2025年6月24日
ICT教材の活用で探究授業の負担軽減と“自走する生徒の育成”を両立/福岡県立三池高等学校
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試行錯誤、手探りの「探究」を進める学校現場
「総合的な探究の時間」必修化などに伴い、その認知はかなり定着した感のある高校の探究学習。しかし、学校現場では試行錯誤が続いているのが現状だ。
正解なき問いに向き合い、学習者が自分なりの答えを導き出していくのが探究学習の特徴と言えるが、それだけに授業設計から指導計画、評価まで、一般教科とは違った独自のアプローチが必要になる。
しかも、教員自身が高校生だったころ「探究」の授業はなかった。一定の指導マニュアルはあっても、必修化されたのが2022年度でノウハウの蓄積や体系化も不十分だ。言わば教員にとっても未経験で、正解がないことを意味しているわけで、何もかもが手探りになってしまうのは無理もないだろう。
慣れない授業準備に時間を取られ、思ったような授業ができない
福岡県立三池高校も、そんな悩める学校の一つだった。同校は地元・大牟田市の進学校として知られ、生徒の大学進学率は9割を超える。素直で前向きな生徒が多く、任意の課外授業などの受講率も高い。文武両道校としても有名だ。
しかし、やはり探究学習の実践には苦心していたと言う。2024年度から同校の探究学習に係る分掌を担当している吉瀬里彩教諭(数学)は「私が担当する以前から、総探の授業には多くの工夫と努力が注がれている様子を見てきました。授業の準備は担当者の裁量に任されており、毎回一から内容を構築する必要があるため、週1回50分の授業でも、準備のために1週間要することもありました。」と当時を振り返りながら語ってくれました。
特に腐心していたのが、まだ探究に慣れていない生徒たちの主体的意欲や技量も鑑み、どのように探究のテーマや導入部分を設計していくかだ。例えば「好きな音楽を分析して、自分が楽しいと感じる曲にはどんな傾向があるか」など、生徒がとっつきやすそうなテーマをあれこれと考えては実践していた。
また、同校でICT関連を担当する諸留有志教諭(理科)も「探究の授業は、担当教員が授業内容を設計し、それを実際に教える教員がレクチャーを受けて授業を行うという形で進められています。そのため、準備には、時間も労力もかかります。また、各教員がそれぞれのスタイルにアレンジして授業を進めることから、クラスごとに進度に差が生じることもあり、計画通りに進めることが難しい場面もありました。」と当時の状況を振り返ります。
総じて「授業運営に専念できるように、導入や基本の設計について一定の標準化がなされた状態で始めたい」というのが担当教諭らの切実な思いであった。
探究授業の準備から運用まで、「すららサテライザー」を導入
そこで同校が2024年度から導入したのが「すららSatellyzer」(すららネット提供。以下、すららサテライザー)である。すららネットが探究学習の基礎を身に付けることを目的に、NECスペーステクノロジーと共同開発したICT教材だ。
特徴は、あらかじめ「宇宙」「人工衛星」が大テーマに設定されていることだ。生徒は、探究学習と宇宙・人工衛星について基礎的なレクチャーを受けたのち、「自然災害」「スマートシティ」「水産資源」などSDGs分野の複数のミッションから興味のあるものを選ぶ。そして、それらの問題に基づいて適切な人工衛星を開発・打ち上げしてデータ収集し、解決策を考えるというステップだ。同校のような課題を抱える教員にとっては、これだけでもかなり助かるのは間違いない。
また、授業はマニュアル化されて、すでに50分授業の指導案が作られているほか、参考資料なども適宜添付される。グループワークの設計やワークシートも準備されており、ルーブリック評価機能も搭載され、探究学習授業の設計・実施をスムーズに行える環境が整備されている。
すららサテライザーは最大で33コマ分の授業が可能だが、カスタマイズして運用可能な自由度の高さも同校にとっては魅力だった。同校では、このうち10コマ分の授業を用いて、1年生の探究授業への初歩的な対応力を伸ばす目的で使っていると言う。これをステップにその後の探究の時間では、自らの進路などをテーマにした同校独自の切り口で発展させている。
「調べ学習」になりがちだった授業が、真の「探究学習」へ
生徒の反応や変容という意味でも導入の成果は大きかった。吉瀬教諭は言う。「教員が自ら授業設計していたときは、お互いの不慣れさもあって、生徒が指示待ちになりがちだった。サテライザーは途中でクイズが入るなどのゲーム要素もあり、能動性を引き出しやすい」。
諸留教諭も「授業設計の部分で時間や手間を取られず、授業の進め方についても教材がナビゲートしてくれるので、生徒へのファシリテーションに集中できる。その成果もあってか、手持ちぶさたで『何をしていいか分からない』という生徒がいなくなったのが非常に大きい」と語る。
また、以前は、探究成果の発表(プレゼン)が目的になる傾向が強くなりがちなのも悩みの種だった。いわゆる「調べ学習」の域を出ない、「言われたことを調べて発表して終わる」状態になっていたのだ。しかし、すららサテライザーは、生徒が主体的に課題を設定したり解決策を導いたりするプロセス、すなわち探究の本質部分に重点が置かれており、その点も教員としては非常に進めやすい部分だった。
生徒アンケートでも約80%が「能力を伸ばせた」と回答しており、具体的には約50%が「思考力」「情報収集力」「ICTスキル」を挙げ、「意見を言う力」「人の話を聞く力」「議論する力」を挙げた生徒も約40%に上った。
浮いた時間で、他の業務に時間をかけられるように
「何より、すららサテライザーの様々な機能によって、他の業務に時間をかけられるようになったことが大きい」と両教諭は口を揃える。事務作業はもちろん、生徒対応などをより丁寧に行えるようになったためだ。
今後は「すららサテライザーで、探究の基本的なサイクルの回し方が分かった。これをステップに2年次では、より社会や自分の人生と繋がる探究へと深めていきたい」(吉瀬教諭)、「各教員の専門性とすららサテライザーを掛け合わせて相乗効果を作り、探究以外の学習にも応用したい」(諸留教諭)と、新たな可能性も見出しているそうだ。
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