2022年3月29日
ICTも日常に、Chromebook で探究・評価の多様性 / 育英西中学校・高等学校
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手軽さならタブレット、キーボード入力ならノートPC
学校にICT端末を導入する際、しばしば意見が分かれるのが「タブレットorノートPC」の議論だ。もちろんそれぞれに得意・不得意があり、二項対立の優劣で論じる問題ではない。あくまで、学校として実践したい教育内容にどちらの端末スタイルが適しているかというだけの話である。
例えばタブレットであれば、薄くて軽く、スマホと同じような感覚的操作ができる手軽さが魅力だろう。一方で、そうした強みも理解した上で「本校では、ノートPCを選んだ」と語るのは、育英西中学校・高等学校(奈良市)の森岡智史教諭だ。
同校が本格的にICT教育のための端末導入を始めたのが2016年。最初は、Windows OS搭載のノートPCを導入した。当時の担当教諭の「大学や社会での実用性を考えたとき、やはりMicrosoftのオフィス系ソフト(Word、Excel、PowerPoint)の活用スキルやタイピング能力は身につけさせてやりたい」という考えから、それらとの相性を考えての選択だった。ただ「運営管理の視点で見たとき、例えば1台ずつソフトをインストールをする必要があったり、動作確認も大変でした。ログインパスワードを忘れる生徒も少なからずおり、その都度初期化して一から対応するのは骨が折れました」。森岡教諭が当時を振り返る。
既存導入製品の反省を活かして、Chromebook を導入
そこで、前記の課題をクリアする端末として魅力を感じたのが、Chromebook だった。Chromebook は、Google の独自OS(Chrome OS)を搭載したノートPC。手動で1つ1つソフトをインストールする必要がなく、Google Workspace for Educationのアプリをそのまま使用でき、さらに基本的な作業やデータ保存はクラウド上で行えることが最大の特長だ。学校で取得して生徒に配布した Google アカウントさえ持っていれば、生徒はほぼすべての機能を使うことができ、学校側にとっても設定や管理も容易である。
また、端末単価が比較的安価であることも魅力だ。2023年度の新入生端末として採用した製品は「ASUS Chromebook Flip CR1(CR1100)」。これでASUSの Chromebook 製品は3年連続での採用となる。
WindowsやMac OSに続く第3の選択肢として急速にシェアを拡大中の Chromebook だが、同校が Chromebook の導入検討を開始した2018年ごろはそこまでハードウェアの認知が広がっていなかった。また「WordやExcelが入っていない?それではダメだ!」など校内での反対意見も多くあがったという。Google Workspace for Educationの「ドキュメント」や「スプレッドシート」などはMicrosoft Officeと互換性があり、当時から一般に知られていたものの、校内ではあくまで別モノのグループウェアとして受け止められていた。
森岡教諭らは、そうした基礎的なところから丁寧に説明し、実際に使ってもらうなどして理解を深め、2019年度より Chromebook を導入。導入当初はASUSではないメーカーの Chromebook を採用したものの、翌2020年にASUS製に変更した。1年で端末メーカーを変えた理由は、ASUS製が持つ「堅牢性と軽さの両立」「タッチスクリーン機能」「インカメラ・アウトカメラを両方搭載」に魅力を感じたからだったという。
森岡教諭はこう言って苦笑する。「生徒はよく端末を落としますので堅牢性を備えた端末であることはとても重要です」。また、イン・アウト両方のカメラを備えているため、インカメラ(ディスプレイの上にあるWebカメラ)でビデオ通話ができるだけでなく、タブレットスタイルで画面を確認しながら撮影もでき、便利だと感じた。こうした実際の使用での気づきをもとに柔軟に対応する姿勢もICT導入では重要な要素だろう。
クラウドによる共同編集は、探究学習との相性抜群
もう一つ、同校と Chromebook の相性が良かった点があると教えてくれたのは、同校のICTチーフを務める德井公樹教諭だ。実は同校は、国際バカロレアMYP(Middle Years Programme)の認定校でもある。バカロレアMYPのカリキュラムでは、社会奉仕や問題解決の観点からチーム協働型の探究学習を行う「コミュニティプロジェクト」が設定されているが、そこで Chromebook の共同編集機能が活かされた。
德井教諭は言う。「クラウド上で作業するため、ファイルを同時編集できることは何より大きいと感じます」。以前は模造紙などに手書きの発表資料をまとめるしかなかった。当然、学校でチームが揃うときしか作業ができない。しかし、Chromebook であれば自宅に帰ってからでもファイルを共有し、生徒が同時に作業できる。「LINEグループを作って連絡を取り合いながら、協力してやってくれています。それぞれの自宅という離れた場所から一緒にやれること自体も、生徒にとっては楽しいみたいですね」。
同校では「コミュニティプロジェクト」に向けたトレーニングも兼ねて、通常の教科授業内でも探究の要素を多く取り入れているのが特長だ。例えば德井教諭の授業(社会科)では、「地域活性化」をテーマに生徒自身が気になった自治体を調べ、その取り組みの成否の検証や原因を調査・発表することに取り組んでいる。この日行われた授業でも、生徒たちは Chromebook を使って自らの調査結果の発表に挑んでいた。発表内容は、Google Workspace for Educationの Google フォーム(アンケート機能)を使って、その場で相互評価も行われている。
評価方法や生徒の表現力にも多様な変化
「英語の発音を録画して提出する課題や、家庭科では自校の紹介動画を作って成績評価につなげるなどの事例も見られるようになっています。昔はテストもペーパーばかりだったのが、評価手法にも多様性が生まれました」(森岡教諭)。
こうした環境のおかげか、新しい学力観の一つである生徒の「表現力」も、以前に比べてかなり幅が広がったと感じているようだ。今後は「生徒への連絡網など、校務にも応用していきたい」と力強く展望を語る両教諭。キーワードは「ICTも日常に」だそうだ。
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