2021年11月24日
Chromebook でICTを駆使した進化が止まらない伝統校/ 山本学園高等学校
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山形市内の中心部、山形駅の程近くにある山本学園高等学校。普通科(特進コース・普通コース)、商業科(ビジネスコース・クリエイティブコース)、衣創科(ファッションデザインコース)の3学科5コースを有する同校は、今年創立100周年を迎えた。伝統校でありながら、山形県内におけるICT教育推進のトップランナーとして躍進を続ける同校企画部長の原田浩行教諭と、進路指導部部長の髙橋亮教諭に話を聞いた。
「YAMAMOTOみらいプロジェクト」始動、「学び直し」から始めたICT教育
「本校は伝統校であるがゆえに、今までやってきたことを大事にするスタイルを大事にしてきましたが、時代の変化とともに伝統を守ろうとすること自体がリスクになってきているのではないかと現場では感じていました」(髙橋教諭)
そこで、これからの新しい時代に応じたICT教育を軸に新たな山本学園らしさを実現するため、「ICTを駆使しながら、軽やかに生き抜く力を身につける」をコンセプトとした「YAMAMOTOみらいプロジェクト」が始動した。
まず最初に、「学び直し」をいかに効率よく生徒たちに提供できるかという観点から校内で議論が始まった。その結果、生徒それぞれに応じた学びが必要であると考え、デジタル学習教材「すらら」を採用。ただ生徒個々の「学び直し」には、1人1台端末の環境が必須であるとし、Chrome OSが搭載された Chromebook を活用することで生徒一人ひとりに個別最適化された教育環境の準備を整えた。
頼りになった先行事例校の存在
「1人1台端末の環境を整えるにあたり、iPadか Chromebook かの選定に悩んでいました。そんな折、長年、ICTを軸とした学校改革に挑んでこられた近畿大学附属高等学校の乾武司教諭に、ICT教育の必要性を丁寧にご指導いただきました。また、山形県立酒田光陵高等学校の湯澤一教諭、櫻井敬士教諭には、Google Workspace for Education(旧名称:G Suite for Education)を活用した授業進行方法や端末選定の決め手となる各種アドバイスを頂戴しました」(原田教諭)
その上で、生徒たちが実社会で活躍するために必要なスキルを身につけてもらうため、同校はキーボードが標準付属する Chromebook が賢明であると判断。そして Google for Education を軸としたICT教育に着手した。ただ、「Chromebookって何?」というところからスタートしたため、教員内の意識付けから変革を行う必要があった。
3学年すべてに Chromebook 配布が完了
2019年度入学生から Chromebook を採用し、2021年入学生で3学年すべてが Chromebook を持つことに。当初は保護者が費用負担する形で Chromebook を購入してもらっていたが、2021年度からは学校側が端末購入を行い、在学3年間は生徒に貸与。卒業時にプレゼントする形を取っている。また、2022年の新入生からは ASUS Chromebook Detachable CM3 を採用することが決定している。
「画面とキーボードが分離して、タブレットモードとして使用が可能。USIスタイラスペンが標準内蔵されており、かつペンの反応も非常に早く、充電も早い。端末の質量も1kgをきって軽い。ファブリック調の外観もかわいいく生徒受けがよい。インカメラだけでなく、800万画素のアウトカメラもついている。これらの特徴が ASUS Chromebook Detachable CM3 採用の決め手になりました。イヤホンジャックが本体に備わっていることもポイントが高かったです。他社の Chromebook Detachable も検討だけはしてみましたが、イヤホンジャックが本体に備わっていない点が教育現場では致命的で、機器選定からは早々に外れました。生徒がWEBでオンライン英会話などをする際や、オンライン授業時にとても心配でしたので」(原田教諭)
Chromebook は、先生たちにとってもなくてはならない文房具
