2021年11月12日
すららドリル導入で、考える力の土台を築く、自らの弱点を補う学習/岩見沢市立光陵中学校
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主体的・対話的で深い学びを保証する「教えて、考えさせる」授業
学習指導要領の改訂などに伴い、学校では「主体的・対話的で深い学び」の実践が強く求められるようになった。前後して、各校とも工夫を凝らして授業改善に取り組んでいるが、北海道岩見沢市立光陵中学校も例外ではない。同校では「授業づくりは学校づくり」をスローガンに2017年よりこれに着手、特に「教えて、考えさせる」授業の推進を筆頭に、大幅な改革に乗り出した。
その一例が「深化問題」の設定だ。50分の授業時間を二つに分け、前半の20分で知識の伝達を終え、残りの時間はそれをもとに対話や思考を取り入れた発展的学習に取り組む。例えば社会科であれば気候変動について学んだのち、何がそこへ影響を与えたのか意見を交わしながら、みんなで考察するといった授業展開である。
「すららドリル」を導入、授業内での演習完結を目指す
深化問題の継続は、これからの時代を生き抜く子ども達に必要な資質・能力、特に「未知の状況にも対応する力」の育成を目指している。教師による説明によって理解した内容(知識・技能)を、対話的・協働的な学びを通して自己の考えを広げ深め、新たな考えや解決策を生み出そうとする姿を目指している。持続可能な社会の作り手になるための人材育成を見据えている。
「ただし、学習の個別最適化なくしてその実践は難しい」と語るのは、同校の宮本千裕校長。「知識を応用して思考するには、そもそも基礎知識(学力)が定着している必要があります。理解度には個人差もある中で、そこが埋まり切らない状態で深化問題に取り組むだけでは不十分です」と言う。
従来、その対策としては同一の学習方法やプリントを使用した家庭学習などでドリル問題を繰り返すのが一般的だ。しかし、宮本校長はそれに懐疑的な考え方を示す。「知識の定着は、できれば授業内で完結させたいと思っていました。そもそも、ドリルに時間をかけすぎるのが本当に良いことなのか、かねがね疑問に感じていたのです」と、授業改善の中で紙のドリルそのものをほとんど廃止してしまった。
これを前提に同校が2021年度から導入したのがAI教材の「すららドリル」(すららネット提供)だ。生徒の理解度に応じて演習問題を出題し採点、誤答の原因なども自動で分析・判断する。記述式問題にも対応しており、教員側で学習管理を行ったり、テスト結果から個別カリキュラムを作ったりもできる。
いわゆるアダプティブ(個別最適化)機能を持ちながら、それに伴う問題作成・採点・分析・対策・再演習といった労力の解消を同時に実現できる特長が人気を集め、同校のように従来の紙ドリルから「すららドリル」に置き換える学校も目立つようになった。
教員の手間が省け、より発展的な授業が可能に
同校では、「すららドリル」を定期試験前の朝学習や放課後学習、週1で開講する「光陵タイム(任意の生徒と担任が面談を行いつつ、他の生徒は自習に取り組む時間)」で活用している。先述の「ドリルに時間をかけすぎたくない」「授業内で完結したい」という考えを反映してのものだ。
辻浦一裕教諭(理科)は、このように手応えを語る。「ある問題を間違えてしまった時、似たような問題が繰り返し出題されます。それで生徒たちも『あれ?きちんと理解できていないのかな?』と気付くみたいで、自身の進捗や定着度を客観視できるようになったと感じますね」。
教務部長の相河範子教諭(英語)も「以前まで英語のディクテーションは、生徒個々に応じた問題を用意するのは時間・労力的にも難しいのが現実でした。また、紙のドリルのように、印刷や答え合わせに使う時間がなくなったぶん、思考力・判断力・表現力を伸ばす授業づくりがしやすくなりました」と言う。
しかし、一方的に「すららドリル」の使用を指示・強制していないことには注目したい。例えば理解度に自信がなく、とにかく演習を繰り返したい生徒は「すららドリル」、ある程度自分のペースや学習方法が身についている生徒は自身の学習方法で、など選択権は生徒に委ねている。柴田諒教諭(数学)も「コンパスで図を書くなど、アナログな手作業が必要な学習もあります。そのあたりは、「すららドリル」とうまく併用したいです。ただ、つまずきを自動で自覚できることはやはり大きいです。今までは、それを私たちが個々に考察して指示していたわけですから」。
個別最適化の中で、将来的には宿題を廃止したい
生徒たちからの反応も上々で、「自分が何を苦手にしているのか分かった」「今までは、ドリルの解答を見てもなぜそうなるのか分からず困ることが多かったが、「すららドリル」の解説動画のおかげで理解できるようになった」「市販の紙の問題集では、何回も答えをノートに書いたり消したりしなければいけない効率の悪さがずっと不満だったが、それがなくなって快適」「早く演習を終えられるので、そのぶん部活動のトレーニングができて嬉しい」という声が多数聞かれる。
こうした実践をもとに、現在は「宿題の廃止」を目指している。宮本校長は「個別最適化の原理原則に立ったとき、そもそも宿題が必要な子もいれば、不要な子もいるはずです。誤解のある表現かもしれませんが、ある意味で宿題は『子どもが勉強しているという、保護者向けの安心材料』になってしまっている面もあります。それであれば、自分に合った課題を、しかも学校の授業内で完了できるほうがいい。そこに「すららドリル」が活用できるものと期待しています」。また、将来的には定期テストもアーカイブ化して、作問や採点作業の軽減を図りたいと言う。
知識の定着と反復は「紙のドリルでひたすら書く」「宿題として、自宅でやる」――これは従来、基礎的学習における“常識”であったかもしれないが、もうそんな時代ではないのかもしれない。
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