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2016年11月7日

ICT教育ニュースが「STEM・プログラミング」を推す理由

ICT教育ニュースは、今年4月のリニューアルで「STEM・プログラミング」のジャンルを設定して、積極的に情報発信を行っている。最近の言い方で表現すれば、「推している」状態である。なぜ、ICT教育ニュースは「STEM・プログラミング」を推しているのか。それは、そこにICT教育ニュースの存在理由があるからである。

ICT教育ニュースは2013年1月、「情報通信技術(ICT)を活用した21世紀にふさわしい学校教育の実現を目指すニュース・情報Webサイト」を標榜してスタートした。しかし、「ICTを活用した21世紀に相応しい教育」とは何か、具体的な目標や手段は明確に定義できないでいた。だが2015年、2つのキーワードと出合った。「シンギュラリティ」と「第4次産業革命」だ。そこにこそ、「21世紀にふさわしい教育」の原点があった。

「シンギュラリティ」と「第4次産業革命」がもたらす21世紀前半の世界

読者の中で22世紀を迎える2101年に、地球上に生きて存在している人はほとんどいないと思うが、2050年だったら多くの人に可能性があるだろう。そう、あなたがまだ生きている可能性のある2045年、シンギュラリティはやってくると言われている。

Image of PIXTA

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シンギュラリティ(Singularity)とは、技術的特異点(Technological Singularity)を意味し、人工知能(AI)が人間の知能を超えることで起こる出来事とされている。楽観的な学者は、人類が労働や疾病から解放されて平安な暮らしを得ることが出来ると言い、悲観的な学者は人類がAIに支配され存在理由を失い、生存すら危ぶまれると危惧する。現在の人間は、地球上で最も知能の高い存在であり、ナンバー2はゴリラやチンパンジー。シンギュラリティ後は人間がその立場になる。

シンギュラリティが人類に悲劇をもたらせるかどうかはまったく不明だが、その可能性が否定されないままAI開発はいま、最先端の研究として世界中の様々な企業や機関が全力で取り組む分野となっている。だから、AIの日々の進化は凄いらしい。そして、シンギュラリティまでの、人類の未来が決まるかもしれないこの半世紀を子どもたちは生き抜いていかなくてはならない。

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より現実的な話をしよう。「第4次産業革命」のはなし。第1次産業革命が18世紀に誕生した「蒸気機関」による機械化、第2次が19世紀の「電力」の産業への利用、第3次が20世紀後半に普及し始めたインターネットなど「情報通信」の産業への応用。第3次産業革命をさらに進化させ、製造業を「スマート化」するのが第4次産業革命だと言われている。

キーワードは、「人工知能(AI)」「IoT(モノのインターネット=Internet of Thing)」「ビッグデータ」「ロボット」など。製造業だけでなく、サービス業でも農業でも漁業でも、教育分野でもこれらを使ったスマート化が進んでいる。

インターネット広告にあなたが欲しくなりそうな物の広告が表示されるのも、スマートフォンに話しかければ目的地までの道順を教えてくれるのも、SNSが勝手に友だちを紹介してくれるのも、自動運転で車が走るのも、人工知能の先生が苦手なところを繰り返し教えてくれるのもすべて、第4次産業革命の技術革新がもたらせるものだ。

もう一度言おう。そんな時代を子どもたちは生き抜かなければならない。あなたや私が学んだ、20世紀の方法でいいわけがない。

「第4次産業革命」に向けた21世紀の学び改革は国家戦略

2016年4月19日、安倍総理は、総理大臣官邸で第26回産業競争力会議を開催した。この会議では、「名目GDP600兆円に向けた成長戦略」と「イノベーション創出 ・チャレンジ精神に溢れる人材の創出」について議論が行われた。

その中で安倍総理は、日本にはITやロボットに慣れ親しんだ若い世代がおり、第4次産業革命の大波は、若者に『社会を変え、世界で活躍する』チャンスを与えるものだとした上で、「日本の若者には、第4次産業革命の時代を生き抜き、主導していってほしい。このため、初等中等教育からプログラミング教育を必修化する。一人一人の習熟度に合わせて学習を支援できるようITを徹底活用する」と、第4次産業革命に向けた人材育成の方向性を示唆した。

つまり、子どもたちに第4次産業革命の時代を生き抜き、主導していく力を身につけさせるのが、日本の重要な“国家戦略”であり、そのために小学校からプログラミング教育を必修化しICTを活用するするとしたのである。

これを受けて文部科学省では、「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」を設置、
7月末には、「教育の情報化を加速するためには、国、地方公共団体(教育委員会)、学校、家庭の役割を明確にし、それぞれの責任を果たしていくことが必要である」とした“まとめ”を発表、関係省庁の連携,産学官で目指す理念を共有し,協働的に取り組み,連携した支援体制の構築が求められると強調した。

だがこれだけでは、誰が、何を、何時までにやれば教育の情報化がすすむのかさっぱり分からないし、課題が山積されていることも事実だ。

第4次産業革命とSTEM・プログラミング教育

さて、第4次産業革命と「STEM・プログラミング」教育とはどんな関係にあるのだろうか。
STEM教育のSTEMは、「Science, Technology, Engineering and Mathematics」の頭文字。すなわち、「科学」「技術」「工学」「数学」である。日本の言い方だと「理数系教育」ということになるかもしれないが、学研的な学びという観点より科学技術開発の競争力向上という観点に立った用語だといえる。STEMが生まれた背景には、米国の産業技術力低下という社会問題があったからだ。

つまり、今の日本で言えば、第4次産業革命を支える「人工知能(AI)」「IoT(モノのインターネット=Internet of Thing)」「ビッグデータ」「ロボット」などの研究・開発・利用ができる社会の構築、人材の育成にとって「STEM・プログラミング」は欠かせないものとなるだろう。

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そのことを一人でも多くの先生方、教育関係者に知って欲しい。第4次産業革命の動向、「人工知能(AI)」「IoT(モノのインターネット=Internet of Thing)」「ビッグデータ」「ロボット」などがどうのように社会を変えていっているのか、その最前線に触れて欲しい。そんな思いからICT教育ニュースでは、直接教育に関係の無い話題でも「STEM・プログラミング」情報として取り上げている。第4次産業革命ネタを推しているのだ。

「デイトレーダー」という、ネットなどを使って1日の株式売買で運用益を上げるという職業が登場したときには驚いたものだが、今では「ユーチューバー(YouTuber)」という職業があるのをご存知だろうか。ユーチューバーとは自作の動画を動画共有サイトのYouTubeにアップし、そこから得られる広告収入で生活をしている人の事である。20世紀には想像出来なかった職業である。

「今の子どもたちの65%は、大学卒業時に、今は存在していない職業に就く」という予測がある。その職業の多くは、「第4次産業革命」に関連するものだろうし、ICTと関わりのないものだとは考えにくい。先生方は、そうした時代の子どもたちの学びに携わってるのだ。

子どもたちの未来は、きょう、あすからのの学びに掛かっている。何のために何をどう学ぶのか。是非、「ICTを活用した学び」や「STEM・プログラミングを意識した学び」を広めて欲しい。私たちも精一杯取り組んでいく。それこそが、ICT教育ニュースが進める「21世紀に相応しい学校教育」のあり方だと信じて。(編集長・山口時雄)

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