2022年7月8日
続・iPadではじめる!先生のためのICT入門講座 【第15回】生徒の声を可視化!
【第15回】梅澤 俊秀先生(千葉明徳中学校・高等学校)
生徒の声を可視化!ICTで実現する学習者主体の授業とは?
「わが校でも今年から1人1台のタブレット端末を導入します」突然の発表に驚いたのもつかの間、教員用ということで1台のiPadが配布されました。「急に言われても、いったい何からはじめていいのかさっぱり・・・」。本連載では、そんな困った状況におかれた先生たちのために、学校でタブレット端末を使うためのポイントを解説。iPadを活用した学びを実践している先生たちの活用事例をもとに、ICTが苦手な先生でも取り組める具体的な活用方法をご紹介します。
チョーク&トーク型授業ではできなかったこと
「せっかくICTを導入するのであればこれまでできなかった授業がしたい!」そう考える先生も多いのではないでしょうか。知識を伝えることが目的の授業であれば、これまでの「チョーク&トーク型授業」で十分です。では、従来の一斉授業ではできなかったこととはいったい何でしょうか。
真っ先に思い浮かぶのは、子どもたちの声を同時に聞けないことです。もちろん指名したり、前に出て黒板に書いてもらったりすることで、一部の子の声を聞くことはできます。でもクラス全員の意見を一斉に聞くことは不可能です。ICTでこれが実現できれば、授業を大きく変えることができます。
また、全員の意見・疑問を共有することは、学習者主体の授業をつくることにつながります。自分の意見をみんなに共有し、クラスメートの意見と自分の意見とのちがいに気づく。そんな時間を授業の中に盛り込むことで、子どもたちの学習に対するモチベーションもまったく違うものになるはずです。
そこで今回は、ICTを活用して学習者主体の授業づくりに挑戦している、千葉明徳中学・高等学校の梅澤俊秀先生にお話をうかがいました。学園のCIO(情報最高責任者)をしながら高校で地歴公民科の授業を担当する梅澤先生。ICTを使って生徒の声を可視化する方法について教えてもらいました。
ICT導入校として1人1台のiPad導入して5年
千葉明徳中学校・高等学校は、千葉県千葉市中央区にある私立の共学校です。生徒数は中学校と高等学校で合わせておよそ1200名。高等学校には、中学から内部進学した生徒が在籍する中高一貫コースのほか、特別進学コース、進学コース、アスリート進学コースの4つのコースがあります。
同校では2017年の新入生より1人1台のiPadを導入。現在は全学年の生徒が家庭負担で購入したiPadを保有しています。また、すべての教室にプロジェクターとApple TVが常設されており、すぐに無線での画面投影が可能。機器導入から5年が経過し、2022年度中にリプレースを計画しているそうです。
「脳死」について考える!学習者主体の授業デザイン
『「Google Classroom」と「ロイロノート・スクール」で授業を進めれば、ICT初心者の先生や、ICTが苦手という先生にとっても最強の組み合わせになるのではないでしょうか?』と語る梅澤先生。高等学校で担当している現代社会の授業を例に、ICTを活用する流れを紹介していただきました。
この日のテーマは「脳死について考える」。梅澤先生の現代社会の授業では、教科書内容にはあまり触れず、1年間で10個ほどのテーマを設定して進めているそうです。授業の最初に、テキストマイニングツール「Mentimeter」を使って、「脳死」に対するざっくりした意見を聞きます。これによって、人それぞれに意見があることを生徒たちは認識します。
その上で、さまざまな視点から脳死の問題を考えていきます。「ロイロノート・スクール」を使って「自分の臓器ならどう考える?自分の子どもの臓器だったら?」といった質問を投げかけ、提出箱で一人ひとりの意見を回収。時には意見をぶつけ合うことで授業が白熱してくると梅澤先生は言います。
【ロイロノート・スクール】1人1台GIGAスクールに最適な授業支援クラウド
そして授業の最後には、生徒自身がしっかりと自分の考えをまとめます。感想や意見は「Google Classroom」を使って後日回収。さらに紙でも提出してもらうようにしているそうです。デジタルの利点を活かしながらも、アナログの強みもしっかりと残しているあたりはベテランの先生ならではと言えます。
・Classroom | Google for Education
『ICTを活用することでインパクトのある授業が展開できたり授業が進めやすくなったり。また一人ひとりの考えを集めて共有したりとさまざまな使い方がある』と梅澤先生。ICTを活用した授業デザインで一番大切にしていることは“どうすれば授業が深まるのかという視点”とのことでした。
【本日のワーク】「Mentimeter」で生徒の声を可視化しよう!
