2021年5月12日
ICTで学びを保障する“合理的配慮”シリーズ第9回 スマホやスマートウォッチを使う上での注意点
『生活や就労を豊かにするICT活用~スマホとスマートウォッチを専属執事にしよう~』(後編)
関口あさか (埼玉県立特別支援学校さいたま桜高等学園 進路指導専任)
後半では、スマホやスマートウォッチを使う上での注意点やおすすめのアプリなどをご紹介します。
6.スマートウォッチを使う上での注意点・大事なポイント
①通知機能設定の注意点!なんでもかんでも通知しない(通知をONにしない)
通知してくれる良さがスマートウォッチにはありますが、便利である一方で厄介な面もあります。手首に振動を伝えることで通知をしてくれるのですが、その度に注意が逸れ、集中が途切れてしまいます。また、どれが大事な通知なのかわからなくなります。
特におすすめしないのは、SNSやメール、LINEの通知などをONにすることです。SNSの通知はもちろんのこと、家族や恋人など本当に大事な人からの連絡(LINEやメール、電話)以外は通知をOFFにしておくことをおすすめします。
・スケジュールやカレンダーアプリ
・ToDoリストアプリ
・ずっと同じ姿勢でいる時に通知してくれるアプリ(過度の集中を防ぐため)
・大事なことを通知してくれるメモアプリ(※すべてのメモを通知せず大事なものだけ)
②スマホと連動させ、入力や通知設定をする必要がある
スマートウォッチの多くは、スマホと連動させる必要があります。スマホに入力したスケジュールやメモ、ToDoリスト、電話、SNSなどと連動して、通知をしてくれます。つまり、スマホを通してスケジュールやToDoリストの入力をする必要があります。スマートウォッチから予定の入力などもできますが、日付や時間など簡易的な入力で、最近増えてきたオンライン会議のURLなどの詳細な内容を入力するには、連動させたスマホやPCが必要になることが多いです。
③毎日の充電を忘れないように
購入当時、私もしばしばスマートウォッチを充電し忘れることが多かったのですが、充電が切れると使い物にならず、『○○を忘れること』が多発する可能性があります。対処法として私個人が行っている方法は、スマートフォンとスマートウォッチ専用の充電ステーションを部屋の中に作っておいて、毎日同じ時間に通知を鳴らし、そこに充電するようにすることです。これで充電のし忘れを軽減できるかもしれません。
7.『○○を忘れてしまいがちな人』におすすめのアプリ
現在、ToDoリストやスケジュール管理ができるアプリは非常に多く配信されています。ここでは無料または比較的安価なものを中心にご紹介します。
デザインや使いやすさなど自分に合ったものを探し使用することが一番ですので、あくまで参考としていただければ幸いです。
① 提出期限を確認する/スケジュールを管理するアプリ/持ち物を確認する
・『カレンダー』
iPhoneやiPadに標準で搭載されているカレンダーアプリです。Apple Watchとも連動するため、iPhoneやiPadで予定を入力しておくと、Apple Watchからも通知してくれます。
・『Googleカレンダー』
個人的によく使用しているアプリです。iPhoneだけでなく、Androidスマートフォン、Windowsパソコン、Chrome bookなど様々なデバイス間で同じカレンダーを使うことができます。また、自分以外の仕事の仲間、親などともカレンダーを共有することができます。
子どもの場合は親とGoogleカレンダーを共有し、お互いに予定を入れ合ったり、子どもがちゃんと必要な予定を入れられているかどうかを親は自分のスマホやパソコンからいつでも確認することができたりします。
大人の場合は、仕事仲間や友人とカレンダーを共有することで、共有している仲間のうちの誰かが予定を入れると、全員のカレンダーにその予定が追加されるため、スケジュールの入力し忘れの防止や、大事なスケジュールの確認などを行うこともできます。
ちなみに、Apple Watchで『Googleカレンダー』を使用する場合は、iPhoneの『設定アプリ』→『カレンダー』→『アカウント』でiPhoneの『カレンダー』アプリに連携させる必要があります。
「Google カレンダー: 予定をスマートに管理する」をApp Storeで (apple.com)
・『Time Tree』
おしゃれでかわいく、誰でも簡単にカレンダーを作成し、誰かと共有することができます。スマホやパソコンが苦手という方や保護者にとっても使いやすく、メモやチャックボックスメモなども共有することができます。そのため、予定だけでなく持ち物ややることの手順もスケジュールと一緒にセットで確認できます。
Apple Watch専用の『Time Tree』アプリも配信されているため、iPhoneとの連動もスムーズです。
② 集合時刻に目的地に遅れないで到着する
