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2019年5月9日

ICTで学びを保障する”合理的配慮“ 第1回 「学習障害はICTで解決!」

~パソコン画面上の文字情報を音声化する~

高崎健康福祉大学 人間発達学部 子ども教育学科
村田 美和

image1俳優のトムクルーズさんが、学習障害であるというのは有名な話です。文字を見ても、音を思い浮かべることができないため、映画の台本を自分で読み進めることができません。学習障害は、知的には問題ありませんが、書くことや読むことに特異的な困難さが現れるもので、日本では学習障害の多くの子どもが通常学級に在籍しています。そんなトムクルーズさんは、「誰か」が台本を読み上げたものを録音し、それを聞いてセリフを覚え、演技をしています。実は、日本の読みが苦手な学習障害の子どもにとっても、同じ支援が必要なのです。教科書を自力で読むことが難しいため、「誰か」に読み上げてもらう必要があります。

しかし、近年、読み上げてくれる「誰か」がいなくても、ICTがあればその部分を補うことができるようになってきました。マイクロソフトのアクセシビリティ機能の一つに「ナレーター」という機能があります。この機能を使うとパソコンの画面上の文字情報は全て音声化することができます。他にも音声読み上げのソフトやアプリが複数開発されてきていますが、私のお勧めは、「WordTalker(イースト)」です。

image4「WordTalker」は、Microsoft OfficeのWord(ワード)にアドインすることができるソフトです。Word文書上の文字を全て音声読み上げできます。声の選択から、読み上げ速度の調整、文書の背景に色を付ける、フォントの種類や色やサイズを変える、行間や文字間を開けるなど、個々に合わせた読み上げ環境を作ることが可能です。

このソフトを使って、教科書を音声化させることもできます。障害により読みが困難な人は、まず「Access Reading(東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野)」から教科書の電子データを取り寄せます。その教科書の電子データをWordで開けば、先ほどの「WordTalker」で読み上げさせることが可能です。Wordに搭載されている「ナビゲーション」の機能に対応しており、分厚い教科書でも開きたいページにすぐに飛ぶことができます。

つまり、ICTを使えば、トムクルーズさんも、もはや「誰か」に台本を読み上げてもらい録音する必要はなく、自分でICTを操作して好きな時に読みたい部分を読むことが可能な時代なのです。

プリントはどうやって読む?

データになっているものは、パソコンの音声読み上げ機能により解決できることはおわかりいただけたと思います。学校では毎日様々な種類のプリントが学習教材として配布されますが、そのような、既に印刷されたプリント(データなし)の場合はどうしたら良いでしょうか?

イラスト01プリントを読むのに便利なアプリが、マイクロソフトの「Office Lens」です。このアプリは、写真を撮るアプリですが、iOS版では「イマーシブリーダー」を使って、写真から文字情報を抽出し、音声化させることができます。また、写真を撮るのではなく、小型のスキャナー「Scansnap (富士通)」を接続し、プリントを読み込み、パソコン内でOCRをかけるという方法であれば、より正確に文字情報が抽出できます。どんな形であれ、文字情報さえ抽出できれば、あとは読み上げ機能を使って音声化させることができるので、プリントの場合、まずは文字情報を抽出する方法を確立することをお勧めします。

学校のテストではどうする?

学校では、学習障害の児童生徒は、合理的配慮を申請することができます。つまり、学習障害により「読み」に困難さがある場合、「自力で読むことが難しいため、テストでも書かれている文を音声化する必要があります」ということを学校に申し出て、学校側はその申し出を受け入れ、その環境を作るために努力する義務があります。

image6この音声化の方法は、ICTだけに限りません。ICTの環境への不安や、金銭面で実現が困難な場合、別室で人による音声読み上げを行うのでもいいのです。また、障害の重さには個人差があるため、例えば、全て読み上げなくても、長文の問題だけ読み上げてほしい、英語だったら、長い単語だけ読み上げてほしいなど、その需要には個人差があります。特に軽い人の場合は、必要があれば挙手をして、その必要な部分だけを読み上げてもらうといった配慮で十分な場合もあります。

学習障害児に対するよくある誤解として、「全く読めない」と勘違いされがちですが、特に日本語においては、全く読めないことはありません。読めるけれども時間がかかったり、読み間違いが多かったり、漢字の読み方がわからないといった困難さがあります。また、読むことそのものに労力を要するため、内容理解を同時に行っていくことに対して非常に困難さを感じます。その結果、テストで時間が不足したり、困難さがない子どもと比べて、疲労を感じやすく、特に中学校で1日にいくつものテストが続く環境での疲労感は大きく、不登校に繋がるケースもあります。

障害となっている部分を免除しない限り、学習障害の子どもがテストで満点を取ることは難しいでしょう。「読み」に困難さのある子どもに対する「音声化」は、彼らにとって不可欠な配慮なのです。この様な合理的配慮は、日本の各地で少しずつ広まってきています。ICTが学校でもっと自由に活用できるようになれば、合理的配慮を提供する側の負担も軽減され、より多くの子どもに対応できるようになるでしょう。

(絵:Atelier Funipo)

《著者プロフィール》

村田 美和
高崎健康福祉大学 人間発達学部 子ども教育学科
博士(理学)、マイクロソフト認定教育イノベーター。
読み書き障害の小中学生を対象に,テクノロジーを活用した学習の補助と,合理的配慮について研究している。

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