2023年3月7日
都会と地方の教育格差を「すららドリル」活用で解消、町ぐるみで子どもの主体的な学びを支える /飯豊町教育委員会
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飯豊町は山形県南部、最上川の源流部に位置する、県内でも有数の豪雪地帯にある人口約7000人の町。基幹産業は農業で米沢牛の主生産地でもある。都会と比較して塾などの学習環境が少ないという地域課題の解決にAIドリル「すららドリル」を活用し、町一丸となって取り組んでいる。主体的に学ぶ姿勢を重視する飯豊町教育委員会 横山一美ICTコーディネーター、横澤俊彦指導主事、飯豊町立第二小学校 山田智幸講師に「すららドリル」の活用法、児童生徒のやる気を向上させるための工夫について話を聞いた。
「誰1人として取り残さない」、全ての児童生徒のレベルに合う『すららドリル』を導入
飯豊町の小中学校全員に1人1台のタブレット端末が配付され、2020年秋には教育委員会でデジタルドリルの検討が始まった。いくつものサービスや教材を比較して、「すららドリル」の採用が決まった。飯豊町は「誰1人として取り残さない教育」という基本方針のもと、学習が得意な子どもだけでなく、苦手に感じる子どもも無理なく学べることを重視した。
「すららドリル」なら単なる正誤判定だけでなく、解説はもちろん、AIが児童生徒1人1人に最適な出題を提案してくれる。小1から高3までカバーする配信課題の量と質も大きな魅力だ。どんどん先へ学び進みたい子ども、学年や単元を遡って復習したい子ども、児童生徒全員が満足できる。教員がついていなくても自主的に自宅で取り組めて、学習習慣をつけられるのは「すららドリル」だったと、横澤俊彦指導主事は選定理由をあげる。
都会との格差、経済的な格差を解消する町の取り組み、『すららドリル』も一翼を担う
飯豊町は都会と比較して塾など学習環境が決して多くない。また親の経済状況が子の学力に影響を与えるという経済格差も昨今よく聞く社会課題だ。飯豊町教育委員会では公民館を活用して希望者に町営学習塾を実費のみで提供したり、算数、英語、漢字検定を小・中学生も受けやすいように町が開催したりと格差解消に取り組み続け効果をあげてきた。しかし南北に長い地形で公民館まで車で20~30分という地域もあって保護者の送迎負担が大きい家庭もある。豪雪地帯なので特に冬の間は困難だ。
町営塾だけでなく自分のペースで学校でも家でも学べるという選択肢を町として提供したい、横山一美ICTコーディネーターは「すららドリル」への期待を語る。家庭で自ら学習できること、自主的な学習習慣の定着を重視した背景にこうした格差解消への町の強い想いがあったのだ。
最初は順風満帆とはいかなかったが、ICT支援員の配備で軌道に乗った
「すららドリル」なら、うまくいくと確信して2021年春、町内の全小学校4校と中学校1校、約470名が利用を開始した。しかし、利用が進む学校もあればなかなか進まない学校もあった。ICTリテラシーの高い教員がいる学校は比較的うまく活用できるのだが、一方で新しいサービスのスタートに躊躇する学校もあった。
「すららドリル」で課題を配信すれば児童生徒はすぐに慣れて積極的に学習することはわかっていたので、教員側の利用促進がポイントだった。横山一美ICTコーディネーター、横澤俊彦指導主事は各校を巡回し、説明を行ったのだが常駐は難しい。わからない時にすぐに聞けないことが原因だと分析した。そこで2022年度は必要な学校にICT支援員を派遣したのだ。するとこれが大きな成果をあげて徐々に活用が広まり始めた。
各校で広まる『すららドリル』活用、「すららカップ」や校内がんばりランキングでやる気アップ
◆朝学習での活用からスタート
第二小学校 山田智幸講師は、「すららドリル」活用の狙いは、児童らのICT機器活用力を育むこと、主体的な学習習慣を定着させることだと語る。以前はプリントや紙のドリルのみを活用していた朝学習に『すららドリル』を活用し始めた。すると、朝の会が始まる前から、教員の指示がなくてもタブレットで学習準備を始めるなど積極的で楽しみにしている児童らの様子が見られるようになった。毎日学習を積み重ねることで「わかるようになった」という達成感を味わっているからだという。
朝学習の定期的な「すららドリル」の取り組みは町内各校で行われるようになった。校内で決まった時間に取り組む習慣がきっかけとなり自宅でも学習する児童が増加した。成果が学校間で共有され一層利用が広がった。「すららドリル」活用は順調に軌道に乗り始めたのだ。
◆学校独自の「すららドリル」がんばりランキング発表でやる気アップ〜「すららカップ」にも挑戦
山田講師をはじめ第二小学校では、児童のやる気向上を目的として「すららカップ」への挑戦を決めた。挑戦に先立って、11月12月には校内で『すららドリル』がんばりランキングを発表した。1ヶ月ごとの課題取り組み時間、取り組み量を集計し、各学年、各クラス3位までを校内放送で発表したり、職員室の前に掲示したりして賞賛したのだ。これが子どものモチベーションにつながったという。中には1日に2、3時間もがんばる児童もあらわれた。
第二小学校の初めての「すららカップ」挑戦は、中間発表全国2位、最終順位7位、期間中の児童ログイン率100%と素晴らしい成績だった。山田講師は、「来年度はボーナスポイントのある冬休み中の課題も活用して更なる上位を目指したい。子どもたちだけでなく、活用する私たち教員ももっと使いこなさねばならない」と意欲を見せる。
「ラーニング・デザイナー」で主体的に学ぶ〜与えられなくても自ら計画する児童も
さらに「すららドリル」利用が進む小学校では、教員が「ラーニング・デザイナー」の使い方を説明し、自らの学習計画を立てる高学年の児童もいるというから驚きだ。「ラーニング・デザイナー」は学習活動の設計・管理を簡単にできる「すららドリル」の機能。
学習目標の設定や課題配信、短期、長期の学習をデザインできる。教員が配信する課題へ取り組むのは当然で、与えられなくても主体的に自ら計画する貪欲な姿勢だ。自ら設定した目標に向かって「すららドリル」のAIが必要な課題を自動配信してくれるので弱点が克服され、めきめきと力がつく。山田講師も来年度は高学年児童の「ラーニング・デザイナー」による主体的な学びを導入する予定だという。
町主催で「すららドリル」を活用した漢字テスト・計算テストを全小学校に
来年度は、中学校の定期テストのように小学校でも全校を対象とした町主催の漢字テスト、計算テストを「すららドリル」で実施する計画がある。全校へ課題を配信し学習状況や得点でランキングの発表や表彰などを行って学習のモチベーションにつなげる狙いもある。
「『すららドリル』のようなデジタルコンテンツに紙教材を全て置き換えてよいのか、迷いもある。若い教員は抵抗がないがベテランの教員は難しいと考えているかもしれない。ただ固定観念を覆して少しずつシフトしていかなければならない。一度に全てとはいかなくても少しずつ可能な部分から取り組んでいく。『すららドリル』の長所を生かし、地域の教育格差を解消し、家庭の負担を下げながら児童生徒が主体的に学べるようにしたい。飯豊町だけでなく山形県全体で盛り上げて行けたらよいと思う」横澤俊彦指導主事は笑顔で展望を語った。
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