2022年6月27日
好きなOSを選択できるBYODで柔軟な1人1台端末/川崎市立川崎総合科学高等学校
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神奈川県川崎市の多摩川近くに位置する川崎市立川崎総合科学高等学校。工業科5科(情報工学科、総合電気科、電子機械科、建設工学科、デザイン科)と理数科1科(科学科)を併せ持つ工業高校だ。市立だが、全県学区であるため川崎市外から通う生徒も多い。2022年4月の新入生から1人1台端末の導入をBYODで開始した。同校では Chrome OS、Windows、macOSの3つのOSを採用している。OSの自由な選択に至った経緯や導入で工夫したことなど、2021年度に校内の将来構想部でBYODを担当していた町田義広教諭(情報工学科・学年主任)に話を聞いた。
コンピュータが豊富にある中でも開始した、1人1台環境整備
高くそびえる地上15階建ての校舎が印象的な同校。専門科目を学ぶ実習の教室には、部屋ごとに多様なコンピュータが台数も豊富に取り揃えられている。専門性の高い学校のためこれらのコンピュータは30年ほど前から設置されているが、1人1台のICT教育の環境整備は2021年から検討を開始した。まずは、Wi-Fiの設置に着手。その検証を兼ねて、生徒自身のスマホを接続する、というところから始めたと町田教諭は説明する。
これはスマホを授業で使うわけではなく、生徒が一斉にWi-Fiに繋げられるかの校内ネットワークの環境テストとして実施。それと並行して Google Workspace for Education の導入を推し進めた。IDとパスワードを全員に配布し、最初は学校のコンピュータ室で Google Workspace を使うことから始め、スマホでメールを見たり、 Google Classroom が使えるところまでを試験的に実施したという。
その後、2022年度から本格的に1人1台端末の活用を開始。1年生はBYODで好きな端末を持参して活用、2年生は川崎市から貸与されている端末を活用、3年生はスマホや学校の端末を使うなどして検証を重ねながら、現在、段階的にICT教育を推進している最中だ。
BYODによるOSフリーを決めた理由、それを可能にしたシステム
BYODでOSを自由に選択するという結論は、校内で何度も話し合い、議論を重ねた末に決定した。「主に費用の問題です。たとえば、生徒がすでにiPadを所有していたとして、学校が Chromebook 導入を決めるとなると生徒はもう1台端末を所有しなくてはならないことになります。よって家庭に負担をかけないことを一番に考える必要がありました。また、中学生の時点で端末を持っている生徒もけっこういましたし、そうであれば、それを活用してもらえばいいのではないかという話にもなりました」と町田教諭は振り返る。
また、「そもそも本校はWindows PCがたくさんあって、MacやLinuxもある。もともと学校にあるこれらの端末も使いながら、1人1台導入となった時に、何が最適かを考えた結果、“Google のシステムを活用する”ことが無難だろうとなったのです。そうすれば、入学時に端末を限定せずにいけるだろうと」。
他にも各学科による傾向もあった。「デザイン科はMac系、情報工学科はハイスペックなゲーミング系が欲しいかもしれないといったことです。電子機械科や建設工学科は逆に何でもいいので、じゃあWindowsにしようとか、など」。そこで、BYODで生徒がそれぞれ自分の好きなOSを選び、活用していくことに行き着いたという。
その上で、学校で使用する端末条件を設けた。「キーボードがあること、5G帯のWi-Fiが使えること、1日8時間程度のバッテリーが維持できること、そして Google Workspace for Education が使えること」。インストールするアプリや将来的な端末の買い替えは自由だ。
教科書販売と同じイメージで端末も用意
端末の入手方法も独特だ。「BYODであれば、自分が持っている端末、もしくは新しく購入する端末を持ち込めばいいのですが、そうは言っても、どこから何を買えばいいのかといった問題が出てきます。そこで専門業者に学校へ来てもらうことにしました。教科書販売や制服販売と同じイメージで端末も販売の機会を作ったのです。学校側は一切注文を取りません。保守にも関わらないし、代金を扱うこともない。修理の受け付けもしません」。
「ただし各種連絡先などの取次は学校側でも多少関わりは持ちました。たとえば修理の際はASUSコールセンターの連絡先を生徒に教えて、電話をかけて修理に出してもらうというフローを説明しておく、といった感じです」。BYODにすることで学校側の負担が増えない形になりました。
