2026年3月24日
学校著作権ナビゲーターが解説する「学校で生成AIを使うとき、情報担当者が押さえたい著作権の基本」
【寄稿】
著者:原口 直
学校著作権ナビゲーター・東京学芸大学学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザー
はじめまして。学校著作権ナビゲーターの原口 直(はらぐち なお)と申します。現在は東京学芸大学学校図書館運営専門委員会 著作権アドバイザーや文化庁の教材監修、著作権団体の委員などをしながら、学校の教職員や子どもたちにむけて著作権教育をおこなっています。
1人1台の学習者用端末、オンラインを活用した授業、そして生成AIで大人も子どももできることが増えています。他方で「著作権」を気にして、利用をためらったり、使用をやめたりすることがあるかもしれません。
1. なぜ今、情報担当が著作権を押さえる必要があるのか
研修先の自治体や学校で「生成AIで学校だよりの文章を作ったのですが、著作権は大丈夫ですか?」など生成AIに関する質問が増えてきました。疑問に思って、質問する先生はまだよい方で、多くの場合、誰も気にしないまま使ってしまっていませんか。
文部科学省は令和6年12月、「生成AIガイドライン」を公表しました。そこでは、教職員が生成AIの仕組みや特徴を理解し、人が最終的な判断を行うことを前提として、校務での利活用は有用と考えられると整理されています。便利さへの期待が高まる一方、「元の著作物をどう扱うか」「生成物が他者の著作物と類似していないか」という著作権の問題が静かに潜んでいます。個々の教員が迷ったとき、校内で判断の軸を示せる人——それが情報担当者なのです。
2. 学校で特に迷いやすい3つの場面
①生成AIで作った文章を学校だよりや校内文書に使う
生成物と既存著作物の間に類似性・依拠性がある場合、著作権侵害が問題になり得ます。授業で用いる場合は著作権法第35条(授業目的の利用)の要件を満たすかどうかが確認点で、学校ホームページへの掲載や保護者向け通信への転載など授業目的を超える利用では、同条は適用されません。
②ネット画像を生成AIで加工して授業資料に使う
生成AIで加工しても、元画像に関わる著作権の検討が不要になるわけではありません。利用の態様によっては複製・翻案等の問題が生じ得ます。「どこで・どのように使うか」を一度確認する習慣を持ちましょう。
③他サイトの記事を生成AIで要約して研修資料に使う
要約であっても複製・翻案等の問題が生じ得ます。引用(著作権法第32条)として扱う場合も、必要性・明瞭な区分・主従関係・正当な範囲・出所明示など複数の要件をすべて満たす必要があり、出所を明示するだけでは足りません。
3. 情報担当が校内で共有したい3つの問い
法律で一つひとつを裁こうとすると、現場は止まってしまいます。迷ったときに立ち止まれる「3つの問い」を共有しましょう。
問い①「何を入力しているか」
他者の著作物をプロンプトにそのまま入力する行為は、その目的や利用方法によっては自体が、著作権法上の問題を生じる場合があります。個人情報や児童生徒の作品も、サービスの利用規約を確認した上で扱いましょう。
問い②「第35条の要件を満たしているか」
「授業の過程における利用」として著作権法第35条の要件を満たしているかを確認しましょう。学校HP掲載やPTA活動での利用など授業目的を超える場合、同条は適用されません。「校内だから大丈夫」ではなく、要件ベースで考えることが大切です。
問い③「そのサービスで認められているか」
出力物の利用条件や著作権の扱いは、サービスごとに利用規約で異なります。確認せずに使うことがトラブルの入口になり得ます。また、自治体が発行する学校のアカウントと通常版は、できることやセキュリティが異なります。
4. まとめ——「ものさし」を持って、一緒に進もう
「怖いから使わない」でも「便利だから何でも使う」でもなく、その中間に判断のものさしを持つことが大切なのです。情報担当者が「著作権について相談できる人」として校内に存在するだけで、教員は安心して立ち止まれるようになります。法律論で裁くのではなく、「この場面でいちど確認してほしい」という習慣の種をまく——それが学校全体のリテラシーを底上げしていくのだと考えています。
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【著者プロフィール】
都内公立中学校・東京学芸大学附属世田谷中学校で音楽科教員として勤務後、現在は「学校著作権ナビゲーター」として教育委員会・学校向けの研修・講演を全国で行っています。現場目線の著作権解説はWebサイト「原口 直の学校著作権ナビ」およびYouTubeチャンネルにて発信中です。研修・講演のご依頼もお気軽にどうぞ。
本記事は、文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(令和6年12月26日)、文化庁「著作権テキスト 令和7年度版」、文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)をもとに整理したものです。個々のケースへの適用については、専門家や文化庁の相談窓口にご確認ください。
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