2017年7月3日
全国から先生大集合、立命館守山の「ICT公開授業with Classi」
全国から先生大集合、立命館守山の「ICT公開授業with Classi」
~教育制度改革の波の中、関心集めるICTとClassi~
6月24日、滋賀県守山市の立命館守山中学校・高等学校で、『ICT公開授業with Classi』が開催された。テーマは『ICTを活用した協働学習と個に迫る未来型授業の創造を目指して』だ。
センター試験廃止を伴う新・大学入試制度導入にも見られるように、知識量だけでなくその応用や発想、主体的な学びの姿勢を重視する体制へシフトし始めた我が国の教育。少し前まで聞き慣れなかった“アクティブ・ラーニング”“PBL”というキーワードもすでに一般化しつつある。
それらの教育を展開する上でICTの利便性に注目する動きが強まる中、教員の授業・公務や生徒の学習支援を行うクラウドサービスとして生まれたのがClassiだ。生徒の理解度・習熟度に応じた出題ができる『Webテスト』や、教材の配信、生徒個々の学習進捗などの情報を一元管理できる『生徒カルテ』などを搭載し、教員・生徒・保護者の連絡網など、コミュニケーションツールとしても運用できる。教育改革や「個」への対応の中で起こる授業・校務の煩雑化を大幅に軽減できるとして、全国1800以上もの教育現場に導入されている。
立命館守山はそのうちの1校。アダプティブラーニング(生徒個々に応じた学習内容を提供する仕組み)を重視し、積極的なICT活用で多くの実践事例を持つ先進校だ。この日は、そんな同校の事例を見学できる公開授業や分科会が行われ、北は青森から南は佐賀まで、全国から200名を超す教員・関係者らが訪れるなど盛況を博した。
“やってみたかった授業”の事例の数々に勇気をもらう
午前中は、2コマにわたって述べ70以上もの授業が開講、参加者らは関心のある授業を自由に見学。例えば中学2年の国語の授業では、Classiのアンケート機能を使い、事前に「琵琶湖で世界遺産に相当するもの」を集約し、予習を経て「琵琶湖を世界遺産にする可能性」について授業内で討議。
中1の英語ではその場でネット検索しながら「海外で有名な日本のもの」について学んだ。同じく中1の社会では、世界各地の衣食住を事前に調べ、iPadを使用して「売り込む」視点でプレゼン、どの発表が最も「買いたくなる」かを競った。
また、理科の実験では自ら動画を撮影しながら検証するなど、ICTやClassiが持つ利便性を有効的に活用した授業を次々と展開。大阪府から参加したという若手教員は「やりたいと思いつつも、準備や授業時間の制約から諦めていた授業が実際に行われているのを見て勇気をもらった。ぜひ自校でも活用したい」と語っていた。
常に課題となる、現場の合意形成
午後からは分科会形式で、同校や全国の事例発表を開催。中でも多くの聴講者であふれていたのが、東北学院中学・高等学校(宮城県)の発表と質疑応答だ。
聴講者が抱く問題意識は、やはり「校内外のICT反対派からいかに同意を得るか」のようで、質問の多くがそこに集中。同校によると重要なのは「イノベーター理論」だという。イノベーター理論とは、商品購入動機などを元に「新しいもの」に関する人間の興味関心を5段階で分類したもの。同理論に基づき、3段階目にあたる“平均より早くに新しいものを取り入れる層(アーリーマジョリティ)”をいかに巻き込むかが重要だと語った。
1・2段階目にあたる「周囲の大多数がそれを取り入れていることを確認してから動くタイプ(フォロワーズ)」や、「最も保守的な層(ラガード)」に働きかけるのは効率が悪く、優先順位は低いという。
ICT導入に関する勉強会も「研修」などと称さない。教員らに義務感を生じさせ、忌避する傾向が見られるためだ。自由開催・自由参加で実施し、アーリーマジョリティを増やしていくことに務めた。総員合意を重視しがちな学校組織において、この発想こそICT導入にスピード感をもたらすポイントであるようだ。
ほか、「ICTを導入することありき」の啓発は拒否感が強くなる、と警鐘を鳴らすのは大阪府立東百舌鳥高校の福島洋平教諭ら。同校では最初に「進学実績の向上」という大命題と、そのための課題である家庭学習時間の増加を目標に設定。必要な教育活動を共有しながら、その簡略化や効率化を提起し、手段としてのICTを提案したという。Classi導入前から導入後の流れを時系列で示し、タイミングごとに起こり得る課題をその場で聴講者とシェアする参加型ワークも行われた。
不易と流行を見誤ることなく、ただ目の前の子どもたちのために
会場となった立命館守山は開校10年。寺田校長は挨拶に立ち、AL・PBLの勃興をふまえつつ「この10年の間にも教育や社会を取り巻く環境は激しく変化した」と述べ、続けて学校改革の要諦をこう語る。
「先行きの見えない社会で、それに対応すべく新しい教育概念も次々と生まれている。しかし、大事にすべきは不易流行だ。その目新しさのみに惹かれ、流行を追っているようではいけない。なぜICTを導入するのか(=目的)、どんな方法で行うのか(=手段)、そしてどう効果測定するのか(評価)を忘れないようにしなくては」
同校がICT教育に取り組み初めて5年、うまくいったことばかりではないそうだ。そうした失敗や苦労もふまえて、この会を参加者らの糧として欲しいと語った。
同じく挨拶の壇上に立ったClassiの加藤理啓氏は、ソフトバンク出身。ベネッセと合弁でClassiを設立した際、代表取締役副社長に就任した。IT畑を歩んできた同氏だが、実は代々教育者の家系に生まれたという。身近に常に“教育”があったことも影響したのか、教育そのものへの想いは強い。「学校教育のパラダイムシフトは加速していているが、ICTはあくまで道具だ」(加藤氏)という言葉を裏付けるかのように、同社が掲げる理念「子どもの無限の可能性を解き放ち、学びの形を進化させる」には、どこにも「テクノロジー」「ICT」という言葉は出てこないのが印象的だ。
主催者、参加者側とも多くの交流と情報交換がなされ、有意義な1日となったこの日の公開授業。Classiを活用しての勉強会は、次回、ベネッセ主催で7月8日(土)、大阪(梅田)で開催の予定。
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