2019年2月20日
東工大×リコー×産業総研、超省エネで小型の原子時計を開発
東京工業大学・リコー・産業技術総合研究所の3団体で構成する研究グループは19日、消費電力が極めて低い小型原子時計(ULPAC: Ultra-Low-Power Atomic Clock)を開発したと発表した。
この小型原子時計(内寸33 mm×38 mm×9 mm)は、構成部品のひとつである周波数シンサイザの消費電力を大幅に削減し、さらに新たな量子部パッケージを用いることで温度制御の効率を向上させ、60 mW という低消費電力と15㎤という極小サイズを実現した。
消費電力を大幅に削減しながらも、大型の原子時計とほぼ同等の1日で300万分の1秒以下の精度を達成。
電圧制御水晶発振器、周波数シンセサイザ、レーザーのドライバ回路、制御回路、セシウム133原子へのレーザー光照射を行う量子部パッケージで構成しているが、周波数シンセサイザをCMO集積回路で作りこむことで、消費電力を25分の1以下まで削減することに成功、2 mWの消費電力を達成した。
さらに、新たな量子部パッケージの構造を採用し、ヒーターによる温度制御の際に、外部の温度が伝わりにくくなるような隔離機構を設けるとともに、パッケージ内部を金でコーティング。温度制御の効率を向上させることで、電力を消費しがちなヒーターの消費電力を9 mWまで削減した。
小型で消費電力も小さいため、これまで搭載が難しかった自動車やスマホ、小型衛星など、様々な機器に搭載できるようになり、自動運転、高精度な測位、新たな衛星ネットワークの実現を大きく加速させる可能性がある。
この小型原子時計は、米国サンフランシスコで開催される国際会議 ISSCC(国際固体素子回路会議2019)で、現地時間2月20日午後3時15分に発表される予定。また、5年後を目途に販売開始を目指す。
問い合わせ先
東工大工学院電気電子系准教授・ 岡田健一
E-mail: okada@ee. e.titech.ac.jp
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