新入生の入学手続きの際、専門業者の2社を招き販売の機会を設けた。226人中、既に端末を所有している生徒もおり、学校の推奨販売で購入した生徒は140人ほどで全体の約6割だ。そのうち半数の約70人がASUSの端末を選択した。その他の生徒と合わせると90人近くが、現在、ASUSの端末を活用しているという。
一方、先生たちの端末は基本的に川崎市が導入したWindowsを活用。ただし、事前申請した端末は持ち込みを可能にしているという。
ASUS製品の信頼性、大きな魅力の「ASUSのあんしん保証」
町田教諭は「安価で文教向け、バッテリー駆動が8時間以上、壊れにくい頑丈さ」といった端末を提供している企業の一つとしてASUSに厚い信頼を寄せている。今年度、ASUSから提案されたASUS Chromebook Detachable CM3、ASUS Chromebook Flip C214MA、WindowsノートPC ASUS B1100FKAは学校が求める端末の仕様希望を満たしており、以前から高品質な製品を複数作っている点にも注目していたと話す。
「最大の魅力はASUSの保守内容。学校側が主導となって、修理品をメーカーに送る手続きというのはできれば避けたいと考えていました。私が担当の時期はよいですが、他の先生が担当に変わった時にやっていけるかどうかも懸念のひとつでした。ASUSであれば保証期間中、連絡すると指定の宅配業者が指定場所に引き取りに来てくれます。また修理完了後は指定場所(生徒の自宅も可)まで届けてくれます。かつこのピックアップサービスは往復無料。この保守体制はBYODで端末整備をする際には大きいと感じました」と評価する。
学校購入での端末には物損保証にも対応した3年保証込みをセットにしている。ASUSが提供する”ASUSのあんしん保証プレミアム3年パック”は3年間の自然故障の無償修理対応に加え、使用者過失での故障や破損に関しても年度1回、合計3回の修理代が金額上限も無く、故障原因を問わず0円で修理を行うことができる。生徒が毎日使う物。万が一の備えにしっかりサポートしてくれる。
体育館に集合しOSごとにWi-Fiの接続を練習
OSや端末が異なれば操作方法も変わる。新入生のオリエンテーションで1年生全員が自分のパソコンを持ってきた日、体育館に集合してWi-Fiに繋ぐ練習を行ったという。ステージ側には Chromebook の人といったようにOSごとに生徒が各箇所に集まり、担当の教員がそのグループごとをフォローしながら、同じOSの端末を所有している生徒が、互いに教え合いながらWi-Fiに繋いでいくことができたという。
「本校は自分のID・パスワードでサーバ―を認証して接続します。Wi-Fiの1人1人の鍵が異なっているので、隣の端末の情報を盗み取ることが出来ませんし、何でもつなぎ放題ということにはなりません。ID・パスワード認証の良さは、何か起きた時に誰がどこで何をしていたのかわかるようになっているところ。誰が、というのが学校では把握できるからねと生徒に伝えているので、生徒も変なサイトや危ないサイトを見たりしないよう気を付けているようです」。使い方の自主規制にもなっているようだ。
BYODならではのメリット
町田教諭はBYODでの端末導入に関して、「教員や保護者の視点では様々にありますが、生徒は自分の所有物ということでみんな大事に使っています」と生徒が大切に扱っている様子を語る。
導入から2カ月ほどが経過したが、最近は授業の内容をキーボードで打ち込んでメモする生徒もで始めた。初めて個人で端末を所有する生徒もいるため、各人で経験のレベルはまちまちだが、友だち同士、席が近い同士、同じ端末同士で、教え合っている姿が見受けられるという。
英語や数学など普通科目の授業で Google Classroom を活用して資料を閲覧したり、動画を見たり。また、ホームルームの時間では、Google カレンダーで明日の予定を確認したり、自分で入力したり。さらに、話し合い活動などの際には、Google Jamboard を使って、クラスの考えを出し合って集約させ、それを別の生徒が Google ドキュメントにまとめたりと、Google の各種アプリケーションにも馴染み、1年生のICT活用は徐々に進展している様子だ。
「端末を使うと作業効率が上がったり、情報共有の時間が短縮されたり、すごくメリットがたくさんあると思います。それは普段そこにあるから使えるのであって、いつでも自分のものが自由に使えて、いつでもある状態が理想かなと思います。生徒が1人1台端末を使う・使わないも自由です。しかし使ったほうが効率が良いのは確か。学習のスピードや深さ、精度も上がってくるのではと思います」(町田教諭)。
専門科目で学ぶ端末と、1人1台端末活用の両輪をスタートさせた同校。生徒も先生たちもICTの利便性と可能性を日々感じ取りながら柔軟に取り組んでいるようだ。
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