2021年8月26日
未来を切り拓き新たな価値を創造する力を育む高等教育を考える/Adobe Education Forum Online 2021
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8月10日〜12日、『Adobe Education Forum Online 2021』が開催された。『新しい価値を創造する力を育む 大学・専門学校教育 ~ Consumer から Creator へ ~』と銘打ち、著しいテクノロジーの進化で大きく変貌する社会で、学生らが未来を切り拓き新たな価値を創造するために必要な教育を考えるイベントである。3日間で全11講演が配信された中で、「就職活動・若手社会人に必要なクリエイティブスキルに関する調査」の報告を中心に、「新しい価値を創造する力を育む」に関連した講演を紹介する。
就職活動・若手社会人に必要なクリエイティブスキルに関する調査
~学校で学びたかったスキルとは~調査 ご報告
DAY1のテーマは「時代を切り拓く創造的問題解決能力」。アドビ教育市場部高等教育担当の江口美菜子氏による「就職活動・若手社会人に必要なクリエイティブスキルに関する調査」の報告ではデジタルリテラシーの重要性が調査結果から明らかになった。アドビが6月に400名の就職活動中・就職活動後の学生や入社3年目までの若手社会人を対象に実施したもので、就職活動中や就職後のキャリアにおいて『創造的問題解決能力』が、どのように、そしてどの程度、重要視されているのか分析解明することを目的としている。
『創造的問題解決能力』とは、創造性に富んだ革新的な方法、つまりクリエイティブに問題や課題に取り組む手法と江口氏は解説する。新しい角度から課題を見直して、一見関係がないように思える事実やアイデアの点と点をつなぎ合わせて発想することで、従来にはない解決策を見つけ出す一連のプロセスだ。具体的には、1.『課題発見能力』、 2.『課題解決方法の発想力/着想力』、3.『情報分析能力』、 4.『デジタルリテラシー(ITツールを使いこなせる能力)』、 5.『クリエイティビティ/創造性』、 6.『プレゼンテーションスキル』という6つのスキル構成で定義する。
社会における『クリエイティビティ/創造性』の重要性
6つのスキルの中で、学生や若手社会人の7割超が『クリエイティビティ/創造性』が社会で活躍する上で重要であり、就職活動や就職後のキャリアにおいて強みになると回答している。
具体的に重要視されるスキルは、『課題発見能力』、 『課題解決方法の発想力/着想力』、『情報分析能力』が上位を占めた。
注目したいのは、今後さらに重要度が上がるスキルに対する学生・若手社会人の回答だ。解決策のアイデアや成果をアウトプットするために『デジタルリテラシー』、『クリエイティビティ/創造性』、 『プレゼンテーションスキル』が欠かせないと強く感じるという結果が出た。
・『デジタルリテラシー』ではクリエイティブツールのスキル重視に注目
『デジタルリテラシー』で重視されているスキル1位は「基本的なオフィスソフトが使えること」だ。これは使えて当然の前提条件ということ。一方で「イラスト制作や加工」「印刷物制作」といったクリエイティブツールを使いこなせるスキルを1/3が必要と回答している点に注目する。これら制作においてはデザイナーの力は必須であるが、過去の成果物の再利用時など目的によって現場の実務担当者が多少の動画編集や画像の手直しを行える、内製化ニーズの現れだと江口氏は分析結果を語る。
・アウトプットすることが大前提の実務、クリエイティブツールのスキルが役立つ
具体的な『デジタルリテラシー』の活用シーンとして学生・若手社会人から語られたのは、提案や成果報告を他者に伝え説得し理解を得る場面だ。実務ではアウトプットすることが大前提であり、その現実感がクリエイティブツールのスキルを重視する回答結果につながっているのだろう。
・『デジタルリテラシー』が社会で活躍するためのスタートポイントになるのでは
クリエイティブツールが専門や業種を問わず、ひろく求められるスキル、前提スキルとなる兆候を見てとり、『デジタルリテラシー』が社会で活躍するためのスタートポイントになり得るのではないか、と江口氏は今後の可能性について語った。
大半の学生が一般教養の授業の中でクリエイティブスキル習得を希望する
大半の学生が一般教養や専門授業において、個人のPC端末を使ってクリエイティブスキルを習得したいと希望し、就職前の学生時代がスキルを身につけるチャンスであると実感していることも調査から判った。クリエイティブスキルは、それ自体を習得するために学ぶのではなく、伝えたい成果やアイデアを表現する手段だ。授業の中でアウトプットを表現するために文房具のように身近に使うことで自然と実践的なスキルが身につくという。
クリエイティブツールを活用する現役学生の声
続いて現役大学生2名がオンラインで登壇した。
・学生のうちにクリエイティブツールを道具として使って表現力を拡げる
國學院大学経済学部経営学科3年の羽賀さんは映像制作を中心にメディアツールを活用し、シニア向けの映像サービスで起業するなど多岐にわたって活躍中だ。
羽賀さんは、社会で求められるスキルは、提案する力、伝える力だと語った。大学のPR動画の制作を担った時には、相手の求めていることを汲み取るために聞く力をつけることも学んだという。「提案する力」とは、相手のニーズを把握しアイデアを膨らませてわかりやすく伝えるために創意工夫できる力だ。
