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2022年10月27日

ICTで学びを保障する“合理的配慮”シリーズ第21回 知的障がいがある子どもへのスポーツ指導における配慮(前編)

知的障がいがある子どもへのスポーツ指導における配慮

この記事の見どころ

2021年に行われた東京パラリンピック男子幅跳びで世界4位に入賞した小久保寛太選手を長年指導してきた樋口先生に、小久保選手への指導の軌跡と知的障害がある子どもへの体育やスポーツ指導における大事なポイントについてお聞きしました。

昔ながらのスポーツ指導ではなく、わかりやすく、そして子どもたちのやる気を引き出す指導スタイルは、障害のあるなしに関わらず多くの子どもたちのスポーツ指導についても生かせることがたくさんありました。前半後半に分けて紹介していきます。

小久保寛太選手との出会い

2021年9年4日、国立競技場にて「東京パラリンピック知的障害クラス」の男子走り幅跳びが行われました。高等部1年生の頃から二人三脚で共に頑張ってきた小久保寛太選手は、自身が持つ日本記録を13cm上回る記録を出し、4位入賞を果たしました。

小久保選手との出会いはかれこれ6年ほど前に遡ります。私が埼玉県立本庄特別支援学校に赴任した2016年に小久保選手も入学してきました。当時から私は日本知的障がい者陸上競技連盟の強化委員として知的障がいのある選手たちへの陸上を支援する活動をしていましたが、体育の指導でたまたま小久保選手の走りを見た時「これは凄い選手になるかもしれない」と感じました。そして、二人だけの朝練が始まりました。

得意をさらに伸ばすための支援の開始と競技の壁

本校には陸上部はなく、小久保選手は運動部に所属し、放課後はバスケットボールやサッカーに取り組みました。そのため、陸上の練習は朝練でしかできない状況でしたが、彼の「もっと陸上をやりたい」という思いに添えるよう、そして彼の可能性を少しでも広げ伸ばせるよう、大きな大会の前は放課後も陸上の練習に励める時間を確保しました。


高等部2年生の時には、「全国障害者スポーツ大会」の少年男子200mで大会新記録を出すほどまで強くなり、やがてパラリンピック出場を夢見るようになりました。しかし、残念なことに知的障がい者のパラリンピック種目には得意とする200mはありませんでした。そのため、高等部3年生になってから新しく走り幅跳びを始めました。それまではパラリンピック種目でもある400mに取り組んでいたこともありましたが、記録も伸び悩み、練習自体も嫌いになりそうでした。そのようなこともあり、気分転換に走り幅跳びをやってみたところ、とても楽しそうに跳んでいる小久保選手を見て、走り幅跳びを本格的に始めることになりました。

困難を乗り越えて

短距離を中心に活動していた小久保選手が走り幅跳びに転向するという選択をした際には、私自身期待もありましたが、それと同じくらい不安も抱えていました。なぜなら、走り幅跳びは知的障がいがある彼にとって難しい可能性もあると思ったからです。走り幅跳びの流れにはこれまで彼が得意としてきた200mとは大きく異なり、「助走・踏切・空中姿勢・着地」と4つの場面に分けられます。彼がルールを理解し、スピードをつけて走り、20cm幅の板で踏切って跳ぶ事が本当にできるのかという不安が大きくありました。少しでも板を踏みこせばファールとなり記録が残りません。また、板の手前から踏み切っても計測されるのは板の先端からです。また助走・踏切だけではなく、4つの場面を全て上手にこなし、連動させなければ記録は出ません。そのため、この「走り幅跳び」という競技は知的障がいがある生徒にとって非常に難しい種目だと感じました。


また、小久保選手は言葉だけの指示ですとなかなかうまく伝わりません。具体的には「脚をもっと上げて」というと脚を上げるだけに意識が向いてしまい、他の動作が疎かになってしまいますし、イメージしづらい抽象的過ぎてしまう言葉がけだと理解が難しい状況でした。さらに、気持ちの面での難しさもありました。小久保選手は自分に自信があることに対しては前向きに取り組める一方で、自信がないことについてはとても慎重になってしまうため、なかなか自分の力を十分に発揮できないことも多々ありました。

小久保選手に限らず、知的に障がいがある児童生徒の中にはボディイメージが乏しい子も多いため、動きを真似したくても真似できない児童生徒もいます。映像を見せて真似できるお子さんもいますが、目の前でストレッチを行っても同じようにできないお子さんも多い印象です。


小久保選手はこのように様々な困難さがありました。そのため、私自身のこれまで当たり前とされてきた指導法を彼に押し付けるのではなく、彼のような苦手さを把握し、寄り添い、そして彼の得意を生かしながら指導する必要性を感じ、実施してきました。

東京パラリンピックという大舞台で彼が世界で4位という記録を残すことができたのは、たまたま私の指導法と小久保選手の実態がマッチした可能性がありますが、これまでの5年間行ってきた指導について、またこれまで知的障がいのある子どもたちに体育を教えてきた経験を踏まえて、後半の記事で具体的にその指導法を紹介していきたいと思います。

執筆者プロフィール
日本体育大学卒業。2008年に埼玉県立特別支援学校教諭として採用され、埼玉県立久喜特別支援学校に着任。2015年現任校である埼玉県立本庄特別支援学校に着任。

2013年から、日本知的障がい陸上競技連盟強化委員に携わり、数々の国際大会を経験。令和3年に開催された東京パラリンピックでは日本代表コーチとして帯同し、小久保選手の入賞にも尽力した。小久保選手や障がいのある子どもたちの可能性を広げる体育やスポーツ指導について多くのメディア等で取り上げられている。

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