「自分の意見と他の人の意見のちがいが一目で確認できるので、生徒たちの興味関心が高まります」を梅澤先生がおすすめする「Mentimeter」。今回のワークでは、iPadの「Safari」からウェブ版の「Mentimeter」を使って、生徒の声を集めるテキストマイニングツールを体験してみたいと思います。
・Interactive presentation software – Mentimeter
「Mentimeter」のサイトにアクセスしたら、最初にアカウントを作成しましょう。「Sign up」をタップするとアカウント作成の画面が表示されますので、メールアドレス、パスワード、名前を登録してサインアップしてください。GoogleやFacebookのアカウントを使って登録することも可能です。
続いて、どこで使うかを聞いてきますので、「Education」→「Teacher(K12)」などを選択し「Save selection」で保存。利用目的はひとまず「Training or educating」にしておきましょう。プラン選択の画面では「Continue with free」をタップ。「Get started」を押せば準備完了です。
それでは早速、生徒たちに好きな食べ物を聞いてみたいと思います。左側にあるメニューで「My presentations」を選択してから「+New presentation」をタップしてください。任意の名前をつけたら「Create presentation」を押すと新しいプレゼンテーションが作成されます。
次に画面右側の「Slide type」をタップして「Word Cloud」を選択します。「Your question」に質問文を入力したら、1回の回答数(Entries per participant)、画像(image)、再回答の可否(Extras)を選択して右上の「▶︎Present」をタップ。質問文が書かれた画面が大きく表示されます。
生徒たちに回答してもらうには、画面上部に書かれた8桁のコードを伝えましょう。今回はiPhone版のアプリを使って回答してみました。8桁のコードを入力して「Submit」を押すと、先生が設定した質問が画面に表示。回答を入力して「Submit」を押せば、即座に先生側の画面に回答が反映されます。
試しに「Extras」をONにして、複数人分の回答をくり返し入力してみてください。回答がどんどん画面上に表示されていく様子を見ることができます。また「Mentimeter」では、回答が多いワードほど中心に大きく表示されます。生徒たちの声を視覚的に捉えることができるわけです。
テキストマイニングツールで「正解のない問い」へ
「Mentimeter」を使ってみていかがでしたか。まだ授業で使うイメージが湧かないという先生もいるかもしれません。テキストマイニングツールは答えが1つの授業には不向きです。つまり「正解のない問い」があってはじめて効果を発揮します。まずは授業の最初と最後で、子どもたちの関心がどう変化したか、気軽に聞いてみることからはじめてみてはいかがでしょうか。
【実践者プロフィール】
千葉明徳学園 ICT Education Center CIO
(兼:高等学校 地歴公民科・非常勤講師)
梅澤 俊秀 先生
1979年、千葉明徳高等学校社会科教諭として入職。2011年4月から高等学校教頭、その後副校長などを経て2021年から、千葉明徳学園ICT Education Center CIOの職に就任。中学校・高等学校においては、ICT推進委員長として2017年から1人1台のiPadを導入。情報Ⅰの必履修化を前提に、2021年の1年をかけて情報の教員免許を取得した。MIEE2021-2022。AppleTeacher。
【筆者プロフィール】
教育ICTコンサルタント
小池 幸司
教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて導入事例やノウハウを発信している。2013年3月にiPad×教育をテーマにした国内初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」を出版。2020年10月から、YouTubeチャンネル「TDXラジオ」を開設し、「Teacher’s [Shift]〜新しい学びと先生の働き方改革〜」のメインパーソナリティを務める。NPO法人 iTeachers Academy 理事・事務局長。
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