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2021年4月19日

アドビと連携した、時代のニーズにあう創造的な学びに関する研究発表

~東京都高等学校情報教育研究会、2020年度研究大会~

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3月29日、東京都高等学校情報教育研究会による2020年度研究大会がオンラインのライブ配信で開催された。放送大学中川一史教授の講演『小中高の教育の連携と展望〜1人1台端末、プログラミング教育、カリキュラム・マネジメント等を踏まえて〜』から始まり、都内の中学校や高等学校の情報科教諭らによる研究発表が続いた。

GIGAスクール構想の前倒しによって、2020年度中に小中学校1人1台の端末配備が97%まで進む中、高校においてICT機器をどのように活用し、何を学ぶべきかといったテーマへの言及も多くあった。校内にとどまらずアドビをはじめとする民間企業と連携し、学習指導要領の改訂など時代のニーズに合う創造的な指導案作成やICT環境整備の成果を発表した、筑波大学附属駒場中学校・高等学校、東京都立三鷹中等教育学校について紹介する。

『研究発表ポスターづくりの指導案:既存の動画コンテンツを利用して』
筑波大学附属駒場中学校・高等学校 植村徹 教諭

新学習指導要領によって、探究学習に重きが置かれたことで、生徒は学習成果を発表する機会が増大するだろう。生徒の研究発表において、序論から結論、考察を一望できる「ポスター」は重要であり、ポスター形式での発表機会も増えると、植村教諭が語り始めた。効果的に研究成果を伝えるための指導機会が増えることになるのだが、各教科の指導教諭らもポスターを活用した「伝え方」については専門的な知見を持っているわけではない、と課題にもふれる。

筑波大学附属駒場中学校・高等学校 植村徹 教諭

◆伝わる研究発表ポスターを作るために指導案試作、アドビとの共同開発へ
植村教諭をはじめ、数学科、理科、公民科の計6名の指導教諭らが「伝わる研究発表ポスター」を作るための指導案の試作に取り掛かった。ポスター指導に必要なことは、「情報デザイン」と、研究発表ポスターとして教科特性を踏まえた「お作法」の2点だと植村教諭らは考えた。「お作法」というのは、広告のためのポスターでなく、研究の流れが明確にわかる適切な構成や数式・実験データの見せ方など型のことだ。

「情報デザイン」については、動画教材などを活用し、生徒が自学できる数時間程度のものを想定した。しかし教諭らで指導動画を制作するなど校内だけでの解決は難しい。

同校では2017年度からAdobe Creative Cloudを導入済みで、コロナ禍の休校期間に共有デバイスライセンスからユーザー指定ライセンスへと移行し、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorを生徒が自宅でも使える環境が整っていた。これまでにハンズオン講座の開講でアドビと連携したこともあった。植村教諭らはアドビに学習コンテンツの紹介など支援を求め、「研究発表カリキュラム」の共同開発が進行した。アドビの豊富な既存学習動画から、教諭らはカリキュラムに必要なものを効率よく選ぶことができた。またアドビからの提案で、最適なツール選びの学習動画がカリキュラムに追加された。

◆7時間の指導案が完成し、試行へ
全7時間の指導案を試作した。前半の3時間はデザインに関する学び、後半の4時間は実際のポスター評価にあてることになった。

「研究発表ポスターづくり」の指導案(試作)/赤字の項目は生徒の自習で進行

高校2年理科(生物)の課題研究と数学の課題研究に取り組む10名の希望者を対象として、夏休みを含む2020年8月から11月に指導案は試行された。

◆基礎編の3時間
1時間目は、キックオフの後、アドビのエデュケーションエバンジェリスト 井上莉沙氏によるオンライン講義「デザインの重要性とツールの選択」が行なわれた。続く2、3時間目は、帝塚山大学 大里浩二准教授による「研究発表ポスター制作の秘訣」という4本の動画で、要素配置のセオリーやフォント選び、配色についてデザインの基本を自学する。視線誘導や周囲の空きを配慮した配置、理論的に考える色選びについて理解を深めた。生徒からは、「口頭プレゼンと異なり発表者が流れを提示できない分、配置やレイアウトの工夫が持つ意義というのは大変大きいと感じた」「合いそうな色をセンスで選んでいくものだと思っていたので理論的に色を選んでいく手法は面白かった」といった感想が寄せられたという。続けてアドビのチュートリアル動画でAdobe Illustratorを学び、ポスターの雛型を制作する。ポスター制作と並行する研究の進捗は「研究要約シート」に箇条書きでまとめておき、ポスターの雛型に流し込むところまでを基礎編で終えた。

◆実践編の4時間
雛形ファイルに流し込んだ研究要約は、アドビの公開資料「研究者のためのポスターデザイン」を参考に習作として仕上げ提出。4時間目の中間発表会に代えて、習作に対する中間評価として大里准教授のコメントを生徒にフィードバックした。

5時間目のお作法の学習では教科ごとに作品例として先輩たちのポスターを「着眼点」をもって閲覧する中で、わかりやすい表現の理解をはかった。6時間目は、動画を活用しプレゼンテーションのコツを学ぶ。最終の7時間目には生徒相互での評価会を実施し、大里准教授もオンラインで参加。Adobe Document Cloud上で各受講生のポスターを共有し、生徒相互にコメントする中で、新たな気づきもあったという。

