2022年1月7日
GIGAスクールあるある「先生! パソコンが遅くて調べものが進みません」にどう対処すればいい ?
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GIGAスクール構想を実現するために、全国の小中学校で「一人一台端末」が展開された。しかし、蓋を開けてみればそのパソコンが遅すぎて使えないという問題が多発している。なぜそんな状態に陥ってしまったのだろうか? どうすれば解決できるのか? 今回は学校現場をよく知る、元教員にしてマイクロソフトのICT推進者である栗原氏と、技術者の廣瀬氏に話をうかがった。
《対談メンバー》
廣瀬 望氏
日本マイクロソフト株式会社
テクノロジースペシャリスト
栗原 太郎氏
日本マイクロソフト株式会社
パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部
カスタマーサクセスマネージャー
──GIGA端末が「遅い」という声が挙がっていると聞きましたが、実際にどんな問題が生じているのでしょうか?
栗原氏
「思ったようにパソコンが動かない」という問題があちこちで起きています。動画どころか普通のWebサイトで検索をかけるだけでも15秒以上固まってしまったり、システムにログインしようとしたら画面が白くなって止まってしまったりと、まるで”ライブチケット争奪戦”のようなことが普段の学校で起きているのです。 生徒からは「スマホで調べたほうが早い」「ネットが遅くて調べたいことの半分も調べることができない」という声も聞きます。
平成初期ならいざしらず、令和にそこまでパソコンが遅いなんてことがあるの?と信じられないかもしれませんが、教育現場の方なら「あるある」と共感していただけるのではないでしょうか。
廣瀬氏
端末が思うように動かないことによって、ICT教育に対する先生・生徒のモチベーションが無くなってしまうのを危惧しています。
栗原氏
ICT教育を評価する手前の段階で、ものごとが止まってしまっているんです。本来は「ICTのここが良いよね、ここは以前のやり方の方が合っているね」といったことをひとつずつ見つけ出して、ICT教育と従来の教育をどう混ぜ合わせていくかを考えていかねばならないのですが、ICTの可能性を体感する前に「ICT教育なんていらない」となってしまいかねません。
ネットワークが遅い、思うように使えないといった環境下でも「GIGA端末を使っていきましょう」「他の学校では使っています」といった話をニュースなどで耳にします。そういった状況は、先生たちにとってはかなりのプレッシャーになってしまっていると思います。
──問題は深刻ですね。いったいなぜ、学校のパソコンがそのようなことになっているのですか?
廣瀬氏
先ほど「チケット争奪戦」という言葉が出ましたが、今の学校現場は、まさにそれと同じような状態が起きています。一人一台端末によって大人数が同じ場所に向かうため、ネットワークがものすごく混んでしまうのです。
多くの場合はパソコン・タブレットやアプリに原因があると思ってしまう。我々に対して学校から「タブレットが動かないんですけど、やっぱりパソコンじゃなきゃダメですか?」という相談が来ることもあるのですが、実は問題はそこじゃないのです。
栗原氏
学校では「なるべく軽いアプリを使おう」「新しい端末に買い換えよう」といった発想で対処しようとされていますが、それでは、この「GIGA端末の動きが遅い問題」の根本を変えることはできません。問題は端末やソフトではなく、学校のネットワーク環境にあるのです。
──学校のネットワーク環境では今、どのようなことが起きているのでしょうか?
廣瀬氏
インターネットはとても便利なインフラですが、外から攻撃されたり、中から情報を持ち出されたりといったリスクもあります。そこで、従来は「境界防御」という考えでセキュリティを保護しようとしていました。これは、道路の「検問」のようなものです。町から外に出て行く道路を一本だけ引いて、そこに検問所を設置して監視すれば、安全といった考えでした。
交通量が少ない時代ならばこれでも良かったのですが、いまは「一人一台端末」の時代です。全員がマイカーを乗り回しているようなものです。道路がひとつだけでは、大渋滞が起きてしまう。こんなときに軽自動車をフェラーリにしたって、渋滞は避けられませんよね? パソコンを買い換えても問題は解決しないというのは、こういう理由です。
栗原氏
私が教員になって驚いたことのひとつは、インターネットの回線でした。多くの学校では家庭用の契約と同じで回線が一本しかないんです。それを地区全体で分け合って使っているのですから、それは遅くなるのも当然です。そしてその回線を増やすには膨大な費用がかかってしまいます。
──では、どうすれば学校内の「ネットワークが遅い問題」を解決できるのでしょうか?
