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2022年12月12日

貫き続ける女子校としての存在意義、「西遠式ICT教育」で進化した協同学習/静岡県西遠女子学園(前編)

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静岡県西遠女子学園

共学化に踏み切る男子校・女子校が増加中

1906年の創立以来、女子校としての存在意義を貫き続けている静岡県西遠女子学園

近年、男子校・女子校だった学校が共学化する事例が増えている。首都圏の私立中高一貫校だけでも、ここ20年で28校が共学化に踏み切った(23年度以降に共学化が決定している学校も含む)。

背景にはさまざまな事情が絡み合っているが、一つ挙げられるのは、少子化による生徒募集の激化だ。特に私立校の場合、経営的側面を抜きにして学校づくりを語ることはできない。安定した生徒数確保は学校法人にとって死活問題と言えるが、全体的な母数の減少により、男女別学で生徒数を確保することが難しくなってきたのだ。

また、受験者や保護者の共学志向が強くなっていることも挙げられる。ジェンダー意識の高まりもあり、性差にとらわれず男女が共に学べる環境のほうが、多様性のある教育が受けられるのではないかという考え方だ。そうした時代の要請に合わせて進化する意味で、積極的に共学化を決断する学校も多い。

女子校であること、女子校だからできる教育を大切にしたい

岡本忍理事長

確かに、上述のような多様性ある学びの環境が共学のメリットであるのは事実だ。しかし、それを優劣で語るのは適切とは言えないだろう。あくまで学校の特徴や個性の一環にすぎず、共学には共学の、男女別学には別学ならではの良さがあるからだ。

そのため、強い信念をもって男女別学を貫く学校も少なくない。静岡県西遠女子学園(浜松市)もその一つだ。同校は「婦人の中に未来の人は眠れり」を建学の精神に掲げる。「すべての人にとって、最初の教育者は母である」という考えから、女子への教養教育を目指してその産声を上げた。1906年の創立以来、時代や社会的価値観の変化に合わせて形を変えながらも、女子校としての存在意義を貫き続けている。

協同学習とICTの親和性の高さに注目

そこで同校がかねてより力を入れてきたのが、協同学習だ。教育界全体における協同学習への注目度がまだ低かった20年以上前から実践しており、授業はもちろん学校生活のいたるところに、友達と対話を重ねながら共に問題解決へ導く学びの体験が用意されている。

加えて近年は、ICT教育にも熱心だ。岡本理事長は言う。「協同学習とICTは極めて親和性が高いと感じています。『ICT教育』と聞くと、デジタルのスキルを高めることが想像されがちですが、本校では定義が少し異なります。協同学習をさらに深め、本校らしい女子校教育を推進するツールがICTだという位置付けです」。

同校では、2015年から Google for Education の導入や、教室へのICT環境の整備は進められてはいたが、2020年のコロナ休校でICT利用が一気に加速した。生徒の持つ端末と家庭のネット環境を緊急調査し、いち早くオンライン授業に向けて教員研修を実施して、Google Classroom による毎日の連絡、Zoom による朝礼や YouTube を利用したオンデマンド配信による授業などを次々と開始した。この対応は地域の周辺他校と比べても非常に早く、生徒や保護者からも感謝の声が上がったそうだ。

学びの空白を作らなかった成果か、コロナ休校を挟んだ模試で他校が軒並み苦戦を強いられる中、同校の生徒たちは成績が向上。教員もICTに有用感を得て、学校全体の意識が変わったと言う。

協働性を重視し、GIGA端末に ASUS Chromebook を採用

こうしてICTの活用に確かな手ごたえをつかんだ同校、コロナ第1波収束後は、折からのGIGAスクール構想を背景に1人1台の端末環境整備に乗り出す。採用したのは「ASUS Chromebook Flip」だ。

Chromebook は、Google 独自のOSを採用したノートパソコン。決め手となったのは、軽量であること、堅牢性、バッテリーの持続性など。キーボードの存在も重要なポイントだった。同校らしい協同学習をより深めていくためには、キーボード入力による資料作成ができる機能を重視したかったからだ。


例えばワープロ、表計算、プレゼンテーション、デジタルホワイトボードなどの機能がそれに当たるが、これらがすべてクラウド上で動作することも大きな特長だ。端末内にアプリやデータを保存する必要がないため、資料の提出や共有、共同編集が自在に行えて、時と場所も選ばない。まさに、同校が目指す協働的な教育環境には最適なツールだと言えた。

2020年時はとにかく即時の対応を優先したため、BYOD形式で生徒個人の端末を使用せざるを得なかったが、それが大きな課題ともなっていた。端末によってアプリ等の挙動や操作方法が異なるケースが多発したためだ。スマホを使用している生徒も多く、リアルタイムのタイピングによるコミュニケーションが取れなかったり、議論に参加できなかったりといった、端末による環境差も生まれていた。

しかし、Chromebook の導入を機に、統一性を得た同校のICT教育実践は一気に加速していく。以前から取り組んでいた教育活動や使用ツールはその多くが Chromebook 上に置き変わ
り、以前はできなかった新たな授業アイデアや取り組みも次々と生まれていった。

(全2回 後編はこちらから

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