2019年7月25日
タイピングスキルの強化が必要と感じているのになぜ取り組めないのか?
【寄稿】特定非営利活動法人パソコンの九九推進協会 代表 佐築 勇
タイピングスキルの強化が必要と感じているのになぜ取り組めないのか?
最初に結論を申し上げますが、我が国にはこれまで小学校でタイピングを教習するためのスタンダードモデルのカリキュラムが存在しないことに起因すると考えます。
その内容は
①効率良く流れに沿ったタイピングを学ぶためのカリキュラムがない。
②ブラインドでキーを打つための効果的なノウハウがない。
従って、2017年に文部科学省省より新小学校学習指導要領が公布されたにも関わらず2019年に至っても、世の中はこぞって手を付けやすいビジュアル系のプログラミング教習に向かい、技能講習が伴うタッチタイピングなどやっかいな教習には誰も手を付けないと言う状態が続いているのではないかと考えます。
我が国ではローマ字を習う3年生頃から、ローマ字入力でタイピングを教えるよう文科省も指導されています。3年生頃からスタートしなければ小学校を卒業するまでにタッチタイピングなど高速タイピング技能の習得は無理なのでは、とのお考えがベースになっての方針かと思われます。
しかし、タッチタイピング技能を教えるのは5~6年生の高学年からでも習得は充分可能と考えます。なぜなら、1日1時間の教習を6回、即ち6日間ほどで10本の指を使い手元を見ないで、漢字カナ混じり文や英文を打つことが出来るカリキュラムは存在するからです。
このカリキュラムを使い、高学年で教えれば3級程度(10分間に漢字カナ混じり文400文字程度)の実力を付けさせることが出来ます。
この講習は、最近流行らない「護送船団方式」で、なおかつアプリでの講習ではなくインストラクターによる「対面講習」です。短期間で一度に多数の児童に対し、技能習得を行うには対面講習が欠かせません。また、外部メンターの力を借りることは、先生方の負担を軽減させることにもなります。しかも、NPOの講習は教材も含め全て無料です。
ただし、この6日間の講習は基礎技能講習であり、まだ高速入力は出来ません。その代わり、教習修了後には手元を見ないで日本文や英文を入力することが出来るようになります。この後は、先生による正規の授業の中で文章を打つ練習をさせ上達度を把握するとか、生徒自身が数多くのネットアプリを使ってタッチタイピング技能の腕を磨くことも出来ます。
入学時から4年生または5年生までの間は、将来のため文字入力を覚えなくてはと言ったストレスもなく、ビジュアル系のプログラミング教育などに力を入れることができます。
3級以上程度の高速タッチタイピング技能を身に付けた小学生が、プログラム言語を使った本格的プログラミング教習が始まる中学校へ進学することは、小学生本人にとっても受け入れ側の中学校にとっても、強烈なインパクトと可能性を秘めたものになるに違いありません。
“パソコンの九九”式タッチタイピング教習法
<カリキュラム> 条件:qwerty配列型キーボードによるローマ字入力
1日目 Step 1 アルファベットを打つ
2日目 Step 2 ひらがな(清音)を打つ
3日目 Step 2-1 アルファベットとひらがなの復習
4日目 Step 3 濁音・半濁音・拗音(ようおん)を打つ
5日目 Step 3-1 促音(そくおん)・拗音・濁音などの単語入力
6日目 Step 4 文章を打つ
ポイントは2つ、
1.アルファベットは「ABC順」に、ひらがなは「a i u e o 順」に打ちます。
これは流れに沿った教習法で、覚えやすいカリキュラムです。このカリキュラムは、執筆家の内藤忍先生著「10日間でOKワープロタイピング習得法」を先生の“非営利活動なら”とのお許しを得て4Stepに編集したものです。
これを放課後や長期休暇を利用して、1コマ1時間×6Step=6日間で教習します。
2.全くの初心者であっても最初からキーボードの文字キーは見せません。
その代わり「マスキングテーブル」*1をキーボード上に置き、その上にキーボード図を載せこの図を見ながら手探りで打たせます。勿論、文字キーは見えないので、ホームポジション*2を外すと迷子になってしまいます。
一般的に、小指が使えないとか、同じ指で他のキーを打ってしまうとかのクセは、このホームポジションの管理が不正確のため起こります。26コの文字キーは一個一個どの指が打つのかは決まっています。打ったら必ず指をホームポジションに戻す「対面講習」ならではの訓練を実施します。
マスキングテーブルは、カリキュラムのStep1とStep2で使用します。
*1:マスキングテーブルは、当NPO法人が考案したグッズです。タッチタイピングでは「文字キーは見ない」という鉄則を守るのが一番難しい。それを簡単に効率よく守らせるためのグッズです。
*2:ホームポジションとは、左手の人差し指が「F」中指が「D」薬指が「S」小指が「A」、右手の人差し指が「J」中指が「K」薬指が「L」小指が「+」。「F」と「J」のキーにはホームポジションを示す突起がある。(編集部注)
家庭でのタッチタイピング練習のヒント
同じクラスの中でも1分間に打てる文字数は生徒によって開きがあるようです。
①入力練習は、迷いなくローマ字入力です。携帯などがひらがなで打つので何となくひらがなで・・・、は後々プログラミングの勉強に役立ちません。キーボード入力ではひらがな入力は、百害あって一利なしです。また、練習は前述のカリキュラムにあるようにABC順、aiueo順で打ちます。
②やはり、最初から手元を見ないで打つ練習をしましょう。マスキングテーブルが無くても、子ども一人に教えるのですから、画用紙のようなものをキーボード上で手で持ち目隠しに使えば充分です。
③ホームポジションを厳格に守らせることが絶対です。必ず打っては帰り打っては帰り
を繰り返し練習します。
児童への教習で一番適さない人は誰か?それはお母さんです。つい「何で出来ないの!」の一言を口走っただけで後悔しても遅く講習は悲惨な結果になります。
忍耐あるのみです。
問い合わせ先
パソコンの九九推進協会
pasocon99@kvp.biglobe.ne.jp
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