教員たちに対しては、Chromebookを日常的に毎日使わなければいけないという現状を作り出した。これを機にすべての教務を電子化し、教務システムを同校用にカスタマイズ。多くの教員が出席簿の代わりに Chromebookを持ち授業に臨む。そして気づいた頃には「文房具としての Chromebook」が教員に定着していたという。
教員たちは、電子化で教務作業が減った分、生徒たちとかかわる時間が増え、教員同士の情報共有も活発になった。グラウンドや体育館での部活動指導中にもオンライン上で課題を点検できることに加え、進路指導で面接の課題や資料を作る時にも、生徒との共同編集で詰めていけるので効率が良い。「いまさら出席簿には戻れません」(原田教諭)
オープンスクールのノベルティを生徒自身で作成
商業科のビジネスコースでは、「自分の学校をプレゼンテーションする」という授業を実施している。毎年、同校のオープンスクールに来校した中学生に、商業科のビジネスコースの生徒たちが考えたノベルティも配っている。中学生が喜ぶものを、かつ自分達の学校のことが伝わるよう考えて、卒業生や地元の印刷企業のデザイナーなどの協力を得てデザインし、作り上げる。
近年はクリアファイルが採用されることが多いという。今年のデザインは、ファイルに紙を入れると描かれている冬服が夏服に変わるというもので、中学生が興味を持つような工夫が施されている。生徒は商品をターゲットに合わせながら、どのように作っていくのかを考え、コスト計算も生徒自身で行う。
街貢献のためのアプリケーション開発
創立100周年の地域貢献として、商業科のビジネスコースの生徒が中心となってバスアプリ「べにズくるりん」を開発。これから高齢化社会が進むにつれてバス利用は増加するが、山形は、1時間に1本しかバスがない地域があることに注目。いつ来るかわからないバスを待っているより、その時間を有効に使ってもらおうと考え、開発に至った。
「べにズくるりん」は、山形市のコミュニティバス「べにちゃんバス」の西回り路線である「西くるりん」のバス位置をGoogle マップ上に表示するアプリ。アプリストアに登録する作業は外部業者に委託したが、資金は生徒たちが集めた。「山形市コミュニティファンド」の公開プレゼンテーションで40万円ほどの補助金を獲得したり、市長にプレゼンして市から補助金を出してもらったりと、生徒にとって学びの多い活動となった。
特に、バス停周辺の店舗をMapに掲載する際、店に生徒が掲載依頼をお願いして回ったことは、良い経験になったという。「アプリを軸としながら、社会とつながる学びを作っています。社会で通用する言葉、通用しない言葉を体で覚えていくので、成長が早いんです」(髙橋教諭)
また来年度から商業科のクリエイティブコースにはAdobe Creative Cloud(クリエイティブツールを利用できるクラウドサービス)を授業の軸として導入することで、デジタルコンテンツが作成できるようになるという。専門性を特徴とする学校への進学を希望する生徒が、より多くのスキルを持ち得た形でスタート地点に立ってもらうことを目的としている。
伝統の力を新しいチャレンジに変えていく、それが山本学園高等学校のICT活用教育を支える強み
「教育現場における常識・非常識ではなく、生徒にとって今どういうものにニーズがあって、社会の中で生きていくためには、どういう力をつけなくてはいけないのかを常に考え、スタイルを決めずに、必要に応じて常に変わっていく学校でありたいと思っています。そして学校としてのビジョンを大事にし、生徒のためになる新しいものは、躊躇なく使います。障害物は乗り越えればいいんです」(髙橋教諭)
「授業、部活、進路指導などICT端末の利活用シーンは多岐に渡りますが、ここからどう次のステップにつなげていくのかを考え、常に進化し続ける学校でありたいと思っています。2022年4月からは新校名「惺山(せいざん)高等学校」となり、新たなコンテンツを導入した授業もスタートします。生徒にはICT端末をフル活用してもらい、選択している5コースすべてで様々なコンテンツ作成にチャレンジしてもらいたいと思っています」(原田教諭)
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