廣瀬氏
ネットワークの帯域を増やす、つまり道路の幅を増やしたり、高速道路を建設したりといった対策方法がありますが、先ほど栗原さんが言ったとおり、こうした対応には高度な専門知識と予算が必要です。そこで、どこの学校でも取り入れやすい手段は「町から外に出る道をいっぱいつくる」ことです。そうすれば渋滞もなくなり、快適にインターネットという道路を走ることができます。1本1本の道は細くても、自分の専用道路があれば渋滞しません。 専門的にはこれを”ローカルブレイクアウト”と呼びます。
──でも、みんなが好き勝手に走ったら、肝心のセキュリティが保護できなくなってしまいませんか?
廣瀬氏
かつてはそうでした。しかし近年、技術の大きな進歩によって、新たなセキュリティ対策ができるようになっています。
ひとことで言うと、今までネットワーク側で守っていたセキュリティを、クラウド側で守ることができるようになりました。クラウドを提供する運営会社側で利用者の「身分証明書」とパソコンの「安全証明書」を常にチェックして、それらを持っていれば自由に道を通って良いよ、不備があったら制限するよ、と見守ってくれるのです。そのため、ネットワーク側への負荷が軽減され、結果として「ネットワークが遅い」という状況を解決できます。
インターネット上で身元を確認する技術は大きく発達し、あらゆる角度から本人であるかを確認・検証したうえで、パスポートや免許証のような「本人を証明する情報」を発行する認証機関を導入したセキュリティ技術が利用できるようになっています。これにより、新しいセキュリティ方法にもとづく高速ネットワークが可能となりました。
栗原氏
今までは、たとえば「学校に入るとき」「パソコンにログインするとき」といった大きなくくりで身元確認をおこなっていたのですが、これからは「アプリを使う」「ファイルを開く」といった一つ一つの細かい作業に対しても、条件を指定して身元確認を行うことができます。どこを歩いてもお天道様が見守ってくれているようなものなので、検問所のある道を通らなくとも済むのです。
廣瀬氏
身元の確認・検証方法はもちろんですが、セキュリティそのものの質も上がっています。たとえば車の検問を例にあげると、これまでは「この車は通しても良い車かどうか」だけを厳重にチェックしていましたが、中に乗っている人や車の状態については調べていませんでした。しかし今後は「中に乗っている人に間違いがないか」「車検が通った安全な車であるかどうか」まで確認できるようになっているんです。
マイクロソフトであれば、”Azure Active Directory(Azure AD)”が身分証明書サービスであり、” Microsoft Intune ” が端末の安全チェックサービスに当たります。これらのサービスを利用できるMicrosoft 365 Education A5というプランは、特にセキュリティの自動保護機能が手厚くなっているのですが、導入したことで学校のネットワーク速度が130倍以上になったという成功事例が日本でも現れてきました。
──マイクロソフトのクラウドがセキュリティに強いと言えるのはなぜでしょうか?
廣瀬氏
それは世界中でWindowsが使われているからです。その数は何十億にも上ります。世界のICT環境で何が起きているのかを把握することによって、新しい攻撃手法が現れても、非常に短い時間のうちにその情報が全世界のパソコンに共有され、素早く対策することが可能になるのです。マイクロソフトほどサイバー攻撃に苦労して、戦い続けてきた会社は世界のどこにも無いと思っているので、安心してお任せください。
── 最後に、セキュリティ方式を変えてネットワークが早くなることは、学校に何をもたらすと思いますか?
栗原氏
ひとことで言うなら、世界が変わります。私は教員時代、学校のICT導入に成功した体験をしているのですが、先生も生徒たちも、目つきががらりと変わるんですよ。本当に生き生きとして……今までにそういった姿をいくつも見てきました。
今はネットワークの遅さによって阻まれてしまっていますが、先生同士が、先生と生徒が、生徒同士が「繋がる」ことによって、凄いことが始まります。それこそが、本来のGIGAスクール構想の理念であるはずです。
廣瀬氏
学校のICT環境は、法改正や技術の進歩によって大きく変わりつつあります。今はGIGA端末が使いにくい状況でも、必ず快適に使える未来が待っています。その未来に向かうお手伝いを、我々はこれからもやっていきます。
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