実は前項の①で紹介した『カレンダーアプリ』に『目的地』を登録し、右の写真のように『移動時間』の設定をすると、公共交通機関や車で目的地に向かう場合、あと何分後に出発する必要があるか教えてくれます。まるで執事のようですね!ぜひどこかに出かける予定の際は、『目的地』と『移動時間』の設定をしてみてください。
③時間を忘れて集中しすぎてしまった時に教えてくれる
Apple Watchには、ずっと座り続けることを防止する『スタンド』リマインダー機能があります。1時間近くずっと座り続けていると通知されます。特に、過度の集中状態になってしまうことを防ぐことができます。深呼吸の時間を取ることができる『呼吸』リマインダーもあります。
Apple Watch – リングを完成させよう – Apple(日本)
④やることを管理する/メモをして必要な時に通知する
様々なToDoリストアプリ、メモアプリがありますが、今回はApple Watchと連動でき、無料のものを中心にお伝えします。
・『Apple純正のタスクアプリ』
とてもシンプルなデザインですが、タスクごとに日付や時刻、優先度、カテゴリーに分けてタスクを登録できます。Apple Watchと連動されるので、スマホで入力したタスクをApple Watchで確認して、完了のチェックを入れることもできるので、特に買い物の場面やスマホを見ることが難しい場面でも活用できます。
・『Google Keep』
個人的に重宝しているメモアプリで、ToDoリストだけでなく、手書きメモ、音声入力をすると文字起こしとその音声も一緒に録音してくれるメモ、写真を撮影して追加情報を記録するメモなど、様々な種類のメモを記録することができます。メモに、リマインダー機能や日付の登録もできます。
さらに、パソコンやAndroidスマホなど様々なデバイス間で使え、他の人ともメモを共有することもできます。
Apple Watch版の『Google Keep』アプリも配信されているので、特にToDoリストではWatch側でタスク完了のチェックをしたり、音声入力機能でタスクを追加したりすることもできます。
「Google Keep – メモとリスト」をApp Storeで (apple.com)
⑤なくし物を見つける
今年Appleより『Air Tag』というなくし物を見つけることができるデバイスが発売されました。
なくしたら困る物に取り付けると、もしそれを紛失してしまっても、iPhoneやiPadなどの『探す』アプリがそのなくし物を見つけ出してくれます。Air Tag以外にも、スマホと連動させて使える紛失防止タグ・キーホルダーが販売されているので、なくし物が多い方は活用してみると良いかもしれません。
⑥買い忘れ、重複買いを防止する
・『monoca2』
自分の持っている物や欲しい物を登録するアプリです。すべての物を登録することは時間がかかりお勧めしませんが、よく使うものや洋服、防災グッズなどは登録すると便利かと思います。同じものを買ってしまう重複買いを防ぐことができ、家族と共有することもできます。
monoca 2 – Sola (sola-air.com)
⑦プリントなどの配布物を管理する
・『Office Lens』
書類や板書、名刺などをスマホのカメラで自動で認識し、きれいに撮影してPDFや画像データに変換してくれるモバイルスキャナーアプリです。OneDriveなどのクラウドにも保存できます。さらに、撮影したプリントの文字を認識しテキスト化(OCR機能)してくれます。
学校のプリントが管理できず、ランドセルの中でぐちゃぐちゃになっていることが多いという子ども向けにおすすめのアプリで、書類やお便り管理にも便利です。
iOS 版 Microsoft Lens – Office サポート
分量の関係で、ここにはまだ書ききれないアプリを以下に一覧にしました。ご参考にしていただければ幸いです。
イラスト提供:Atelier Funipo & TUBASA
《著者プロフィール》
関口あさか
(埼玉県立特別支援学校さいたま桜高等学園 教諭)
MIEE Talks@Admin.代表
2016年よりマイクロソフト認定教育イノベーター
マイクロソフトよりMIE Fellowに選出された日本の先生6名のうちの1人
重度の知的障害や身体障害、学習障害のある子どもたちに、テクノロジーを活用した学習やコミュニケーション、英語学習、ものづくりなどの表現活動支援を学校内外で取り組んでいる。
ICT夢コンテスト宮島龍興記念教育賞やなどを受賞し、書籍や新聞、TED、Webサイトに多数教育実践が掲載されている。
テクノロジーを教育に活用する教員グループ『MIEE Talks@』を立ち上げ、子どもも大人もワクワクする学びの場づくりに取り組む。
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