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2021年9月14日

ICTで学びを保障する“合理的配慮”シリーズ第14回 通常学級に在籍する子どもへの具体的な配慮 後編

ICTで学びを保障する“合理的配慮”シリーズ第14回
通常学級に在籍する学習に困難のある子ども達に対する授業での具体的な配慮。アナログからICTまで−(後編)


前回は、読み書きの困難への配慮についてお話ししました。学習に困難のある子ども達の授業での配慮は、読み書き以外にも必要になります。今回は、手順の理解や指示の理解に困難さを抱える子ども達への配慮について考えてみたいと思います。

通常学級の授業では、先生が説明をして子ども達が話を聞くという一斉授業の形態で行われています。算数の授業を参観すると、先生の説明を理解できている子どももいれば、理解できずに周囲の様子をキョロキョロと見回している子どももいて、子ども達の理解度が様々であることが分かります。戸惑う子ども達も、先生が机の横で少しアドバイスをすると、理解できたようで納得しながら問題を解き進めることができていました。

さて、このように先生の説明の理解が難しい子ども達の中には、手順の理解が難しい子どもがいます。割り算の筆算が定着していないBさんを通して、その場合の配慮について考えてみましょう。

Bさんは、先生が説明した割り算で筆算の計算手順が理解できず、割る数を立てる位置が右端から書いたり、引くべきところを足したりします。Bさんは、先生の話を聞くことに問題はありませんが、手順を覚えることに困難さがあり正しく計算することができません。そのため、自分勝手な計算手順で覚えてしまい、誤った手順で計算を解いたりして答えを間違えてしまいます。

覚えることの困難さへの配慮として、次のような配慮が考えられます。

始めに、正しい計算手順を覚えるために、手順を言葉にして覚える方法を用います。例えば、割り算の筆算であれば、「立てて、掛けて、引いて、下ろす」を「たかひろ」と短くすることで覚えやすくします。この方法は、多くの先生が実際に行っているのではないかと思います。歴史の年号などを覚えるときに、語呂合わせを使うことも言葉にして覚える方法のひとつです。

すべての子ども達が言葉で覚えることが得意かというとそうではありません。視覚的な提示が覚えやすい子どももいます。この場合は計算手順を番号で示したり、矢印や色を用いたりすることで理解を促すことができます。

覚えることに困難のある子ども達への配慮において大切なことは、正しい方法を覚えられるように提示することが求められます。算数では、正しい答えを導くためには、正しい計算手順を覚える必要があります。一度正しくない計算手順で覚えてしまうと、覚えることに困難のある子ども達は、正しい計算手順を覚え直すことに時間がかかります。また、正しい計算手順が定着するまでの間、どの手順が正しいのか戸惑う原因にもなります。

このように覚える過程での誤りは、机間巡視など先生が適宜対応することができますが、家庭学習では子ども達自身で誤りに気づき正しく覚えることが求められます。家庭学習でも正しく覚える配慮として、タブレットを用いる方法が考えられます。

授業で計算手順を学習する場合は、板書の内容が黒板とタブレットの両方で同じ内容が見られるようにし、子ども達にはどちらを見て覚えても良いようにします。そうすることによって、覚えることに困難のある子どもは、手元のタブレットを確認しながら自分のペースで学習することができるようになります。このタブレットに提示した資料を家庭学習でも活用することで、教室での学び方を家庭でも実践できます。教室では黒板、家庭ではプリントを使うのではなく、教室と家庭の両方で同じ学習環境を提供することが重要です。

その他の配慮としては、板書を写真に撮らせ板書時の書き写しの間違いを防ぐことができます。また、動きのある視覚提示が理解しやすい子ども達には、パワーポイントのアニメーション機能を使い、動きや色、ナレーションなどを付けた動画を提示する方法もあります。作成した動画をクラス全員に共有することで、学習が苦手な子ども達の手助けにもなります。

このようにタブレットを活用した配慮は、一斉指示などの場面でも有効です。

小学校の帰りの会では、翌日の持ち物や宿題、保護者へのお知らせなどが伝えられます。このようなクラス全員への一斉指示では、指示の聞き漏らしや書き留める時間が足りないなど、指示内容を覚えられない子ども達がいます。前者は、不注意のある子どもに多く、後者は書字が苦手な子どもです。

低学年の子ども達に指示を与える場合は、まず子ども達の注意を先生に向けさせる合図を出し、その後に指示を与えますが、高学年の子ども達へは合図を与えません。高学年の子ども達は、先生が話し始めるとおのずと先生へ注意を向けることができるからです。ですが、不注意のある子どもは、高学年や中学生でも能動的に注意を向けることに困難さがあります。そのため、一斉指示を聞き逃したり、一部だけを覚えていたりします。

一斉指示場面での配慮として、次のような配慮が考えられます。

連絡事項を口頭で伝えるだけではなく、視覚的な提示も必要です。黒板に指示内容を書いて示すことになります。書くことが遅い子どもには、メモ代わりに写真を撮らせることも配慮のひとつです。また、多くの学校で導入されているGoogle ClassroomやMicrosoft Teamsの情報共有やコンテンツ共有などの機能を用い、連絡事項や宿題の内容を帰宅後に家庭でも確認できます。この方法では、保護者が直接確認することができ、担任と保護者との連絡手段に用いることもできます。学校での合理的配慮は、対象となる子どもだけではなく、家庭を含めた配慮が必要です。


2回に分けて教室での具体的な配慮について触れてきました。学習に困難のある子ども達に対して配慮を行う場合、その前提として、彼らが周囲との違いに気づき自分の抱える困難さを理解することが不可欠です。特に自分の抱える困難さの理解が難しい学齢の子ども達は、周りと自分が違う、自分だけが分からない、自分だけができないといった不安を感じています。配慮を行うためには、先生や保護者はそのことを早期に気づき、支援につなげることが重要です。

また、これまで通常学級に在籍する学習に困難のある子ども達へ配慮を行う場合は、準備の面で先生に大きな負担が生じていました。一方、子ども達にとっては、個別指導の場で学んだことを一斉授業の中で活用することに難しさがありました。タブレットなどを教室の中で普通に使えるようになった現在、一斉授業の中で個々の理解度に合わせて学習内容を変えること、それを一斉授業の中に位置づけて授業を行うことができます。

最後に、「配慮が必要な子どもに、十分な配慮を行う」ことはとても大切なことです。ですが、その配慮は一人の子どものの学びやすさだけではなく、学びが苦手な子ども達への学びやすさにつながります。多くの子ども達が、タブレットなどを活用しながら自分の学び方を見つけられることを願っています。

イラスト:Atelier Funipo

執筆者プロフィール
富永 大悟
山梨学院大学専任講師
特別支援教育士スーパーバーザー

主な著書に、「発達障害のある子の学びを深める教材・教具・ICTの教室活用アイデア」(明治図書)「小・中学校国語科スクリーニングテスト 聞く、読む、書く能力の認知特性・発達状況を把握する」(明治図書)「教職をめざすひとのための発達と教育の心理学」(ナカニシヤ出版)など。

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