2019年7月8日
学習指導要領が示す高校生に求められる「情報活用能力」とは何か
情報活用能力を最もシンプルに云えば、脳内の活動として「入力(Input)」~「処理(Process)」~「出力(Output)」です。必要な情報を集めて入力する。情報を取捨選択したたり組み合わせたり、加工したり考えて処理する。社会のルールに従って、訴求対象に伝わり易いように工夫して出力する。AI・ロボット・IoT・ビッグデータが牽引する第4次産業革命の先に見据えたSociety5.0の社会。新しい学習指導要領で学ぶ高校生には、どのような情報活用能力が求められるのでしょうか。
21世紀に求められる能力
20世紀の学びには「情報活用能力」などはありませんでした。「知識」や「学歴」意外に問われたのは、「協調性」と「コミュニケーション能力」。「協調性」とは、云うことを聞いて集団の和を乱さないこと。「コミュニケーション能力」とは、飲み会や社員旅行に参加して盛り上げたり、顧客対応を円滑に行える能力です。コンピュータが登場してから「情報処理能力」という言葉が使われるようになりましたが、これは「処理能力が高い」=「頭の回転が速い」といった、いわゆる「頭のいい人」をたとえる言葉でした。
しかし、新しい学習指導要領では、「資質・能力の育成」において、「各学校においては、生徒の発達の段階を考慮し、言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科・科目等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。」と明記されています。つまり、「語彙力」や「読解力」、「文章力」といった学びの基本能力と同様に「情報活用能力」が問われることになります。
「情報活用能力」には、まさに情報を活用する能力と、情報活用のためのツール(ICT機器やアプリ)を使いこなす能力があります。
高校生に求めたい「情報活用能力」
私が個人的に、高校3年生になったらこれくらいは身につけて欲しい「情報活用能力」というのをまとめてみました。
<情報を活用する能力>
・課題解決または自己表現のための情報をインターネットで収集し、企画・構成して、プレゼンテーションする。それを元にグループワークをしてチームでまとめて発信する。
・情報伝達のために文章、画像、動画、描画などを利用してコンテンツを作成する。
・情報モラルを理解した上で、SNS(LINE、Twitter、Facebook、Instagramなど)やブログ、メール等を適切に利用し情報発信をする。
・テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットなど情報発信媒体の成り立ちや構造を理解し、流通する情報の価値、真贋を判断する。
・インターネット等を利用したネットショップや金融決済、個人情報の提供システムを理解し、詐欺などの被害に遭わないようにする。
<ツールを使いこなす能力>
・タイピングで、10分間に600字程度の文章が正確に入力・編集出来る。(いずれ大学受験にCBTが導入される)*CBT(Computer Based Testing)=コンピュータを使用したテスト。
・コンピュータやICT機器、アプリやソフトの仕組みを理解して利用できる。
・セキュリティ管理のためのIDやパスワードを適切に管理、利用できる。
・インターネットやクラウドサービス、ブロックチェーンなどの仕組みを理解して利用できる。
・「AI」「ロボット」「IoT」「ビッグデータ」等の仕組みを理解して利用できる。
情報活用能力が必要な理由
私は以前、テレに局の関連会社で教育担当をしていました。テレビ関連の部署にはカメラマン、編集マン、ディレクターなど200数十人いる会社でしたが、その中でテレビ放送が映る仕組みを正しく説明出来る者は僅かでした。
「1億総白痴化」という流行語とともに拡がったテレビは、見る人にも作る人にも「なぜ映るのか」を知る必要性を与えませんでした。もちろん、学校で「テレビの映る仕組み」なんて教えてくれませんでした。ただただ見ていれば良いだけでした。これからの社会が体験する「第四次産業革命」。そのツールとなる「AI」「ロボット」「IoT」「ビッグデータ」などについて、その仕組みや影響を知らずに利用していたら大変なことになる可能性があります。20世紀のテレビの悪影響は、考えることが下手になったり、不必要な商品を購入するくらいの被害でしたが、これからはプライバシーや金融情報、家電やロボットのコントロールなど生活や命に関わることまで影響があるかもしれません。
因みにデジタル放送のテレビが映る原理は、画像・音声を1秒間に30枚の電気信号に変換~アナログ(波)の電気信号をデジタル信号(数字)に変換してデータ放送情報と合体~デジタル信号を電磁波(電波)にして放出~アンテナで電波を受信~電波を電気信号に変換~チューナーでチャンネル選曲~画像・音声とデータを分離~音声はスピーカーに画像とデータはディスプレイに出力。おそらくこの説明では、先輩の技術者からダメ出しされるでしょう。
まして、インターネットが繋がる仕組みやビットコインに使われるブロックチェーンの仕組みなどは、私には想像すら出来ません。しかし、次の時代に生きる高校生には、必須になるのでしょう。
教育現場の人たちには、そのことを肝に銘じて欲しいと思います。私たちが育ち、学んだ20世紀とは時代が違うのです。新しい時代には、新しい能力が必要です。
以上は、私の勝手な思い込みのような内容ですが、最後に文部科学省が示した、学習指導要領「生きる力」高等学校学習指導要領解説から少し引用しておきます。
教科「情報」を中心に高校で学ぶべき情報活用能力を整理すると、「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参画する態度」の3点だと述べています。
1)「情報活用の実践力」とは、課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力のこと。
2)「情報の科学的な理解」とは、情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と、情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解のこと。
3)「情報社会に参画する態度」とは、社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し、情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度のこと。
さあ皆さん、これまでのやり方、これまでの知識でこれからの高校生の情報活用能力を育むことができますか。まずはじめに、あなたの学校の「情報活用能力」の目指すところをまとめてみてはいかがでしょうか。(編集長:山口時雄)
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