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2020年7月17日

教員コミュニティMIEE Talks@Admin.による『ICT活用教育実践』 第2回オンライン授業

【寄稿】
第2回:山内佑輔先生 (新渡戸文化小学校) 専門教科:図画工作


「“plus Creation!” −オンライン授業で展開する教科横断の授業デザイン−」

はじめに

公立校で6年間図画工作専科教員を勤めた後、今年4月から東京・中野区にある新渡戸文化小学校に移りました。心弾ませて飛び込んだ新しい環境でしたが、まさかのコロナ禍。

4月から教職員一丸となってオンラインでの学習環境を整備していきました。“新渡戸オンラインスクール”というポータルサイトを立ち上げ、4月上旬にはZOOMを使った朝の会“新渡戸オンラインひろば”を開設。子どもたちの安心・安全、学校や先生との繋がりをつくってきました。4月下旬からは教科の学習をスタートさせました。
(※新渡戸文化小学校のオンラインの取り組みはこちら

教科の学習を始める際に、図画工作科におけるオンラインの学びはどのようにあるべきかを考えていました。本校は一人一台の学習端末を準備していたわけではなく、各家庭の端末を利用することで実施を可能にすることができました。そのためICT端末は各家庭によって違いがあり、アプリケーション等を利用したデジタルクリエイションも実施は難しい状況にありました。もちろんアナログな材料を各家庭で揃えてもらうには限界があります。様々な制約がある中で、どうしたら学習指導要領に明記されている「表現及び鑑賞の活動を通して,造形的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力」を育成することができるのか。

従来の授業をどうにかオンライン化して実践するのではなく、オンライン環境下における新しい形をつくる必要があると考えました。図画工作科のもつ「創る」という要素を各教科と組み合わせることで、子どもたちの興味関心を一層引き出し、より創造的な活動を展開できないだろうか。
「何かを創る中でより知識を深め更に学んで終わるのではなく、それを何かで表現する学びの時間をデザインする。」今回はそんなオンライン環境下における教科横断型の授業実践について紹介します。

Case1 | [国語×図工] 生きる・6年生

ZOOMをつかった朝の時間“オンラインひろば”を通じて、新しく生まれたオンラインの時空間を、1つ1つ対話を重ねてゼロからみんなで形づくっていきました。初回の授業は、国語×図工として「何もないところから見えてくる本当に大切な物」を、子どもたちと見つめる時間になるようにデザインしました。

<展開1|自分の「生きる」を探る・つくる>
子どもたちは、事前課題として、谷川俊太郎の「生きる」という詩を読み、自分にとって「生きていること…それは~」を1フレーズ考えてZOOMに参加。全体で朗読をした後、3つの部屋に分かれて、3名の教員のファシリテーションのもと、フレーズを重ねていきました。全体で再度集まり、各部屋の言葉を紹介しあいました。その後、みんなのフレーズをタネに再度ひとりでテーマについて考え、紙1枚に形式自由で表現する課題を課し、Google Classroomを通じて提出してもらいました。

<展開2|他者の「生きる」を感じ味わう>
「オンライン授業では、授業を受けながら違うこともできてしまう」対話から聞こえてきた子どもたちの声を拾い、「画面に気持ちを向けること」を、絵画鑑賞を通じて伝えられるよう設計。ミロの絵を題材に、漠然と眺めることと、ピントを合わせた見方の違いを体感する導入を行いました。見えたものや感じたことを互いに伝え合うことで、新しいものが見えてくることも体験してもらいました。その後、各々投稿された「生きる」の作品をまとめたショートフィルムを鑑賞。感想をGoogleClassroomに投稿しました。
ショートフィルム

子どもたちからの感想(抜粋)

Case2 | [国語×図工] 学びかもしれない 6年生

<展開1|「学びとは何か」の問いをたてる>
新しい学びの形としての「オンライン学習」に取り組む中で、そもそも「学び」とは一体何なのか。「学びって何?」から派生する様々な疑問を集めるところからスタート。

※オンラインホワイトボードサービスmiroを活用して「学びに対する問い」を共有。
写真:加藤万里奈(国語科)

ZOOM上でマインドマップを共有しながら対話をし、自分自身の「学びに対する問い」を選びました。

<展開2|リサーチする・自分なりの答えをつくる・表現する>
授業の中で友人や先生に、また各家庭で両親にインタビューをしながら、「学びに対する問い」に対して、自分なりの答えを探っていきます。自分の思考を深めるツールとしてGoogle JamBoardを利用しました。

その後、アウトプットの形として、「学びかもしれない。」というタイトルのデジタルブック制作を提案。1人1つ「学びって〜かもしれない」という自分なりの答えを言葉にし、表現することに挑戦しました。

使用したアプリケーションはGoogleスライド。色が与える印象について、様々な事例を紹介し、体感する授業を展開。自分の選ぶ言葉において、どんな色・字体を使えばより想いが伝わるのかを考えながら制作しました。

※作品の一例

Case3 | [国語×社会×算数×図工] 学びを社会に発信しよう! 5年生

国語の「環境問題を報告しよう」という単元から学びをスタート。子どもたちが家の中から持ってきたものから、自分が調べたいものを選び、Case2同様にjam boardを活用し、インターネットなどを活用しながら、調査したものをまとめました。社会でも環境問題単元を扱うことで、学びを広げ、深めました。

最後に、Stay homeから社会に発信できる手段としてSNSを考え、本校初代校長 新渡戸稲造先生の名前とかけた仮想SNS「inastagram(稲スタグラム)」をGoogleスライドで用意。子どもたちはテンプレートを使って、これまでに学んだ内容を整理して制作。100字以内でどう人を惹きつける?比較による「○倍」という表し方や、グラフに着目してみると?制作にあたって、国語や算数の視点も取り入れながら、写真・図+言葉で、想いを伝えることに挑戦しました。

※ZOOMでの授業の様子:5年生60人と教員4人でクロスカリキュラム授業に取り組む
写真:有馬真帆子(社会科)加藤千尋(国語科)廣瀬数寿(算数科)山内佑輔(図画工作科)


作品動画

おわりに

以上3つの教科横断実践例以外にも4年生で「平行」をあつかった算数×図工の授業実践や、ローマ字の学習後に、図工でアルファベットのサイン・キャラクターデザインに挑戦する3年生の図工の授業など、様々な学年・教科でチャレンジを続けています。

いずれの授業も自分ひとりで考え、実施したものではありません。複数の教員と何度もオンラインで打ち合わせを重ね、試行錯誤しながら授業をデザインしました。これからのWithコロナ時代に、私たちはいかに授業をアップデートさせていくのか。子どもたちがワクワクする、自らが学びたくなる、そんな姿をイメージしながら、これからもチームで挑戦をし続けていきたいと思っています。

《筆者プロディール》
山内 佑輔(やまうち ゆうすけ)
マイクロソフト認定教育イノベーター(Microsoft Innovative Educator Expert)/SOZO.Ed副代表/ワークショップデザイナー
キッズワークショップアワード優秀賞受賞。
『山と水と図工室』で東京新聞教育賞受賞。
Eテレ「デザインあ」(デッサンあ、まるとしかく)に出演。
美術手帖2019年2月号「みんなの美術教育」他、教育関係書籍に授業実践多数掲載。
MIEE Talks@Admin.メンバー

MIEE Talks@Admin.とは
テクノロジーを教育に活用する全国の教員による有志のコミュニティ。『大人も子どももワクワクする学びの創造』をモットーに、ワークショップやセミナーなどを精力的に行っている。

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