2021年9月9日
使う側から作る側へ、対面でも自宅でも協働しながらMonacaでアプリ開発/関西学院千里国際中・高
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大阪府箕面市にある関西学院千里国際中等部・高等部は、帰国生徒・一般生徒・外国籍生徒が在籍する国際的で多様性に富んだ学校だ。同校では「Monaca Education」を活用したプログラミング授業を行っている。特殊な環境である同校ならではの授業展開やMonacaによる効果など、情報科主任の西出新也(にしで しんや)教諭に話しを伺った。
学期完結制・無学年制など柔軟性ある特殊な環境
関西学院千里国際中等部・高等部は、同じキャンパスに併設する関西学院大阪インターナショナルスクールとともに1991年に設立された。2校で教室や施設を全て共有し一体となって教育活動を行っているユニークな学校だ。キャンパスには30を越える国籍の生徒がおり、帰国した生徒の国を合わせると50を超える。
現在のICT環境は、中等部はChromebookを貸与(中学2、3年生はBYODも選択可)。 高等部は完全にBYODであり、そのうち6~7割がMacの使用者だという。Google Workspace for Educationを活用し、Google Classroomで学習管理を行っている。コロナ以前からICT環境は整っており、2020年春は1学期間を通してオンライン授業での対応ができた。同年2学期からは登校して対面授業になったが、2021年度はハイブリッド授業を常時実施。自宅からでも対面でも選択ができる状態になっている。
BYODとハイブリッド授業にフィットするMonaca
2021年度から高等部のプログラミング授業に「Monaca Education」を導入した。スマホアプリを作りながらプログラミングを学べる教材だ。アクションパズルゲーム「ぷよぷよ」のソースコードを使った学びもできる。
以前からプログラミングは行っていたが、同校では特殊な単位の組み方により、情報科だけで11科目あり、その中でプログラミングは比較的上位に展開されていた。そのため、卒業単位を満たしたうえでプログラミング経験者や強い興味を持つ生徒のみが追加履修している状況だったという。各自が開発できる言語で、自分の端末を使い、自分で調べて成果物を仕上げるというスタイルであり、グループで共同開発ができないという課題もあった。
2022年から実施の『情報Ⅰ』を見据えて今年からカリキュラムを再編し、履修者の裾野を広げるための授業を展開。学期完結制、自由選択制、無学年制の授業を週3回で12週間・36時間。「Monaca Education」を活用してプログラミング授業を行っている。
Monacaはブラウザだけで完結でき、動作が軽くてストレスがないことから、BYODとハイブリッド授業の環境に相性が良い。同校にとってそれが最大のメリットだと西出教諭は語る。単にコーディングを記述するのみではなく、実際に動かして成果を見ることができるのもMonacaの良さ。同校の課題だった、生徒が共同開発できることも大きなメリットだ。また、Monacaは生徒自ら学んでいける環境のため、教師は教室全体を見て回ることができるなど、西出教諭は様々な利便性を実感しているという。
「ぷよぷよ」を手始めに、個人の学びからグループでのアプリ開発へ
学期の始めに行った授業展開は、プログラミング経験が全くない生徒もいたため「ぷよぷよ」に触れることから始めた。まずは3時間ほど写経(記述されたソースコードを書き写す作業)。はじめは書き写すだけができなかったり、躓いたりする生徒もいたが、意味がわからなくても続けていくうちに正しく書かないと動作しないことなどに気づいていったという。その後は、12章ある公式テキストに沿って進め、動画を見ながらハンズオンの課題に取り組んだり、西出教諭がオリジナルで作成した演習問題の「Today’s Challenge!」に挑戦したりした。こうした個人の学びを経てグループでのアプリ開発に移っていった。
同校の授業は異学年が混在しており、はじめはおとなしい生徒もいることから、プログラミング授業では毎回くじ引きでランダムにグループ分けをして、馴染みのない生徒同士でも話しやすい雰囲気づくりと、一人で抱え込まない環境づくりを工夫したという。
アプリ開発の際は1グループ3~4人で、身の回りの課題解決をテーマに、企画・デザイン・設計・プレゼンテーションまで約1カ月をかけて取り組んだ。生徒たちはハイブリッド授業でのコミュニケーションも柔軟に対応できたようだ。
わからないことを先生にいきなり聞くのではなく、基本的に自分たちで調べる姿勢を大切にしたという。開発を終え、完成した作品は、天気APIを組み込んだ天気予報のアプリ、複雑だという同校の時間割を自分で組むための履修登録練習アプリ、空き教室や帰りのバスの時刻を検索できるアプリ、ToDoリストアプリなど。実際に身近で役立つアイディアが盛り込まれたアプリが誕生した。
概念を掴むことが動くものの仕組みを知る力になる
以前はシステムエンジニアだったという西出教諭。プログラミングを通じて生徒に最も身に付けてほしいことは、アプリやシステムそのものの「概念を掴むこと」だという。プログラミングは実体がないもの。それを概念として理解できたら世の中で便利に動いているものの仕組みがわかってくる。そうすれば、将来、開発を直接するのではなくても、開発の指示ができたり、物事を創り出したりする思考ができるだろうと語る。
Monacaを活用したことによる一番の収穫は、生徒自身がバックエンドの世界に気づいてくれたこと。授業で作っているのはフロントの部分ではあるが、その奥にあるデータベースの世界に概念が辿り着いたことは、生徒にとって大きな進歩であり手応えを感じたという。現代はシステムが欠かせない時代。授業のはじめには「使う側から作る側への視点を持つ発想や思考法を学ぼう」と伝えているという。
ハイブリッド授業でも円滑な授業ができた理由
コロナの影響により生徒は対面だったり自宅だったり、授業の参加スタイルは頻繁に変わる。場合によっては、グループのうち対面の生徒は1人だけで残り3人は自宅からといったこともある。しかし、こうしたハイブリッド授業でもグループ活動に大きな支障はなかったという。Monacaはクラウド環境のためどこでも使えることや、クラウド上で共同開発も手軽に行えるので、生徒同士コミュニケーションを図りながら制作を進めることができる。動画教材も充実しておりオンラインでの活用ができて生徒にも先生にも有益だ。いつもと変わらない学びを可能にできることもMonacaならではの優位性と言える。
これからは中学技術科との接続も課題の一つ。高等部との学びにギャップが出ないよう配慮したいという。また、西出教諭はAdobe Education Leaderでもあり、今後はプロトタイプが作成できるAdobe XDを活用した企画段階の試作品に力を入れてみたいと抱負を語る。生徒が自分たちの思い描いたアプリのプロトタイピングを通して、実際に何ができて、何ができないのか、その理解に役立てたいという。もちろん、バックエンドにも着手していきたいと意欲的。Monacaを推進力にプログラミング学習を深めていく考えだ。
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