2020年9月28日
Monacaを活用した新入生対象「プログラミング入門」/北陸大学 鈴木大助准教授
~オンライン授業と教室授業の比較調査結果を発表~
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北陸大学 経済経営学部 鈴木大助准教授は、Web開発環境Monacaを活用した新入生対象科目「プログラミング入門」において2019年度の教室授業と2020年度のオンライン授業をアンケートならびに小テストで比較。オンライン授業は、教室授業と同等の学修促進が見られるのか、学修成果が得られるのか調査し「新入生を対象としたプログラミング入門科目におけるオンライン授業と教室授業の実践比較」を発表した。オンライン授業の進め方や学生の反応について話を聞いた。
新入生対象Monacaによる「プログラミング入門」、オンライン授業は手探りでスタート
鈴木准教授は、2019年の新設当初から新入生対象「プログラミング入門」を担当している。Monacaを利用したスマホアプリの開発を通じプログラミングに親しむことを目的とする全15コマの前期科目。Monacaの採用はスムーズに決まった。選定理由は「パソコンとスマホ、インターネットさえあればどこでも開発できる環境構築不要な利便性」「学生の興味を喚起できるスマホアプリを開発できる点」だ。
2019年度は教室授業だが、2020年度は新型コロナウィルス感染症流行拡大の影響でオンライン授業でのスタートとなる。全15コマのうち13コマがオンライン授業だ。顔を合わせたことのない新入生のクラス登録者は72名、高校でのプログラミング経験がある学生はわずかであった。オンライン授業で学習の成果が得られるのか、手探りでのスタートだったと振り返る。数回の授業を重ね、学生の反応に手応えを感じはじめたという。
アンケート結果:プログラミングは難しいが、面白いと感じる学生がオンラインに多い
2019年度と2020年度の学生らに、高校生までのパソコンの利用頻度、プログラミング経験、「プログラミング入門」科目の学習内容を難しいと感じるか5段階評価、面白いと感じるか5段階評価のアンケート調査を実施した。両年度ともに高校生までのパソコン利用頻度が低く、プログラミング経験の無い学生が大半と、もともとの経験の差は大きくない。「プログラミング入門」科目の学習内容について、難しいと感じる学生の割合は、2020年度が87.5%、2019年度は79.7%で、面白いと感じる学生の割合は2020年度が64.1%、2019年度は59.5%とやや差が見られた。
プログラミング学習は難しいと感じる一方で面白いとも感じる学生の割合がオンラインの方に多い。
この結果は、授業を通じた学習経験の違いが要因のひとつと鈴木准教授は指摘する。教室授業では、限られた時間ということで、正解のコードだけを仲間から教えてもらい理解しきれないままの課題提出も見られたが、オンラインの場合はじっくりと時間をかけて自身で考え試行錯誤しアプリを完成するまで取り組むことが可能であったという。よって難易度は上がるが、自分の力で完遂する経験ができプログラミングの楽しさを味わうことができたことが大きいのではないかと見立てる。
小テストの結果:オンラインは日ごろの学習内容を習得している一群の可能性
終盤の講義で、事前の予告なしにJavaScriptの基本文法に関する10問の小テストを実施した。各年の結果を比較すると、2019年度は、低めの得点にピークのある単峰性分布であったが、2020年度は、低い得点と高い得点の2つのピークがある二峰性分布となった。オンライン授業の高い得点のピークについて、日ごろの学習で内容を習得している学生の一群が存在すると指摘する。
学生らはオンライン授業の利点として「講義動画を何度でも見直せること」「自分のペースで十分な時間を確保してプログラミング演習課題に取り組めること」「周囲の目を気にせずに授業に集中できること」をあげている。
これらの意見もふまえ、オンライン授業は日々の地道な学びを促進し学修成果を向上させる可能性があると鈴木准教授は結論づける。
Monacaを利用したオンライン授業の進め方
「プログラミング入門」のカリキュラムは、概ねMonacaの公式教科書の流れに添って、HTML、CSS、JavaScriptの基本から始め、BMI計算アプリ、心理テストアプリ、おみくじアプリ、地図アプリなどMonacaのサンプルコードも活用する。
オンライン授業の3日前には鈴木准教授の制作するスライドと講義動画がLMSを通じて学生らに公開される。
学生らは7人ずつのグループに分かれ、マイクロソフトTeamsのプライベートチャネルというセクションに所属。演習時、学生らはこのプライベートチャネル内のチャットやビデオ会議を通じ、不明な点を教え合って自力解決を試みる。鈴木准教授と学生アシスタント2名は、全チャネルのやりとりを見守っていて必要な時にだけアドバイスのために介入する。教室授業では、声の大きい学生にサポートが偏りがちで3名が手一杯となる状況が多かった。一方、オンラインの場合は全グループに均等に目配りができ、効率良く効果的な助言ができたという。
慣れるまではライブ感を重視、スムーズなスタートで良いサイクルを生む
教室授業でつまずきやすい点はオンラインでもつまずくので、始めは先回りをして注意喚起し、スムーズなスタートを切ることがオンライン授業を軌道に載せるコツだと鈴木准教授。そういう観点においても環境構築の手間がなく教室でも自宅でも開発できるMonacaは有用だという。
面識のない新入生がオンライン授業に参加するとあって最初の6回まではリアルタイムで講義を行うなどライブ感を重視した。やがて学生が慣れてくると事前に公開される教材で自主的に学習し、授業では不明点を解決する反転学習の良いサイクルが生まれ始めたという。慣れるまでのライブ感とスムーズなスタート、そして軌道に乗ってからの反転学習による効果がポイントだ。今後、対面教室が増えても講義動画をオンデマンド化し、教室でもオンラインでも効果的に組み合わせていきたいと抱負を語る。
利点の多いオンライン授業だが、学生からは「チャットやビデオ会議で質問したい内容を適切に伝えるのが難しい。」という声が度々聞かれたという。教室授業なら曖昧でも伝わるが、オンラインでは適切に内容を説明しキャプチャで図示するといった質問力が要求されるからだ。必要に迫られ続ける間に相手に伝える力も徐々に鍛えられた、想定外の効果もあると鈴木准教授は笑顔を見せる。
使うだけだったアプリを自分で作れたことに感嘆
Monacaでアプリを完成した学生が、「これまで使うだけであったアプリを自分で作れるなんて信じられない。」と感嘆した。これまでプログラミング経験が無くアプリはブラックボックスであったのが、仕組みを理解し完成させた経験から出た印象的な言葉だ。身近なスマホアプリを自力で作るMonacaでの学習経験を経て「もっとプログラミングを学びたい」と意欲を見せる学生が増えたと手応えを語る。
鈴木准教授は、アプリをはじめ様々なものの仕組みに興味を持ち理解することが大切、その一歩がプログラミング学習、自分の頭でしっかり考える習慣を大切に将来どのような道に進むにしても必要な力をつけて活かしてほしいと学生を想う。
*1「新入生を対象としたプログラミング入門科目におけるオンライン授業と教室授業の実践比較」論文発表資料からの抜粋
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