、学校を挙げて、より積極的に活用法を考えていく計画だと言う。
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