羽賀さんが手がけるビジネスでも、相手の要求は大まかなイメージであることが多い。より良い提案のために試行錯誤し、目に見えるものにできるのがクリエイティブツールの役割だという。また、学生のうちにクリエイティブツールを使うことで表現の幅が大きく広がると語った。道具としてクリエイティブツールを活用しアイデアを膨らませていく。表現したいことが無いという学生も多い中、まずは感じたことを表現することが大切だと繰り返し訴えた。
・正解のない問いへ挑戦し、チームの成功のためにクリエイティブな活動を
東洋大学総合情報学部総合情報学科メディア文化コース3年の重野さんは、授業で動画編集や映像制作を行ない、オンライン文化祭ではクリエイティブツールを活用したフライヤー制作なども実施、動画制作が趣味だという。
社会ではコミュニケーション力とリーダーシップ力が求められると語る。学生は個人の成果を求められることが多いが、社会ではチームとしての成果、成功を求められるためコミュニケーション力が重要だからだ。学生より一層の主体性が求められる社会人にとってはリーダーシップも大切だと語った。これらの力はすぐに身につくわけではないので学生時代にクリエイティブ活動を通じて習得する必要があるのだと力を込める。
動画演習のグループワークでは、与えられた課題に対して価値観の異なる複数メンバーの意見を調整し進める中でコミュニケーション力やリーダーシップ力が鍛えられた、と振り返る。オンライン文化祭では複数メンバーのイメージを言語化し集約して正解がない中で1つのイメージを作り上げるためにクリエイティブツールを活用した。
学生のうちに、正解のない問いを自分で考えて挑戦し続ける姿勢を身につける必要性を訴える。失敗を恐れずにクリエイティブな活動に挑戦し試行錯誤し創造的問題解決力を身につけるのだという。
次世代のコンテンツ・ライティングスキル デジタルの物語を創るアドビとの取り組み
DAY2のテーマは、「アイデアに形を与えるデジタルリテラシー」。韓国延世大学 金炯秀(キム・ヒョンス)教授の「次世代のコンテンツ・ライティングスキル デジタルの物語を創るアドビとの取り組み」で始まった。
キム・ヒョンス教授がセンター長をつとめる延世デジタルエクスペリエンスセンターでは
アドビのツールを使ったクリエイティブなデジタルリテラシー教育を行なう。大学の正規の教養科目としてコンテンツ・ライティングスキルを学べる。
デジタルツールは「コンテンツ」があってこそ必要なもの。アドビのツールが優れていてもそれ自体を学ぶことは意味をなさない。重要なのは“withコンテンツ“、“forコンテンツ“を意識することだ、とキム・ヒョンス教授は語る。アドビとのパートナーシップのもと、多岐にわたる高度な学びを提供する。学生らの作品を伝統的な建造物に投影するプロジェクトなど、教室外でも教養の幅を広げている。絶えず発展するデジタルストーリーの中でアドビのツールを使いクリエイティブなアイデアを形にしていくことが非常によいアプローチだと締めくくった。
社会問題を解決するためのクリエイティビティ
~学生の強みを活かして地域の産業活性化を支援~
関西大学外国語学部 井上 典子教授からは、ゼミの学生らが堺市観光部と連携し「外国人観光客が本当に求める観光パンフレット」を制作する取り組みが紹介された。
学生の視点とアイデアを組み入れ、進化するデジタルツールを活用して、パンフレットや動画コンテンツを制作し地域の課題を解決する。2019年度のプロジェクトリーダーを務めた卒業生 小島さんからは1年間の活動で論理的思考力、課題解決力、タスク・スケジュールマネジメント力、デジタルツール活用スキルを磨くことができ、これらが就職後に社会人として活躍する中で生きていることが語られた。また、同じく卒業生の北山さんからは、自身のアイデアを実現する手段としてクリエイティブツールが有益であり、制作活動を通じて創造力や実行力を養うことができると語られた。
井上教授は、学生らが社会人と連携する意義の大きさ、そして限られた時間に品質の高い成果物を仕上げる困難を経て、無意識のうちに、創造性や英語力、コミュニケーション力、主体性といった多くのソフトスキルを得られることを語った。
高等学校でのデジタルリテラシー教育
~Society 5.0に向けた教育改革の現状~
神奈川大学附属中・高等学校 小林 道夫 副校長からは、デジタルリテラシー教育の取り組みが紹介された。
同校では1989年情報教育がスタートし、1994年にはPhotoshopなどアドビツールが活用され始める。全校1人1台の端末でICTを活用し主体的で深い学びを展開。学力向上はもちろん、Society 5.0における創造社会で活躍できる人材を育成する。アドビツールとして、Photoshop、Illustrator、Premiere Pro、Dreamweaverを活用。探究学習の中でもこれらのデジタルスキルをいかす。小林副校長は最後に、デジタルネイティブの子どもたちは、考え方や、学び方、ICTスキルが異なるため、ICT教育を通して学生1人ひとりのアウトプット能力を発揮できる高等教育へと改革する重要性を語った。
調査結果の通り、就職活動中の学生や、若手社会人は、社会に入ってからのクリエイティビティやデジタルリテラシーの重要性を実感している。一方、学生にこのような機会を与えている、DAY2で紹介されたような高等教育機関はまだまだ少ないのではないか。次世代を担う子どもたちにとって、ほかの文房具と同じように学生時代にクリエイティブツールに触れ、自分の考えをアウトプットする練習を積んでおくことが必要だ。
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