2018年8月8日
相模原市、2学期に市内全校の5年生でプログラミング授業実施のための講習会
神奈川県相模原市教育委員会は7月31日~8月2日の3日間、市内全小学校72校が5年生の算数でプログラミングの授業を2学期に一斉に実施するのに備え、5年生担任教師向けの研修会を開催した。3日間で6回行われた講習会には、各校1名の代表など合計90名以上の教師が参加した。
講習会の冒頭、講師を務めた相模原市教育委員会の渡邊茂一 指導主事が「みなさんの中に、授業でプログラミングを使ったこのある人はいますか」と問うと、誰一人手が上がらないというプログラミング授業初心者の先生たち。ゼロからのスタートである。
渡邊さんの講義は「プログラミングってなんだろう」から始まった。「この部屋の中にあるものでコンピュータが使われているのはありますか。パソコンはもちろん、エアコン、複合機、電子黒板、レゴのWeDo2.0にもちろんコンピュータが使われています。では、蛍光灯はどうでしょうか」と、コンピュータがどんな働きをするのか想像させる。すべてのコンピュータは、「プログラム」という命令によって働いている。そして、プログラムを作ることを「プログラミング」というというところから解説。「蛍光灯は、オンオフしかないからコンピュータは入っていません」とまとめる。
「まずは体験しよう!」では、ビジュアルプログラミング言語のScratch(スクラッチ)を使い、ドラゴンの吐き出す炎をかわすプログラミングに挑戦。左右の動きで炎がかわせるようになったら次は「雷の魔法でドラゴンを攻撃」。スクラッチのブロックを使ったプログラミングに慣れる。
そして、昨年から4年生で行っている「およそ12㎝のえんぴつは、何㎝から何㎝の長さでしょうか」のプログラミングを体験する。「どんな数字を入れても、小数点以下を四捨五入してくれるプログラムをつくり、およそ12㎝のはんいをもとめましょう」というもの。「なるほど」と参加者が納得したところで、「では、プログラミング的思考とはどういうものでしょうか」と渡邊さんの講義が進む。
ここでは、プログラミングとはコンピュータを目的通りの動作をさせるために手順を論理的に考えることだったり、「順次」「分岐」「反復」の3つの構造の組み合わせで出来ていることなどを紹介。「プログラミング的思考」が、自分が意図する一連の活動を実現するためにどのような動きの組み合わせが必要であり、ひとつひとつの動きに反応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した動きに近づくのか、といったことを論理的に考えていく力と定義した。
そして、プログラミング教育のねらいを、学習指導要領に記載されている資質・能力の三つの柱、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力」、「学びに向かう力、人間性等」に沿って各教科で探りましょうと、6年生の理科や5年生の社会での事例を紹介した。
そしていよいよ、2学期に市内全校で実施する5年生算数の単元「数の性質を調べよう」の授業で使う、「どんな数字でも、あたりかはずれか教えてくれるプログラミングをつくりましょう」を体験する。ここでいう「あたり」と「はずれ」とは、偶数と奇数のこと。
本時の授業は、指導時数11時間の1時目にあたるもので、「奇数」と「偶数」の用語と意味を知るのがめあて。
まずは、Webからスクラッチを立ち上げて、プログラミングのブロックを組み合わせて「もし○○なら→あたり、もし○○でなければ→はずれ」というプログラミングを、ヒントとして提示されているフローチャートの空欄を確認しながら作成していく。
指導案のオプションとして、2時目、3時目で使用できる「どんな数でも偶数(奇数)にしてしまうプログラム」や「3の倍数か調べるプログラム」にも挑戦する。このあたりまで進むと、ノーヒントでもプログラムできる先生となかなか上手くいかない先生が現れ、子どもたちの授業同様、「学び合い、教え合い」が自然に発生して、教室の授業と同様の雰囲気になり始めた。
相模原市のプログラミング教育を紹介する記事で必ず枕詞に使っているのが「ICT環境整備が進まない相模原市」である。確かに1人1台情報端末も全教室Wi-Fi環境も遅れている。しかし、「無いから出来ない」ではなく「有るものを有効に使う」「足りないものは作り出す」という姿勢で着実に進化を続けている
今回の講習会でも、単元の指導計画書や本時の指導案の作成、体験ワークシトや市オリジナルのプログラミング手引きも作成したという。
また、今回の講習会には学校現場で教師のサポートを行っているICT指導員もオブザーバーとして参加。指導案の共有化を図り、プログラミング授業を成功させようという強い意欲を感じさせた。
今回の講習会は「プログラミング教育をどう進めて良いか分からないでいる自治体や教育関係者のため」という目的もあり、市外からの参観希望も受け入れていた。2学期には、公開授業も予定しているということなので、プログラミング教育の取り組みが遅れている自治体や関係者は、是非参加して参考にしてもらいたい。
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