◆試行を経て
習作、最終評価会でのフィードバックをもとに改良し、指導教諭との相談を経てポスターの完成度は大きく上がった。完成した研究発表ポスター「ミジンコは光がお好き?」は日本動物学会の支部大会へ提出されたという。

段階的に完成度があがる生徒の研究発表ポスター作品例

参加した生徒からは「デザインの目を育むとても良い講座だった」「見る側の視点から設計することの徹底を通して、考え方の訓練ができた」といった感想が寄せられた。指導教諭からは、「昨年度まではデザインも指導する必要があったが、発表内容の指導に注力可能となった」という意見があがった。

指導案は、5時間目の「お作法の学習」を深化させて「具体例から学ぶポスターの改善の視点」と「ポスター改善のワークショップ」になり、計8時間の最終形として「Adobe Education Exchange」で公開されている。

「伝わりやすい研究発表ポスターをつくろう」

アドビは、「高等学校のハイレベルな探究学習の活発化に伴い、研究内容や成果そのものに加え、わかりやすく伝えるスキル、それを支えるクリエイティブツールを使う力が今後ますます重要だ。体系立てて学習できるカリキュラムを植村教諭らと共同制作し、広く展開することで全国の教育機関の指導で役立てていただけることを目指した」という。

『自由な創造性発揮の場と学びのためのPC整備がもたらす発信力・問題解決能力の育成』
東京都立三鷹中等教育学校 能城茂雄 主幹教諭

東京都立三鷹中等教育学校 情報科 能城茂雄 主幹教諭

◆文房具のように利用されるパソコンには適切な性能が必要
東京都立三鷹中等教育学校は、2016年からの4年間、東京都教育委員会指定のICTパイロット校として1人1台の端末を整備し主体的・能動的な学習による教育効果を検証した。

当初は、破損を懸念し性能よりも防水や防塵といった堅牢性を重視して機器選定を行なった。しかし実証研究を進める中で、生徒が常時文房具のようにパソコンを使用するにはストレスのない十分な性能が必要だという事実に気づかされたと、情報科 能城主幹教諭は振り返る。そこで2018、2019年度の新入生には、CPUやストレージの性能が大幅にアップし、教諭ら大人が使用しているものと遜色のない使用感の機種を選定する。すると、辞書、参考資料を調べるなど様々に自然と使うようになり、生徒のパソコン利用率が大幅に向上したのだ。

CPU性能・メモリ容量・ストレージ速度の不足、小さな画面、不安定で遅いネットワークでは、日常的に使う道具としては不十分。実社会で使われるように快適で本格的な仕様であるべきだと力をこめる。Society5.0に向けた学習方法研究校となった2020年度も文房具のように生徒たちがストレスなく利用できる、適切な性能のパソコンを配備しているという。

◆生徒1人1台配備の結果、コンピュータ教室の活用に変化
GIGAスクール構想に先駆けて1人1台のパソコンを導入してきた2016年からの5年間で、変化があったと能城主幹教諭。コンピュータ教室の取り合いがなくなり、生徒の学びは、時間と場所の制約から解放された。結果としてコンピュータ教室を部活動やさまざまな用途で利用できるようになったのだ。

コンピュータ教室には、生徒が持ち運ぶ端末よりはるかに高性能なデスクトップ型のパソコン、大きなモニター、ファイルサーバー、NAS、高速なネットワークを配備しており、文化祭の準備、クラスでの共同作業、部活動など主体的な活用が増加したのだ。生徒が自由に使えるように、学校が開いている間はコンピュータ教室を開放する能城主幹教諭は、生徒の自由な創造性をのばすためにはそれを支える環境が重要だと語る。

◆理想としてのメディアラボ、アドビ、インテルと連携し開設
アドビ、インテルと連携して、動画制作ソフトなどのクリエイティブツールにも対応可能な機器を備え、生徒の創造性の育成と発揮を支える場所となることを目的とした「メディアラボ」をコンピュータ教室内に開設した。高性能なCPU、グラフィックボード、4Kモニター、Adobe Creative Cloudユーザー指定ライセンスも導入されている。

「目指せ!動画クリエイター3日間集中講座」を開講したところ、休日にもかかわらず数十名もの生徒が集まった。参加した生徒からは、「プロが使っているハイスペックのパソコンを使って制作したい」という意欲的な声が寄せられた。日常的に動画などのメディアに触れている生徒らは作りたい対象や意欲はあっても、それを具現化する手段がなかった。

メディアラボは、生徒らの自由な発想、自主的な創造を育む場所だ。CMやミュージックビデオのような動画など生徒の創造性を発揮した作品が活発に制作されている。能城主幹教諭は、指導は最初の基礎だけで、あとは生徒が自主的に活動していると繰り返した。

快適な性能の1人1台のパソコンは、場所や時間を選ばない個別最適化した学びに欠かせない。そしてパソコン教室は、時代のニーズにあうよう本格的なものにアップデートして生徒の創造性を刺激し、自由な発想を具現化できるクリエイティブツールが使える環境に整える必要があるのだろう。

関連URL

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アドビ、高校の教育ICT化推進のための実証研究を都立校で開始

東京都高等学校情報教育研究会

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